第3話 作戦
「あ」
「あ」
寝る準備をあらかた終えて、さあ布団に入ろうって時に、ストレスの原因に出くわすなんて…ついてない。多分今日星座占い11位なんだろうな。
「……おやすみ」
足早にその場を去ろうとしたが、彼はそうはさせてくれないらしい。腕を掴まれた。振り払える力。でもなぜか、振り払ってはいけない気がした。
「話がしたい」
そう言う青年の眼差しは、今まで見てきた濁った瞳と明らかに一線を画す、真っ直ぐなものだった。
♢
「どこから話そうか」
「そこまで長話するつもりない」
「それは悪かったな。長くなるぞ」
こっちの意思はフル無視なんですね…と苦笑いを浮かべる私から、青年は相変わらず目をそらさない。
「第一の門は知ってるだろ?」
「うん」
所長室の奥にある鉄の門。まだ希望を持っていた時代、私も脱走するために開けようとして、こっぴどく躾られたな…。
「あれ、第三の門まであるんだ。警備の数は第一の門には六人、第二の門には二十二人、第三の門には二人」
「ちょっと待って、なんでそんなこと知ってるの?」
「俺は昔っから記憶力がいいんだ。普通赤子の時の記憶は成長すれば消えるが、俺は覚えてる。もっとも十年以上も前の話だから、今どうなってるかはわからないけどな」
「…いや、その情報すごく使えるよ。でも、なんで第三の門が警備の人数一番少ないんだろう?普通一番厳重にするよね」
「この施設にいるのは俺たちみたいに成功した実験体だけじゃない。いわゆる失敗作が第三の門を守ってるんだ。と言ってもただの失敗作じゃない。体を色々改造された…人間モドキだ」
「…そっか」
聞かなきゃ良かった。心底後悔した。ほんと、胸糞悪い施設。
「そういえば、君は何とのハーフなんだ?神格クラスなのは知ってるが、能力によっては誰とも戦わずに済むかもしれないしな」
「私はゼウスだよ」
「…なるほど、君があの…能力は何が使えるんだ?」
「戦いたくないんだよね?使えそうなのは…世界の声と創造、威視、光の鷹かな?」
「詳しい説明を頼む」
♢
それから私たちは、それぞれの能力について語りながら作戦を立てた。青年は鎮宅神鷹とのハーフで、能力は真実を見抜く、超視力、飛行なんかがあるらしい。一晩中口論は続き、確率はきっと一桁代だけど、一応成功する可能性がある作戦を立てられた。
「…朝、だな」
窓から差し込む光に目を細める。すずめの声は聞こえないけど、微かに朝ご飯の匂いが漂ってきた。
「そうだね…朝ごはん、食べに行かないと」
「今日ぐらいはいいんじゃないか?」
「いや…友達待たせてるから」
施設内では所長以外の電子機器の利用が禁止されている。だから事前にした待ち合わせに行けない=バックレになってしまう。それは絶対に避けたい。
「そうか。気をつけて行ってこいよ」
「ん。…そういえば、あんた名前は?」
「言ってなかったか?」
「うん。お互いね」
「俺は御田夏向(ミタカナタ)。夏向でいい」
わざわざ丁寧に紙に漢字を書いてくれた。なんか、意外とポップな筆跡してるんだな…。
「君は?」
「逢膳知子。チコでいいよ」
「よろしくな」
夏向が手を差し出す。握手とかするタイプなんだ、意外。
「うん、よろしく」
私も手を添える。誰かと握手するなんて、初めてだ。
「チコさーん!起きてますかー!」
ドア越しに爆音で遥香の声が響き渡る。いつも私がこれぐらいしないと起きないから…。徹夜明けの頭がズキズキと痛む。
「あ、ごめん。お迎えが来たわ」
「…毎朝こんな感じなのか?」
「うん、いい子だよね」
「…自分で起きる練習しろよ」
「うっさい」
悪態をついたが、こんな風に叱ってくれる人、今までいなかったな…所長は暴力でねじ伏せてくるし、他の職員や被験体は常に機嫌を伺ってくる。あんたがルームメイトで良かったよ、なんて。口が裂けても言えないけど。
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