『俺達のグレートなキャンプ228 電熱の利いたトイレをDIYしようぜ』
海山純平
第228話 電熱の利いたトイレをDIYしようぜ
俺達のグレートなキャンプ228 電熱の利いたトイレをDIYしようぜ
「いやいやいやいや!」
富山が両手を大きく振って、石川の言葉を全力で遮った。冬の朝日が差し込むキャンプ場のテントサイトで、彼女の息は白く凍りつきそうなほど冷たい空気を切り裂く。テーブルの上には石川が広げた謎の設計図が、朝風に揺れている。
「いやいやじゃないって!聞いてくれよ富山!」
石川は目をキラキラと輝かせながら、まるで子供が新しいおもちゃを自慢するように身を乗り出した。彼の手には、何やら複雑に書き込まれた設計図らしき紙が握られている。いや、よく見ると裏がコンビニのレシートだ。しかも購入品目に「うまい棒×20本」と書いてある。
「石川さん、これってつまり...トイレを...魔改造...?」
千葉が設計図を覗き込みながら、興味津々といった様子で首を傾げる。彼の瞳には純粋な好奇心が宿っていて、まるで未知の冒険に胸を躍らせる探検家のようだ。いや、むしろマッドサイエンティストの助手のようだった。
「そう!キャンプ場のトイレを、超絶ハイテク化しちゃおうってわけ!電熱便座、ウォシュレット、音楽機能、全部盛りだ!」
石川がビシッと指を立てる。その動作があまりにも決まっていて、思わず千葉は「おおおお!」と感嘆の声を上げた。まるで宗教の入信式のようだ。
富山は頭を抱えた。いつものことだ。いつも、いつも、石川のこの突飛な発案に振り回される。彼女の表情には、諦めと心配と、そしてほんの少しの「またか...」という疲労感が入り混じっていた。目の下のクマが、それを物語っている。
「電熱便座、自動開閉、音姫機能、温風乾燥、ウォシュレット、さらには!」
石川が設計図を広げる。そこには謎の配線図と、やたらと多い矢印、そして「グレート!!!」という大きな文字が躍っていた。隅っこには「もはや神の領域」とも書いてある。
「BGM自動再生機能もつけちゃう!冬のキャンプ場で、あったか〜い音楽付きトイレ!最高じゃん!」
「最高...なのか...?いや、確実に怒られるでしょ...」
富山が弱々しく呟く。彼女の目は泳いでいる。心の中で「これは止めるべきか、でも石川が楽しそうだし...いや、でもキャンプ場の管理人さんに怒られたらどうしよう...いや、怒られるに決まってる...」という葛藤がグルグルと渦巻いているのが手に取るようにわかる。
「絶対盛り上がりますよ!だってこのキャンプ場のトイレ、昨日使ったら便座が氷みたいで、お尻が凍傷になるかと思いましたもん!」
千葉が勢いよく立ち上がった。彼の顔は紅潮していて、既にこのプロジェクトに全身全霊で乗り気だ。まるで革命家のような熱い眼差しだ。
「そうそう!千葉、わかってるじゃん!あのトイレ、マジで極寒地獄だったもんな!」
二人がハイタッチする。パァン!という軽快な音が、静かな冬のキャンプ場に響き渡った。遠くでカラスが一羽、驚いて飛び立った。
富山は深く、深く溜息をついた。もう二十七回も止めきれなかったのだ。二百二十七回目だって止められるわけがない。彼女はポケットからチョコレートを取り出して、やけ食いを始めた。
「...管理人さんには許可取るのよ?絶対よ?約束よ?」
「当たり前じゃん!俺達、ルールは守るグレートキャンパーだぜ!」
石川がニカッと笑う。その笑顔はあまりにも無邪気で、富山は思わず顔を覆った。チョコレートを咀嚼する音だけが、虚しく響く。
三十分後。
「えっ...いいんですか?マジで?本当に?」
富山が目を丸くして、管理棟の前で立ち尽くしていた。信じられないという表情で、何度も瞬きをしている。
「ああ、面白そうじゃないか!実は俺もあのトイレ、冬場は寒くて困ってたんだよ。昨日なんか客から『南極か!』ってクレーム来たくらいでな」
キャンプ場の管理人・佐藤さん(五十代・グレーのヒゲが特徴的・元大工)が豪快に笑った。彼は元大工だけあって、DIYという言葉に目がないらしい。目がキラキラと輝いている。
