第6話「バズる要素、あります」
「株式会社ブレイブ・ソリューション」の初仕事は、予想を遥かに超える大成功を収めた。
行政の担当者は、あまりに綺麗になった地下水道を見て、「何かのトリックですか?」と腰を抜かし、予定していた報酬に加えて特別ボーナスまで支払ってくれた。
だが、本当の衝撃はその後に待っていた。
ギルドの換金所。
カウンターに大量の「高品質魔石」を持ち込んだ舞とレオンに対し、鑑定士は目を丸くし、やがて震え出した。
「こ、これは……どこで手に入れたんですか!? 成分分析の結果、不純物がゼロです! こんな魔石、人工的に精製しても作れませんよ!」
「企業秘密です」
舞は営業スマイルで押し通した。
換金額は、舞の予想通り、日本円にして約一億二千万円。
たった半日の仕事、しかも「ゴミ掃除」で稼いだ金額としては、前代未聞だった。
そして、舞が撮影していた動画が、ネット上で爆発的な話題となった。
動画の内容は、レオンが光を放ち、汚染されたダンジョンが一瞬で浄化される様子を映したものだ(レオンの顔にはモザイク処理を施している)。
タイトルは『【検証】ゴミダンジョンを全自動洗濯してみた』。
この動画は動画投稿サイトで瞬く間に拡散され、数百万再生を突破した。
『なにこれCG?』
『いや、ガチなら魔法使いのトップランカーだろ』
『あそこ練馬のドブネズミのとこだろ? こんな綺麗になるわけない』
『洗浄魔法のスキルレベル99かよwww』
SNSでは「清掃ニキ」というあだ名がつけられ、正体探しが始まった。
「社長、バズってます。通知が止まりません」
ひだまり荘の一室。一億円の通帳を神棚(急造)に祀り、舞は興奮気味にスマホを見せた。
「バズる? ハチが飛んでいるのか?」
「違います、有名になったってことです! これを見てください、問い合わせフォームにも依頼が殺到してますよ!」
舞が画面をスクロールする。
『うちのビルの地下に湧いたスライムを掃除してほしい』
『呪われた井戸を浄化してくれ』
『私有地の森にゴブリンが巣を作って困っている』
大手企業が敬遠するような、面倒で、しかし切実な悩みを持つ人々からの依頼。
「いい傾向だ」
レオンはコンビニの高級プリン(一個300円)を食べながら頷いた。
「俺たちがやるべきは、こういう『隙間』の仕事だ。大手が見捨てた場所を、俺たちが最高品質に変える。そうすれば、自然と名前は売れる」
「はい! それに、この純度100%の魔石があれば、新しいビジネスも展開できそうです。例えば、高効率な魔導バッテリーの開発とか……」
舞の目が¥マークになっている。彼女もまた、この異常な状況に順応し始めていた。
しかし、急激な成功には、必ず反作用がある。
彼らの快進撃を、面白く思わない連中が動き出していた。
「おい、見たかあの動画」
都内某所、高層ビルの最上階。
大手ダンジョン管理会社「ギガント・インダストリー」の役員室で、太った男が葉巻を揺らした。
「練馬の廃棄ダンジョンから、Sランク相当の魔石が出たという噂だ。しかも、やったのはポッと出の弱小企業らしい」
「ブレイブ・ソリューション……聞いたことのない名ですね」
秘書の男が冷ややかに答える。
「調子に乗る前に潰せ。あるいは、その技術ごと吸収しろ。我々の市場を荒らす者は許さん」
「御意」
勇者レオンの前に、現代社会の「悪」、ブラック企業の論理が立ちはだかろうとしていた。
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