第12話「業界激震」
それから数週間、日本中、いや世界中が「ブレイブ・ソリューション」の名を知ることとなった。
ギガント・インダストリーは事実上の解体に追い込まれ、そのシェアの多くが、健全な運営を目指す新興企業や、監査を受けた公的機関へと移譲された。
そして、その中心にいるのがレオンと舞だった。
都内の一等地に構えた新しいオフィス。
社員も増えた。ギガント社をリストラされた良心的な技術者や、レオンに憧れて門を叩いた若き探索者たちだ。
彼らは「ホワイトな環境」と「圧倒的な技術力」の下、生き生きと働いている。
社長室の窓から、レオンは東京の街並みを見下ろしていた。
スーツ姿が様になってきたが、ネクタイだけはまだ窮屈そうに緩めている。
「社長、次のスケジュールの確認です」
舞が入ってきた。彼女もまた、パリッとしたスーツに身を包み、以前の疲れ切った顔つきとは別人のように輝いている。専務取締役兼社長秘書。それが今の彼女の肩書きだ。
「ああ、聞こうか」
「14時から政府関係者とのダンジョン法改正に関する協議。16時から大手商社との魔導バッテリー共同開発の調印式。18時からは……」
「ストップ。多すぎだ」
レオンが苦笑する。
「俺は現場で剣を振ってる方が性に合ってるんだがな」
「ダメです。社長は会社の顔なんですから。現場は、育成した『勇者候補生』たちが頑張ってくれてます」
レオンの指導を受けた若手たちは、驚異的なスピードで成長していた。
「根性論」ではなく「効率的な身体操作」と「魔力運用」を学ぶことで、事故率はゼロを更新し続けている。これがレオンの目指した「平和的な攻略」の形だった。
「まあ、悪くない気分だ」
レオンは椅子に深く座り直した。
「異世界では、魔王を倒した後は『めでたしめでたし』で終わりだった。その後の復興や、人々の生活がどうなるかなんて、勇者の知るところじゃなかった」
レオンは目を細める。
「でも、ここでは違う。俺が動けば、社会が変わる。人が笑う。美味い飯が食える。……やりがいがあるよ」
舞は優しく微笑んだ。
「はい。レオンさんが作ったこの流れは、もう誰にも止められません。私たちは、世界を変えたんです」
「俺たち、な」
レオンは舞を指差した。
「お前がいなけりゃ、俺は今頃、無免許営業で警察に捕まってたさ」
「ふふ、否定できませんね」
二人は笑い合った。
その時、オフィスの電話が一斉に鳴り始めた。
新たなダンジョン発生の警報だ。今度は、太平洋上の孤島に出現したという。
「……行くか」
「はい、準備はできています」
レオンが立ち上がり、ジャケットを羽織る。
舞がタブレットを抱え、その後ろに続く。
「ブレイブ・ソリューション、出動!」
その掛け声と共に、二人は新たな冒険へと飛び出していった。
戦いは終わらない。だが、それは悲惨な殺し合いではなく、未来を切り拓くための、希望に満ちたビジネスだった。
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