「マジっすか!やった!佐藤さん、愛してます!」
石川と千葉が飛び跳ねる。まるで遠足前日の小学生のようだ。二人で抱き合って、その場でクルクル回り始めた。
「ただし!」
佐藤さんが人差し指を立てる。二人の動きがピタリと止まった。
「ちゃんとした資材を使うこと。火事を出さないこと。他のお客さんの迷惑にならないこと。それから...」
彼は少し悪戯っぽく笑った。ヒゲがピクピクと動く。
「完成したら真っ先に俺に使わせろよ。昨日の夜なんか、便座が冷たすぎて腰抜かしたんだからな」
「イエッサー!!!」
石川と千葉が敬礼する。富山は額に手を当てて、小さく「どうしてこうなった...神様...仏様...」と呟いた。
準備は迅速だった。
石川が軽トラで持ち込んだのは、段ボール箱に入った大量の電気機器、配線コード、そして謎のセンサー類。千葉は目を輝かせながら、一つ一つを丁寧に取り出していく。その様子はまるで、古代の宝物を発掘する考古学者のようだ。
「これが電熱便座ユニット!これが人感センサー!こっちがアロマディフューザー!そしてこれが...」
石川がドラマチックに一番大きな箱を取り出す。
「簡易ウォシュレットキット!そしてBluetoothスピーカー!」
「うおおおお!完璧じゃないですか!」
千葉が興奮のあまり、その場で小さくジャンプする。
「で、電源はどうするの?まさかまた考えてないとか言わないわよね?」
富山が現実的な質問を投げかけた。彼女の表情は既に「どうせ考えてないんでしょ」と言いたげだ。目が半分死んでいる。
「へへへ、そこはぬかりなし!」
石川がドヤ顔で指を鳴らすと、千葉が「ジャジャーン!」という効果音とともに、大きなポータブル電源を三台取り出した。まるでマジシャンのようだ。
「容量2000Whのポータブル電源、三台持ってきました!これで二晩は余裕で動きますよ!総コスト...聞きます?」
「聞かない!絶対聞かない!」
富山が耳を塞いだ。
「おお...意外としっかり準備してる...というか、やりすぎ...」
富山が思わず感心と呆れの混じった声を出す。でも次の瞬間、不安がよぎる。「いや、待って。これってつまり本気中の本気なのよね...もう止まらないわよね...」
キャンプ場のトイレは、木造の素朴な建物だった。扉を開けると、確かにひんやりとした空気が流れ込んでくる。便器は陶器製のシンプルなもので、便座は冷たいプラスチック。壁には「きれいに使いましょう」という手書きのポスターが貼ってある。
「よし!まずは採寸から!」
石川がメジャーを取り出して、便座のサイズを測り始める。千葉は熱心にメモを取り、富山は入口で見張りをしながら、他のキャンパーが来ないか気を配っていた。彼女の目は鷹のように鋭い。
「便座、縦42センチ、横37センチ!便器の高さ40センチ!水道管の位置、左側15センチ!」
「了解!電熱ユニット、ジャストフィット確認!ウォシュレットノズル取り付け位置、問題なし!」
二人の息はぴったりだ。まるで何年も一緒に仕事をしてきたチームのようだった。いや、むしろ怪しい秘密結社の儀式のようだ。
「ねえ、本当に大丈夫なの...?感電とかしない...?水漏れとか...」
富山が心配そうに声をかける。彼女の声は震えている。
「大丈夫大丈夫!ちゃんと防水仕様だし、漏電ブレーカーもついてるから!俺、YouTubeで配管工事の動画100本見たし!」
「100本見ただけかい!」
富山がツッコむ。でも石川は既に作業に没頭していた。
作業が本格的に始まると、石川の目つきが変わった。
「まずは便座ヒーターの取り付けだ...ふふふ...」
石川が電熱便座ユニットを慎重に便器にセットしながら、不気味に笑い始めた。その目は異様に輝いている。まるで何かに取り憑かれたようだ。
「石川さん、大丈夫ですか...?」
千葉が少し引きながら尋ねる。
「ふふふふふ...聞こえる...聞こえるぞ...便器のささやきが...」
「聞こえないわよ!正気に戻りなさい!」
富山が石川の肩を揺さぶる。
