第2話 余白が削られていく
【システム】環境安定率:58%
【俺】……下がってるよな。
街は、静かだった。
第1話で感じた生々しさが、嘘みたいに引いている。
人はいる。歩いている。
でも、誰も俺を見ない。
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【俺】空気、変わった。
【神サポート】精神状態が変化しました。
【俺】誰の、って聞いてるんだけど。
返事は来ない。
空が、少しずつ遠のいていく。
暗くなるわけじゃない。
余白が削られていく感じだ。
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【俺】……なあ。
【俺】これ、本当に異世界か?
口にした瞬間、胸の奥がざわついた。
異世界。転生。神。
便利な言葉だ。
考えなくて済むための、ラベルみたいなもの。
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【俺】もしかしてさ。
【俺】俺が見てるこれ、現実の続きじゃないか?
街の色が、先に薄くなる。
建物は残っているのに、細部が追いついてこない。
その感じが、やけに見覚えがあった。
――終電後のオフィス。
――蛍光灯の下で、視界が平たくなった夜。
――考えるのをやめた瞬間。
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【俺】……ああ。
思い出したくないのに、勝手に重なる。
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【俺】これ、俺の感覚じゃないのか?
【俺】誰かの心じゃなくて――
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【システム】感情処理を更新します。
遮るように、通知が落ちた。
通りにいた人間たちが、足を止める。
全員、似た表情をしている。
疲れている。
期待していない。
でも、まだ動ける顔。
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【俺】……決めたんだな。
何を、とは言わなかった。
言わなくてもわかる。
欲しかったものを、
追いかけるのをやめる判断。
それだけで、世界はこうなる。
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【俺】なあ。
【俺】俺は、観測してるだけって言ったよな。
少し、間があった。
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【神サポート】はい。
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【俺】じゃあ聞くけどさ。
【俺】どこからが他人で、
どこまでが俺なんだ?
答えはなかった。
空は、さらに低くなる。
視界の外側が、ぼやけていく。
世界が終わるというより、
考えなくてよくなっていく感覚に近い。
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【俺】……あのときと同じだ。
過労で倒れる直前。
「もういいか」と思ってしまった瞬間。
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【俺】あれも、こういう感じだった。
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【システム】可視領域を調整します。
円の中心に、俺だけが残る。
異世界なのか。
誰かの心の中なのか。
それとも――
現実が、まだ終わっていないだけなのか。
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【俺】……まあ。
どれでも、ちゃんと疲れる。
その事実だけが、やけに現実的だった。
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【システム】観測を継続します。
視界が、さらに狭まる。
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【俺】……逃げ場は、あるのかよ。
返事は、来なかった。
クオリア ―異世界だと思ったら、誰かの精神世界だった― @shikiimage888
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