第3話 解かれたボタン、あるいは皮膚の境界線
横向きに寝転がり、ソファに顔を向けたまま、背後の足音を聞いた。
小水も疲れたようだ。
足音が止まり、何かがぼくの背中に寄りかかってきた。重い。
小水の背中だとわかる。
「疲れたよー。そんなに乗っからないでよー」
ぼくはごろんと仰向けに戻り、彼女を背中から転がし落とそうとした。ちょうど、小水の目の前の顔と向き合うことになった。
彼女はいつしか制服の上着を脱ぎ、シャツ一枚になっていた。えりのボタンは二つ外れている。
「休みたい」
ぼくはぶつぶつ言いながら、彼女を押しのけようとした。
彼女はその姿勢のまま、片膝をソファに乗せ、もう片方の足のストッキングをゆっくりと巻き始めた。
上から下へ、ふくらはぎ、足首、最後は白い足の裏が見える。脱いだストッキングは彼女の制服のポケットに適当に押し込まれ、次にもう片方の足に取りかかる。
その間、彼女は一言も話さず、ただその薄い繊維の相手に集中していた。
部屋には、ストッキングの繊維がこすれるかすかな音と、暖房器具の持続的なジージーという音だけが残る。
ぼくの視線はどこに落ち着けばいいのかわからず、最後は彼女の動きに合わせてわずかに揺れる肩のラインに止まった。
何とも言えない、静かな親密感が、温かい水のように部屋を流れ、二人を包み込んでいる。
それから、彼女は脱ぎ終え、素足で床に立ち、ぼくに手を差し伸べてきた。
「さて、箱を見に行く?」
彼女が指さす方を見る。二階だ。
ここに来た目的だった。
彼女は裸足で、ぴょんぴょん跳ねながら上がっていく。ぼくは後ろに残る――冬の階段はきっと冷たいだろうと思って――彼女の足は氷の上に紙を敷いたようで、足の裏は凍りつきそうな冷たいクリームだった。
廊下からは一階のリビングが見渡せる。壁の両側にはそれぞれ二部屋、その間にまた一つ部屋がある。両側に窓。
床板がきしきしと音を立てる。
目を閉じると、さっきの光景がまた脳裏に浮かぶ。
彼女の脚は白くて長い。足もそうだ。彼女は本当の女の子なんだろう。
ただ頭が少し悪い。
ある哲学者が言っていた。私たちは身体を「持っている」のではなく、私たちは身体そのものなのだ。私たちは皮膚と世界との境界を通して、自分の存在を感じる。
ならば、もし二人の境界が想像の中でぼやけ、絡み合いたいと願うとしたら、それは何を意味するのか?
より深い「存在」への招待だろうか?
うん。彼女のほうがより本当の女の子らしいなら、ぼくみたいなありふれたのは、おそらく女の子ではない。
なら、ぼくはすでに女子力と女子の定義の範疇から外れているのだから、もし彼女が本当にそんな招待をしてきたら、それを受け入れてもいい。
「でも、今夜ぼくはどこで寝るの?」
「お姉ちゃんの部屋で寝る? でも片付けないと。まあ、他の場所でもいいけど」
「他の場所?」
「うち」
小水は自分の部屋のドアを押し開けた。
夕日がまっすぐにぼくの顔を照らし、目がしばらく開けられなかった。
とてもシンプルな家。
窓が明るく、清潔。調度品も質素だ。本棚、机、上から見ると空いた正方形の直角。直角の半分に一本線が引かれ、その先に真っ白なベッドがある。
一階と同じで、狭くても必要なものは揃っている。
「小水の部屋、思ったよりきれい。小水って、生活態度だけで結構好かれるタイプだね」
どういうわけかそんな言葉が出てきた。
喉を潤す一瓶のコカ・コーラに見えて、飲んでみたらペプシ・コーラだったように。ぼくはどうやって、自分が言った「好き」の意味を定義すればいい? ペプシかコーラか? 本当に味見したいって彼女が言い出したらどうしよう? だって彼女は本当に頭が悪いから。
少し熱い。顔が。
ぼくは別にそんなに好きだと言いたかったわけじゃない。ただ彼女の部屋がきれいだとかほめたいだけだった。しくじった。
後悔する。
いつの間にか小水が隅から箱を引っ張り出していた。
「こっちおいで」
「こっちだよ」
小水は部屋の中央に開け放たれた段ボール箱のそばに歩いていき、しゃがみこむと、巣に戻る小動物のように、軽々と中へともぐりこんだ。
箱の中から、ごそごそと姿勢を整える音がする。
それから、彼女の声が箱の口からもごもごと、奇妙な反響を伴って聞こえてきた。
「あーみもおいで」
「入、入るの?」
ぼくは喉が詰まる。あの箱は……あまり広くなさそうだ。
「違うよ」
白い手が箱の口から伸びて、ぼくに手招きした。
「手を入れてみて」
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