第二話 とべない竜は、ただのトカゲだ

おばあちゃんの葬式が終わって数日が経った。

「おばあちゃんが生前整理をしていたからすぐに帰れるよ!」と自信満々に言っていたお母さんは、僕のとなりで疲れてぐったりとうなだれている。

コタツと合体してしまいそうなぐらい、びったりとはりついている。

おばあちゃんの家は広い。とんでもなく広い。はじめて来た人は迷子になってしまうにちがいない。そんな迷路のような家の中を、金色の竜は我が物顔で歩いていた。

その後ろをついていきながら観察してみた。

小学5年生にしては高身長の僕の、半分ぐらいの背丈。

威厳がまったく感じられないホッチキスのような顔。

くびれのない電柱のような胴体。

安っぽいコンパス(文房具)のような手足。

猫の肉球のようなものがさきっぽについている可愛らしい翼。

世界的に有名な電気ネズミの尻尾に似た尾っぽは、なぜか常に左右に揺れている。

どう見ても、ゆるキャラにしか見えない。

どこかのお城のてっぺんに載せられている『しゃちほこ』を思い出した。

いろんなことを考えていると、そのゆるキャラが口を開いた。

「おまえさん・・・いま、めちゃめちゃ失礼なこと考えてやしないか?」

「そ、そんなことないよ? しゃちほこさん」

「顔だけじゃなくて、口に出とるぞ」

前を歩いていたしゃちほこが振り返り、器用に後ろ向きに歩きながら不服を訴える。

「しゃちほこを悪く言うつもりはないが、あれは「魚」だ。「竜」じゃねえ。そこのところ間違えるんじゃねえ」

しゃべりながらも器用に煙草をくわえている。

なぜだかタバコの煙は漂ってくるが匂いはしない。

「まぁ、ちゃんと自己紹介したわけじゃねえからな。いろいろと変な想像しちまうのも仕方ねえのかもな」

そう言うと、金色の竜は腕組みをして「ドドーン!」という効果音が背後に出てきそうな勢いで言い放った。

「わしの名は「シーザー」! 竜の王者! 金色の覇者じゃ!」

そして勢いそのままに翼を大きくはためかせ、空に飛んで・・・いかなかった。

すこしだけ宙にういて、そのまま同じ場所に着地した。

ぽふん、と情けない音がした。

金色の竜「シーザー」は、大きく翼を動かして疲れたのか、それとも冷や汗か、どちらとも分からない大量の汗をかいていた。

すこしだけ、しずかな時間が流れた。

僕がぽつりと「とべない竜は、ただのトカゲだ」と呟くと

その場でシーザーは膝から崩れ落ちて、本当にしゃちほこのような形になった。

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