「『温めて...私を温めて...』と便器が言っている...」
「言ってない!絶対言ってない!」
しかし石川は止まらない。配線を壁に這わせ、ネジを締め、パーツを組み立てていく。その手つきはプロのようで、そして狂気じみていた。汗が額に浮かび、目は血走っている。
「次はウォシュレットだ...ふふふ...水圧の調整...角度の設定...ノズルの位置...完璧に...完璧にしなければ...」
石川が水道管に簡易ウォシュレットキットを接続していく。その動きは早く、正確で、そして何か憑かれたようだった。口元がニヤニヤと笑っている。
「石川...あんた、疲れてるのよ...少し休みなさい...」
富山が心配そうに声をかけるが、石川は振り向きもしない。
「ノズルの角度...38度...いや、39度か...ふふふ...便器が教えてくれる...最適な角度を...」
「便器は何も教えてくれないわよ!」
千葉も不安そうな顔で石川を見つめている。でも同時に、その完璧な作業ぶりに感動もしていた。
「人感センサーの設置...天井から1.8メートル...感知範囲は180度...ふふふふふ...完璧だ...」
石川がセンサーを天井に取り付ける。その瞳は爛々と輝いている。
「そしてBluetoothスピーカー...音楽が...トイレに音楽が必要なんだ...癒しの音楽が...」
スピーカーが便座の後方に設置される。配線は美しくまとめられ、まるで芸術作品のようだった。
「アロマディフューザーも...ラベンダー...いや、ヒノキ...いや、両方だ...ふふふ...」
二つのディフューザーが設置される。石川の動きはもはや機械のように正確だった。
二時間後。
「完成だ...ふふふふふ...」
石川が工具を置いて、トイレを見つめた。その目には達成感と、そして何か狂気じみた満足感が宿っていた。汗でシャツがびっしょりだ。
トイレは完全に変貌していた。便座には電熱ユニットとウォシュレットノズルが装着され、天井には人感センサー、壁にはBluetoothスピーカー、そして二つのアロマディフューザー。配線は綺麗にまとめられ、ポータブル電源は外の目立たない場所に設置されている。
「石川...あんた、やり遂げたわね...」
富山が感動と呆れの混じった声で言った。
「よっしゃ!動作確認といこうか!千葉、スマホでスピーカーに接続してくれ!」
石川が正気に戻ったようだ。目の輝きが通常に戻っている。
「了解です!えーっと、Bluetooth...接続...おお、繋がった!」
千葉がスマホを操作する。
石川がメインスイッチを入れる。
ウィーン...
微かな電子音とともに、システムが起動した。
「人感センサー、テスト!」
石川がトイレに入ると、ピッという電子音が鳴り、便座がほんのり温まり始めた。同時に、スピーカーから穏やかなクラシック音楽が流れ出す。
「うおおおお!音楽流れた!」
千葉が感動の声を上げる。
「便座温度、設定38度...順調に上昇中...」
石川が便座に手を当てて確認する。
「ウォシュレット機能、テスト!」
ボタンを押すと、シュッと水が噴射された。
「角度良し!水圧良し!温水機能良し!」
「すごい...本当に完璧じゃない...」
富山が恐る恐る中を覗き込むと、そこにはもう普通のキャンプ場のトイレではない、近未来的な空間が広がっていた。ラベンダーとヒノキの良い香りが漂っている。
「よし!じゃあ佐藤さんを呼んでこよう!」
石川が満足げに腕を組む。
しかし、その時だった。
「あの、すみません...トイレ、使ってもいいですか...?」
入口に、一人の中年男性(四十代・少し疲れた表情)が立っていた。彼は顔色が悪く、明らかに切羽詰まった様子だ。
「あ、はい!どうぞどうぞ!ただ今、超ハイテク化したばかりなので!」
石川が道を開ける。
男性は「ハイテク...?まあいいや、とにかく急いで...」と駆け込んでいった。
三人は外で待つ。
数分後。
「...おお...おおおお...」
トイレの中から、男性の驚きの声が聞こえてくる。
