やさしい王都.3

朝起きて、くつろいでいたところを大臣に呼び出された。


話は、この後の方針について。




今のところ、僕のことを完全に信用しているわけではないらしい。


ただ、召喚の際に本来いるはずの一人が足りなかったのも事実だ。




そこで――僕の行動を見極めたうえで、


本当に勇者として扱うべきか判断するため、


しばらく王宮で働いてほしい、という話だった。


……要するに、様子見、というやつだ。




まあ、この話は僕としても悪くない。


だが問題が一つある。


王宮で働いてほしいというのが、


メイドとして働いてほしい、という意味だったのだ。




いやね、働くのはいい。掃除でも何でもするよ。


でも、メイド服を着てやれってのは話が違う。




確かに今は女の子だけど、もともとは男だったんだよ。


——まあ、決まったことだ。しょうがない。




メイドになると決まったからには、何をしたらいいか聞かねばならない。


ということで、先輩メイドから聞いたことをまとめると、




まず基本として、窓拭き、床掃除、庭の手入れ、洗濯物、お風呂掃除。


買い出しなんかも挙げられた。


3ヶ月に一回、天井のホコリ落としもあるそうだ。




それと、これに関しては僕だけなのだが、


勇者の護衛も任された。


これは国王直々の願いらしく、


『まだ勇者は強いとはいえない。


だから、危なそうになったら助けてやってほしい』とのことだ。




僕のことを完全に信じさせるチャンスではある。


だが、この姿を他のみんなに見られると考えたら、


羞恥心で死にそうだった。






僕は渡されたメイド服を前に、しばらく固まっていた。


……いや、逃げ場はない。観念して着替えることにする。




鏡に映った自分を見て、思わず息をのんだ。


フリルは控えめで、色も落ち着いている。




似合ってしまっている、という事実が一番つらい。




「……見なかったことにしよう」




そう呟いて、部屋を出た。


その瞬間、クラスの女子集団と目があった。




自室を出たところなので、別人とするわけにもいかなかった。




「藤村......じゃなくてイリムさん?」


「え、めっちゃかわいい!」




いや、ほんと終わった。


その時、カシャ、と言う現代社会で聞き覚えのある音がした。




「えっと、今撮った?」


「うん、撮ったよ。」


「えーなんでスマホ使えるの?葉月。私のとっくに充電無くなったんだけど」


「それはね、雷魔法を応用して充電器にしたからだよ。」




そんな情報今はいい。なんせ、最悪な状況が更に悪化したんだから。


僕はその空間に耐えられなくなったので、速やかに逃走したが。


腐っても勇者らしく、それなりにはついてきた。




身体強化を使ってようやく引き離すことに成功したのだ。


——その時にクラス全員に目撃されていた事を知るのは別のお話。

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