第4話 透かせる赤の軽薄さ

夕飯の支度をしていた、エラはすっかり料理も覚えて将来は良い奥さんになりそうだ。やめろ、目眩がする。誰の奥さんになると言うのだ、あの男か?ロバートか?なんだ、それともあのエラを見ると鼻の下を伸ばす郵便屋か?近所のジジイもエラばかり見ていた。あぁ、あぁ、、 抑えきれなくなったパニックがエラの前で出てしまう。


「誰の奥さんになる気なんだっ!!」


エラの肩を強く抑えて怒鳴りつけるように訊いてしまった。エラの酷く困惑した顔をしたのをしっかりと確認し、ただ返事を待つ。


「ふふふ、なにそれ…ジョシュ変だよ?」


笑って流された…いや、流してもらった。そうだ、こんなの変だ。異常だ。おかしくなってる。そんな事をただ棒立ちで考えると机の上には夕飯が綺麗に並べられていた。


「ほらっ!食べようよ!」


言われるがままにフォークとナイフを手に取って肉を切る。正面を向けば口にソースを付けたエラがいる。俺は、何を望んでいたのだろう。恐ろしいことは考えないのが一番だと大佐から教わった。





明らかに、ロバートの弊害がジョシュに出てきてしまっている。告白を見せつけたのが悪かったかしら?でも、こんな依存されていては困る。全ての欲がなんのフィルターもなしにエラに向いて、雑な演出になっている。これは私にとって何より許せない事で、ガキのくせに生意気だと団長から言われた事を思い出した。…そういえば、ジョシュがエラにガキという言葉を使わなくなった事に気づいた。

 

学校でロバートに告白の返事を求められた。1週間ほど避けていたのだけれど、察せる程の頭はないようで正直スパイスくらいに考えていたから後処理が面倒くさく感じた。


「どうかな?ジョシュさんが原因で返事をくれないんだろ?」


生意気な奴だと思った。私が彼を配役に選んだのに原因なんて言い方はないだろう。勝手に想ってきたのはそちらのくせに…いや、あまり必死なのもエラにのめり込み過ぎているからだと思う。


「私ね、紅はつけないの。ごめんね」


「なんだい?それは赤毛差別ジョークかい?!流石の僕でもそういうのは感心しないな!」


何やら勘違いを起こした「赤毛」のロバートは中々コミカルで素敵にも思えた。


「あははっ!!そんなのではないわよ。ただね、純潔でいたいの。エラはそうであるべきだからね…」


ロバートは何故か納得するような素振りを見せて、それからいつも通り話した。





「ただいま」


「おかえり」


「ジョシュは本当に漆黒の髪ね…」


少女は安心したような顔で何も見透かせないジョシュの髪を眺めた。気分が良かった。




冬が訪れ、寒くなると毎年エラは風邪をひいていた。ただ、今回の咳は何か違うように感じたのだ。


「ゴホッ!ゴホッ!ウ、ウエッ…」


酷い吐き気と心臓が持っていかれそうな苦しさを感じ、少女は咄嗟に察した。

はぁ、駄目なのね。でも…案外生きた方じゃない?上出来よね、うん。あーあ。ジョシュに伝えるべきかしら。


1人寒空の中、校庭で悩む少女をロバートはぼやけたような緑の瞳で確かに眺めていた。

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