「温かい...便座が...こんなに温かい...」
さらに数秒後。
「うおおおお!音楽!クラシック!モーツァルト!」
男性の声が大きくなる。
「そして...このいい香り...ラベンダー...?ヒノキ...?」
三人は顔を見合わせた。
そして。
「ウォシュレット...だと...!?キャンプ場で...ウォシュレット...!?」
男性の驚愕の声が響く。
「このトイレは...このトイレはいいぞ!キマるうううううう!」
「キマってるわよ!」
富山がツッコむ。
扉が勢いよく開いて、男性が飛び出してきた。その顔は紅潮していて、目は涙で潤んでいる。
「あなたたち...神か...!?」
男性が石川たちの手を握った。
「昨日、このトイレ使って地獄を見たんです...便座が氷で、お尻が凍傷になるかと思って...もう二度とここには来ないと心に誓ったのに...」
男性が感動の涙を流す。
「それが...それが今日は...天国...天国だった...」
「それはよかったです!」
千葉が笑顔で応える。
「妻を呼んできます!子供たちも呼んできます!みんなに体験させたい!」
男性が走り去っていった。
「...なんか、すごい反応だったわね...」
富山が呆然とする。
しかし、それは序章に過ぎなかった。
十分後。
トイレの前には、既に五人の行列ができていた。
先頭は先ほどの男性の妻(四十代・優しそうな顔)だ。彼女は両手で下腹部を押さえながら、必死の形相で順番を待っている。
「早く...早く...」
彼女の後ろには、若いカップル、ソロキャンパーの男性、そして家族連れが並んでいる。全員が切羽詰まった表情で、足踏みしたり、体を左右に揺らしたりしている。
「み、みなさん、そんなに我慢しなくても...」
富山が心配そうに声をかける。
「いや、このトイレを体験したいんです!」
若いカップルの男性が必死に言う。彼の額には汗が浮かんでいる。
「さっき使った人から聞きました!天国だって!僕も天国を体験したい!」
「天国行くのはまだ早いわよ!」
富山がツッコむ。
先ほどの中年男性の妻がトイレから出てきた。
「...素晴らしい...素晴らしいわ...」
彼女は恍惚とした表情で、まるで悟りを開いたような顔をしている。両手を胸の前で組んで、感動に震えていた。
「便座の温もり...音楽の癒し...アロマの香り...そしてウォシュレットの心地よさ...全てが調和している...」
「調和してるのね...」
富山が遠い目をする。
「このトイレはいいぞ!キマるううううう!」
女性も叫んだ。
「だからキマらないで!」
次々と利用者がトイレに入り、そして全員が感動して出てくる。
「温かい!こんなに温かい便座、初めて!」
「音楽が!モーツァルトが!トイレで聴くモーツァルトは格別だ!」
「ウォシュレットの水圧が絶妙!38度の温水が優しい!」
「このトイレはいいぞ!」
「キマるううううう!」
口々に叫ぶ利用者たち。その光景は異様だった。まるでトイレ教の信者のようだ。
行列はどんどん長くなり、ついに十五人になった。
「お腹痛い...でも待つ...この天国トイレを体験するまで...」
一人の若い女性が、涙目で列に並んでいる。
「頑張れ!あと三人だ!」
後ろの男性が励ます。
「ありがとう...私、頑張る...」
二人は見ず知らずの他人なのに、トイレ待ちという共通の目的で団結していた。
「なんなのよ、この光景...」
富山が頭を抱える。
「グレートだろ?」
石川がドヤ顔で腕を組む。
「グレート...なのかしら...これ...」
その時、佐藤管理人が駆けつけてきた。
「おい!何だこの行列は!」
「佐藤さん!完成しましたよ!」
石川が親指を立てる。
「マジか!じゃあ俺も...」
佐藤さんが列の最後尾に並ぼうとした瞬間、ハプニングが起きた。
ブツン。
突然、トイレの明かりが消えた。
「え!?」
「停電!?」
利用者たちが慌てる。中にいた人が「うわあああ!」と叫んだ。
「まずい!ポータブル電源の一つが容量切れだ!」
千葉が慌てて電源のところに走る。
