第2話 エラとして
ある日エラは風邪を引いた。
「ぶぇっくしゅんッ!ジョシュ、風邪ひいたぁー!」
「あーあぁ、下着のまま寝たりするからだろ!あれ程やめろって…」
「うるさいうるさい。布が多いのやなっ!」
「はぁ…そうかい」
とりあえず、風邪だとは思うが子供だし一応病院に連れて行く事にした。
「じゃあここにお名前と、生年月日。あとは持病など書いて下さい」
「はい」
問診票を受け取る俺の後ろにはすっぽりと背中に隠れるエラがいた。
「あぁ〜本名だよな。なんて言うの?」
椅子に座り、ボールペンを弄りながら尋ねるとエラは冷たい目を向けた。
「いいよ、私書けるからさ。ただ、ジョシュは見ないでね」
どうやら自分の身元の把握はしていたようで迷いもなく動く手元だけを焼き付けられた。エラが本当の自分の情報を書いている間はエラでは無いような気がして、まるで他人に見えたのが俺の気分を悪くさせた。
「…書けたか?」
「うん、あの受付のお姉さんに持っていけば良いんだよね?」
「ああ、そうだ」
椅子から立ち上がって受付へ1人で向かうエラを遠目に眺めながら自分が右足を揺さぶっている事に気づいた。
「あっ!ジョシュ,ジョシュッ!」
困ったように笑うエラが俺の元へ戻ってきた。
「ボールペンも返さなきゃ〜」
椅子に置き忘れられたボールペンをエラの小さな手のひらにそっと置く。
「ほらよ」
「ありがと〜!」
にこりとこちらに笑顔を向けるエラを俺は誇らしいような気持ちで見た。
診察も終わり、貰った処方箋を薬局へ持っていく。
「えーと10歳なので…1回1錠、1日3回お飲み下さいね」
薬剤師の穏やかな雰囲気と整った顔に少し余韻を感じながら返事をした。薬局を出るなりなにやらエラがニヤニヤした顔で見つめてくる。
「なんだよその顔」
「…いやぁ〜?たださ、薬局のお姉さん綺麗だったなーってねぇ」
「あぁ〜、そんな俺分かりやすく見てた…?」
「結構みてたぁ!てか歳上好きなんだ〜?」
「どうだろうなぁ〜?ガキにゃ関係ないねぇ〜」
貰った薬を持ってついでに食材でも買うことにした。スーパーに着くと野菜用の空調の寒さに凍えるエラにジャケットを渡した。
「あー!チビだなぁ?」
「ね、凄いブカブカぁ〜!」
持て余した袖をパタパタしながら病人のくせにお菓子をねだりやがる。顔の筋肉が軍人時代とは比べものにならないくらい緩んでいるのが分かる。俺は、このガキに癒されている。
「飯も食うんだからなぁ〜?」
「もちろんもちろん!」
俺のジャケットを着たエラの横顔は髪色との対比もあってか、特に綺麗に見えた。
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