第5話 箱庭の二人、確かな体温
箱は思ったより広く、二人は肩を並べて寄り添い、カプセルに一時的に詰め込まれた宇宙飛行士のようだ。
小さな連続ライトの光が彼女の横顔を照らす。とても静かだ。
彼女が眠ってしまったのかと思ったとき、彼女が突然口を開いた。声はほこりを起こさないように、とても小さかった。
「あーみ、なんでうちの家具、みんな古いか知ってる?」
ぼくは首を振る。
「だって、全部『あの頃の家』の家具だから」
彼女は段ボールの内壁を指で引っかいた。
「パパとママの事故のあと、私とお姉ちゃんはここに引っ越してきた。お姉ちゃんは、一番大切なものだけ持ってこようって言ったんだ。でも引越し屋さんが来たとき、リビングを指さして、『人間以外、全部持っていって』って」
彼女は少し間を置き、あの滑稽で悲しい光景を思い出しているようだった。
「だからソファも、ダイニングテーブルも、テレビも……全部『パパとママのリビング』から、『私とお姉ちゃんのリビング』に平行移動しただけ。位置もほとんど同じ」
彼女はこっちを向き、きれいな目でぼくを見つめた。
「お姉ちゃんは忙しい。仕事もあるし、私の面倒も見なきゃ。二週間に一回くらい来て、おいしいもの持ってきて、冷蔵庫を確認して、植物に水をやる。すごく責任感がある」
「でも」
彼女は指を止めた。
「ここで絶対に寝ない。お姉ちゃんの部屋は、実際は倉庫で、劇団のものや……パパとママのいくつかの箱が置いてあるだけ。私が大人になったら、自分で整理しなさいって」
「だから、ときどき思うんだ」
彼女は自分で作ったこの段ボール箱を見回し、声をさらに低くした。
「この家は大きいけど、全部『過去』のもの。この箱だけが……私のものなんだ。小遣いで買ったダンボールで、自分で切って、自分で貼って、自分で星を描いた」
「この中にいると、やっと……」
彼女は言葉を探しているようだった。
「時間が自分のものって感じがする」
「だから箱が君の家なんだ」
「そう」
彼女は涙目でこっちを見る。
「あーみ、触ってもいい?」
ぼくは黙って許すと、彼女はさっそく頭を寄せてきた。手もまとめてぼくの顔にべったりくっつけてくる。
触らせてやろう。
だって、ぼくは彼女が好きなんだから。
箱入り少女に関する、いささか不健全な哲学的考察 サクサク @Imb8
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