「早く!早く交換して!中の人が真っ暗だから!」
富山も駆け寄る。
「わかってる!予備のバッテリー!予備のバッテリー!」
石川が必死に段ボールを漁る。その動きはコミカルで、まるでドリフのコントのようだ。
「あった!」
石川がバッテリーを取り出し、猛ダッシュで交換する。その速さは陸上選手並みだった。
カチッ。
接続が完了し、電源が復活した。
「うおおおお!」
中から歓声が上がる。
「助かった...真っ暗の中でウォシュレット使うところだった...危なかった...」
中年男性が安堵の表情でトイレから出てきた。
「すみません!バッテリー管理のミスです!」
石川が深々と頭を下げる。
「いや、それよりもこのトイレ、最高だったよ!ありがとう!」
男性が笑顔で握手を求めてきた。
行列は続く。
そして一時間後。
キャンプ場中に噂が広がっていた。
「あのトイレ、すごいらしいよ」
「ハイテクトイレだって!」
「キマるらしいよ!」
「キマるって何よ!」
さらに隣接するキャンプ場からも人が来始めた。
「隣のキャンプ場から来ました!噂を聞いて!」
三十代くらいの男性が息を切らして駆けてきた。
「隣から!?」
富山が驚く。
「ええ!SNSで拡散されてるんです!『伝説のハイテクトイレ』って!」
男性がスマホを見せる。確かに、Twitterで「#グレートトイレ」というハッシュタグがトレンド入りしている。
「マジか...」
石川が目を丸くする。
その時、二度目のハプニングが起きた。
石川のスマホが鳴った。
「もしもし?」
「あ、あの、私、となり町のキャンプ場の管理人をしている者なんですが...」
電話の向こうから、緊張した男性の声が聞こえる。
「はい、何でしょう?」
「噂を聞きました...ハイテクトイレ...うちのキャンプ場にも作ってもらえませんか...?お願いします...冬場、客が来なくて困ってるんです...」
「えええええ!?」
石川が驚きの声を上げる。
千葉と富山も駆け寄る。
「ど、どういうこと?」
「となり町のキャンプ場から、トイレ改造の依頼だって...」
「マジで!?」
三人が顔を見合わせる。
「あの、返事は...?」
電話の向こうの声が不安そうだ。
「えーっと...検討します!」
石川が慌てて電話を切る。
「どうする?石川」
千葉が興奮した様子で尋ねる。
「どうするって...俺達、トイレ改造業者になるのか...?」
石川が混乱している。
「それよりも、この行列どうするのよ!もう二十人超えてるわよ!」
富山が指差す。確かに、行列は果てしなく続いていた。みんな必死の形相で、中には正座して待っている人までいる。
「おい、あと何人だ!」
「あと十八人です!」
「頑張る...私、頑張る...」
涙目の女性がまだ並んでいる。彼女は列の中盤だ。
「誰か!誰か彼女を先に入れてあげて!」
後ろの男性が叫ぶ。
「いや、順番は守らないと!」
前の方にいた男性が反対する。
「トイレ待ちで喧嘩するな!」
富山がツッコむ。
結局、その日は日が暮れるまで行列が続いた。
利用者は全員、満足そうな笑顔で帰っていった。
「このトイレはいいぞ!」
「キマったああああ!」
「また来ます!」
口々に感謝の言葉を残して。
夜、三人は焚き火を囲んで、缶ビールを片手に語り合っていた。
「いや〜、まさかあんなに人気になるとは...」
石川が満足げに缶を傾ける。
「SNSのトレンド入りまでするなんて、思ってもみませんでした...」
千葉が笑顔で応える。彼のスマホには、まだ通知が鳴り続けている。
「...で、となり町のキャンプ場の依頼、どうするのよ?」
富山が現実的な質問を投げかける。
「うーん...考えとく...」
石川が頭を掻く。
「でも石川さん、これってビジネスチャンスじゃないですか?『グレートトイレ改造サービス』!」
千葉が目を輝かせる。
「それだと私たち、トイレ改造業者になっちゃうじゃない...」
富山が頭を抱える。
「でも、みんな喜んでくれたじゃん?」
石川が穏やかに笑う。
「...まあ、それはそうだけど...」
富山も小さく認める。
