第2話 二人きりの家、微熱のような午後

少女の力は強くない。離れたいなら、いつでも手を引くことができる。


 だってぼくは彼女の友達じゃないし、仲も良くないんだから。


 ぼくは尻尾を掴まれるのも、出鱈目な誘いも好きじゃない。


「行く」


 でも、言葉は自然と喉から零れ出た。


 彼女は自然にぼくの腕を組み、にこにこしながらこっちを見ている。


 彼女の手はとても暖かくて柔らかい。比べて、ぼくの組み上げられたほうの手は冷たくて荒れていて、見栄えも悪い。少し嫉妬してしまう。



***



 彼女について、どこかそれほど大きくない家の前に来た。


「ここが君の家?」


「違うよ」


「え?」


「でも鍵は持ってる」


 訳もわからず、ぼくは玄関に立たされていた。


「ほら、これ履いて」


 彼女が下駄箱の隅から透明なビニール袋を取り出す。


 このスリッパは新しい。


 今日は金曜日。ぼくは家に電話をして、今夜は帰らないと伝えた。


 外泊することはめったにないので、両親はむしろ喜び、もう数日いて、月曜日に友達の家から一緒に登校してもいいと言ってくれた。


 自宅警備員もたまには外で休暇を取る。普通のことだ。


 反対されなかったので、小水の家に来たばかりの不安な気持ちも少し落ち着いた。


 でも、どこの友達の家に泊まるのか聞かれたとき、小水の家だと言うと、彼らはしばらく沈黙した。


 変な原始時代裸体少女の小水とは遊んでほしくないんだろう、と思い、小水の面子を考えて、何度も説明した。


「じゃあ、決まりね」


「うん。小水ちゃんの面倒、ちゃんと見てあげてね。いじめちゃダメだよ」


「え???」


 切られた。


 勝手に変なこと言って、喜んでいるのか心配しているのかわからない。


 彼女の家は広くない。


 リビングダイニングはかなり広く、テーブルがかなりのスペースを占めている。ソファ、冷蔵庫、テレビは、みんな隅っこに押しやられている。どれもずいぶん長く使われているようで、十数年前のデザインばかりで、おばあちゃんちに帰った時しか見たことがなかった。


 別に嫌いじゃない。ほこりもなく、汚くもない。自分の部屋よりずっときれいだ。


 目を引くのは、隅にあるいくつかの色とりどりの仮面だ。


 きれいに壁に掛けられていて、中には頭型のラテックスの上にかぶせてあるものもある。


 薄暗い照明の中、何かを準備してうろうろし、ぼくを箱に詰め込もうとしている少女と組み合わせると、なかなかお化け屋敷の雰囲気だ。


 聞いてみたら、お姉さんが劇団で働いていて、これは劇団で使う小道具なんだそうだ。


 分厚いコートとタイツを脱ぎ捨てると、ぼくはソファにどさりと座り、疲れた体が一気に心地よく潰れた。思い切って横になった。


 部屋は静かで、暖房器具からのジージーという微かな音だけが響いている。


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