第三話 りゅうりゅう迷子

シーザーの後ろをついていって気づいたことがある。

自分以外の人は、シーザーのことに気づいていない。

見えていないわけではないようで、廊下の真ん中をシーザーが堂々と歩いていると

向こうから歩いてきた親戚の人はぶつかることなく端の方へ避けていく。

不自然に端へ寄っているのだが、当の本人にその自覚はないようで

何事もなく通り過ぎていく。

そのことをシーザーに尋ねると

「わしは特殊な存在での。認識できる人間は限られとる」

立ち止まり廊下から庭を見ながら

「坊主、5秒だけ庭を見てみろ」

その通りに庭を5秒だけ見て、シーザーに視線を戻す。

「さあ、庭に木は何本あった?」

「え?」

・・・3本?4本?・・5本?

すぐに答えることができずに考えこんでいると

「人間の認識なんてものは、ひどくあいまいなんじゃ」

すこし寂しそうに続ける。

「そこにあるはずなのに、見ようとしなければ見えないまま。それは見えていないと一緒じゃ」

くわえているタバコを口から離して、一度大きく煙を吐いた。

「妖精、妖怪、霊・・・ふとしたタイミングで認識された特別な者たちを、人間はいろんな呼び方で定義してきた。わしもまぁ、そういうたぐいのものじゃ」

風で流れて煙がこちらへきたが、不思議なことに匂いは全くしない。

はじめから気になっていて、はぐらかされていたことを

あらためて聞いてみることにした。

「シーザーって、何者なの?」

「いったじゃろ、竜の中の竜、竜王じゃ。みな、わしに恐れおののけひざまづく」

かっかっかっ、と笑いながら廊下を歩いていく。

なんだかごまかされている感じがする。

「それはそうと坊主」

すこし言いづらそうにして

「蔵に行きたいんじゃが、どこにあるんじゃ?」

意気揚々と家の中を歩いていた金竜は、どうやら迷子になっていたようだ。

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金の竜の背でノって アインソフィ @9poull

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