第6話 2019年4月12日(金)#2回目
タイムマシンのスイッチ押すと部屋の窓がうっすらと明るくなった。テレビの前に置いてある時計を確認する。
"4/12(金)18:20 "
紛れもなく先週の金曜日。僕が家に帰る10分ほど前にタイムスリップした。
前回はタイムスリップした実感がなかったが、今回はなんだか「タイムトラベラー」としての実感が湧いてゾクゾクした。意味もなく部屋を見渡してみる。見慣れたこの社宅もなんだか新鮮に映る。
今回目的としていたタイムマシンの動作確認は紛れもなく成功といえるだろう。
目的は果たした。名残惜しいが後は他の人と接触しないうちにさっさと未来に帰るだけだ。
…どうやって??
キッドが言っていた。確か"このタイムマシンは試作品で過去にしかいけない"と…。未来に戻るためにはどうするんだったか…。いかんせんキッドからの説明を受けた時は僕も混乱してまともに話を聞いてなかった。初めてトイレでタイムスリップした時はどうやって戻ったんだったか…。
そんなことを考えていると廊下の方から東雲さんと僕の声が聞こえきた。まずい、僕が帰ってくる。すでに僕も東雲さんも廊下にいるので玄関からは出れない。となると窓だ。人通りが少ないとはいえ中々抵抗があるが仕方ない。2階なので飛び降りでもギリギリ怪我はしないだろう。躊躇してる暇はない。急いで窓を開け飛び降りる。
ドスンッ!!
痛すぎる。
高いところから飛び降りたのなんて小5以来だ。しかも当然当時より体重は増えてるわけで、僕の膝と踵ははち切れんばかりの悲鳴をあげた。さっきまで人の目を気にしてたくせに道路でのたうち回る僕。
「お?おめぇなんでこんな所でブレイクダンスしてんだ?」
打ち上げられた魚のようにピチピチ跳ねる僕を不思議そうに見ながら、聞き覚えのある声の巨漢が話しかけきた。
「ひ…肥後…?」
「おう、おめー今日俺っちと一緒に説教くらった奴だろ?仕事辞めてブレイクダンサーにでもなるんか?そっちのセンスは無さそうだからやめといた方がいいぞ。」
最悪だ。知らないやつですらなるべく会いたくなかったのによりによって知り合いと会ってしまった。
「肥後…お前こんなところで何やってんだ…?」
「それ絶対俺っちのセリフだと思うけどなぁ。何って家に帰ってんだよ。そこのマンションに住んでんだ。」
こいつも社宅組だったのか。まあそんなことはどうでもいい。痛みも引いてきたしそろそろ立とう。なるべくこれ以上会話しないようにさっさとこの場を去らねば。
「そうか…じゃ、僕はこのへんで失礼するよ。」
「おいおい待てよ〜。一緒に説教受けた仲間じゃねぇか。言わば俺っちとお前は"相棒"よ!ここで会ったのも何かの縁だ。親睦の証にラーメンでも食いに行こうぜ。」
冗談じゃない。ラーメン食ってる間に未来に帰ってしまったら今度はイリュージョニストだと思われてしまう。
「せっかくだけど遠慮しとくよ。あんまりお腹空いてなくて。」
「つれねぇなぁ。そんなんじゃ大きくなれねぇぞ。」
相変わらずデリカシーのない奴だ。
「余計なお世話だ!じゃあな、肥後。」
「ガッハッハ!またな相棒!俺っちのことは"マモル"って呼んでくれていいからな!」
「考えとくよ。」
こうして何とか肥後を撒くことができた。とにかくこれ以上迂闊に動くのは危険だ。余計なタイムパラドクスを起こしてしまう前に何とか未来へ戻る条件を思い出さなければ。くそ、こんな時にキッドに連絡が取れたら...
「ボクのことをお探しですか?」
後ろを振り返ると銀髪の高身長イケメン、自称東大生のあのキッドが立っていた。
「あー!お前が渡してきたこのタイムマシンで酷い目に遭ってだんだよ!膝とかかとがイチイチなんだってば!もう早く元の未来に返してくれ!」
目を丸くして頭を掻くキッド。
「えっと…一応ボクにとってあなたに会うのは今日が"初めまして"なんですけどね。とりあえず面白い人にタイムマシンが渡ったようで良かったです。」
どうやら僕が会ったキッドよりも少し前のキッドらしい。時間旅行ってのは複雑だ。初対面とは思えない馴れ馴れしさでケラケラ笑いながらキッドが続ける。
「未来のボクが言ってなかったんですかね?"戻るタイミングはランダム"だって。まあ厳密には"未来に戻る正確な条件がまだ見つかってない"ってだけなんですけど。」
なんやて工藤。
「え?…?そんな状態で他人の僕に使わせてんの?マッドサイエンティストすぎない?」
「いやぁ照れますねぇ。まあ基本そのうち戻れると思いますよ。あ、あとこのタイムマシンを使うときの注意点がもう一個あって…」
シュンッ!
…………。
目の前からキッドが消えた。というよりも僕自体が別の場所に移動した?さっきまで外にいたのに今は屋内におり、テレビ、ベッド、冷蔵庫などが置かれてる。というかここは僕の部屋だ。時計を見るとタイムスリップ前の元の日付が書かれている。帰ってこれたのだ。
とりあえずは一安心だ。肥後に会ってしまったのは予想外だったがこれといって大きな問題はなく帰ってこれた。何か重要そうなことをキッドが言いかけてた気もするが一旦気にしないことにする。
とにかくもうヘトヘトだ。難しいことを考えるのは明日にして今日は一旦寝よう。
………なんだかお尻と足が痛い。
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