その時、また石川のスマホが鳴った。
「もしもし?」
「あの!私、三つ隣の県のキャンプ場の管理人なんですが!うちにも!うちにもハイテクトイレを!」
「えええええ!?」
石川が叫ぶ。
千葉と富山が慌てて覗き込む。
「どこまで広がってるのよ、この噂...」
富山が呆れる。
「石川さん!これは革命ですよ!トイレ革命!」
千葉が興奮している。
「革命って...」
焚き火の炎が揺れ、星空が広がる。遠くからは、まだトイレを体験した人たちの興奮した声が聞こえてくる。
「このトイレはいいぞ!」
「キマったああああ!」
「だからキマるなって!」
富山のツッコミが、夜空に響いた。
翌朝。
撤収の時間になったが、まだ人が集まってきていた。
「最後にもう一度、使わせてください!」
「お願いします!」
必死に頼む人々。
「すみません、もう片付けないと...」
石川が申し訳なさそうに説明する。
「じゃあ、また設置してくれる日を教えてください!絶対来ますから!」
「僕もです!」
「私も!」
口々に叫ぶ人々。
富山は、その光景を見て、胸が温かくなるのを感じた。
「...やっぱり、石川のキャンプは...人を幸せにするのね...トイレで...」
小さく呟くと、石川がニヤリと笑った。
「聞こえてるぞ、富山」
「聞こえてないわよ!」
富山が慌てて否定する。
千葉がクスクスと笑いながら、最後の機材を車に積み込んだ。
佐藤管理人がやってきた。
「お前たち...常設にする方向で、検討させてくれ」
「マジっすか!」
石川が驚く。
「ああ。ポータブル電源じゃなくて、ちゃんと電源引くから。お前たちの設計図、貸してくれるか?」
「もちろんです!」
千葉が嬉しそうに設計図を手渡す。
「それから...となり町のキャンプ場からも正式に依頼が来てる。お前たち、本当にやるか?」
佐藤さんが真剣な顔で尋ねる。
三人は顔を見合わせた。
「...どうする?」
富山が二人を見る。
「やろうぜ!」
石川が拳を掲げる。
「僕もやります!」
千葉も拳を掲げた。
「...仕方ないわね」
富山も、小さく拳を掲げる。
三人の拳が、青空の下で輝いた。
車に乗り込むと、石川のスマホがまた鳴った。
「もしもし?」
「あの、全国キャンプ場協会の者なんですが...」
「全国!?」
三人が驚きの声を上げた。
「あなたたちの取り組み、協会でも注目しています。全国のキャンプ場でハイテクトイレを普及させたいのですが...」
「ええええええ!?」
車内に三人の叫び声が響く。
「俺達...どこまで行くんだ...?」
石川が呆然とする。
「全国ですよ...全国...」
千葉も信じられないという顔だ。
「...次は何が起きるのかしら...」
富山が遠い目をする。
でも、三人とも笑っていた。
車はゆっくりとキャンプ場を後にした。
後部座席から、富山が呟く。
「ねえ、次はどこのキャンプ場に行くの?」
「となり町...だな」
石川が笑う。
「トイレ改造しに...ですね」
千葉も笑う。
「...私たち、キャンパーなのよね?トイレ改造業者じゃないわよね?」
富山が確認する。
「グレートキャンパーだよ!」
「グレートなトイレ改造キャンパーですね!」
「それもうキャンパーじゃないでしょ!」
三人の笑い声が、車内に響いた。
冬の陽射しがキラキラと輝いて、新しい冒険の予感がした。
「俺達のグレートなキャンプ」は、まだまだ終わらない。
電熱の利いたトイレは、笑顔と温もりと、そして少しの狂気と共に、全国のキャンプ場に広がっていくのだった。
そして伝説は続く。
「このトイレはいいぞ!」
「キマるううううう!」
「だからキマるなあああああ!」
富山の絶叫が、冬空に響き渡った。
〈了〉Claude は AI のため、誤りを含む可能性があります。回答内容は必ずご確認ください。
『俺達のグレートなキャンプ228 電熱の利いたトイレをDIYしようぜ』 海山純平 @umiyama117
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