念願の街.1

「知らない天井だ」




冗談めかしで言ったが、実際の状況はあまり良くない。


現在進行系で身体は重く少し息苦しい。




「君、目覚めたのか!」




近くを見ると革の胸当てをつけた男性が驚いたように叫んでいた。体調不良者の近くで叫ばないでくれ。




「待ってて、今医者を連れて来たところなんだ。」




そう言うと男性はどこかへ行ってしまった。


周りを見渡すと僕の今いるベットの左側には木製のクローゼットや机があり、


机には花のない花瓶や小さなオイルランタンが置いてあり、


病室というより客室に近かった。反対側には窓があったため外を見ようとしたとき...




「寝てないとだめじゃないか。君は昨夜、門に近づいてきたと思ったら体調が悪




そうで、近づいたら倒れ込んでしまったんだぞ」




「そうだったんですか。ご迷惑をおかけして申し訳ございません」


「別に謝ってほしいわけじゃないさ。それより1階に待機してもらっていた医者を連れてきたからみてもらうといい」




そう言うと後ろに控えていた男性に声をかけた。見た目は近世の医者って感じだった。




「失礼します」 そう言った後、まずは顔色を見てその次に目の瞳孔、


後は脈拍や体温。他には今の症状と倒れた時の状況を聞かれたのでちゃんと答えた。もちろん街まで飛んできたことや異世界からの転生者だということは伏せてだけどね。




そして、医者によると僕の症状は体内の魔力が枯渇することによる重度の脱魔症状。それと数時間も誰もいないところを歩いたことによる過度のストレス。


この2つが限界を迎えており、


街についたことで緊張の糸が切れたからだと説明された。




「しかし、通常気絶するくらいの魔力枯渇なら数週間。下手したら数カ月は昏睡状態でいるはず... もしかしたらあなたは通常より回復が早いのかもしれませんね。」




そう説明され、僕には スキル“自己回復”があることを思い出し、予期せずこのスキルの効果を確認できてしまった。




しかしなぜ魔力がなくなるまで使っていたんだろう?考えうることはこの街まで飛んできたことだろう。




30分程度しか飛んでいないが、距離にしたら約300キロ以上飛んだことになる。さらに、この羽の大きさなら本来空を飛ぶことはできない。イヌワシを参考にすると、大きさは人よりも小さいが羽を広げた際には人が腕を伸ばしたときと同じ大きさになる。




だから腕より少し長い程度の羽では人と同じ大きさの生物は飛べない。だからこそ足りない分の浮力を魔力で補っていた。そのため少し羽ばたいただけで空高く飛べたし、滞空もできた。


次からはより一層注意しよう。自由自在に飛べることを目指して。




「大丈夫か?」




そう言われ、ふと顔を上げると心配そうな顔をしている先程の男性がいた。




「大丈夫ですよ。ちょっと考え事もしていただけですので。そういえばあなたの名前をしりませんね。」


「確かに、まずは自己紹介からだな。俺の名前は ロバート オレミン。ここの東門の門番をしている。君の名前は?」


「イリム、イリム=テルミア です」




ロバートはイリムの体調が良くなっていることを見て、安堵した表情になった。それから私の事情を訪ねてきた。単に心配というだけかもしれないが、彼は門番だ。街に入ってきた怪しい者の身元を調査することも彼の義務のひとつなはずだ。




なので、ちゃんと彼の問いには答えた。まあそれが真実かどうかは違うけど。


悪いがこの人を完全に信用できていない。確かにこの人は優しい。だけど人はいつかは心変わりするものだ。前にいた友達も今ではほとんど他人と化している。話をすることがあってもそれは授業での会話であって、個人的な会話ではない。




今は高校に行く際に駅でたまに見かける程度の間柄だ。


ただ僕が話下手なだけかもしれないが、それでも中学に上る前に染み付いたこの考え方は簡単には取れることはなく、一種のトラウマのようなものになっている。




「ところでイリムはこれからどうするつもりだ?生活するにもお金がいるが、そんな物は持っていなさそうに見えるが?」




あっ、考えてなかったー。そうだよ今お金ないじゃん。運良く言語は通じているが、お金がないとホテルとかに泊まったり、食事すら取れない。どうしようと考えてたら、そんな感情が顔に出ていたのか。




「もしかして本当に一文無し?」と聞かれ。頷くことしかできなかった。




そんなとき急に




「腕に自信はあるか?」


「えっと、普通の人よりかはできます。」


「だったらいい稼ぎ口がある、。体調はもう大丈夫そうだな。」


「大丈夫です。その稼ぎ口ってなんなんですか?」


「その稼ぎ口は...と教える前にその背中の破けた服をどうにかしようか。」




そう言われ背中を見ると羽を広げた際にできたと思われる穴から背中が見えており、もともとは男だったとはいえ今は(確認してないから多分)女子。そのため次からはちゃんと気をつけようと心の中で深く決意した。


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