第5話『クロの決断』
5話『クロの決断』
クロは窓辺に立って、
街の灯りをぼんやり眺めていた。
白髪が、夜に溶ける。
「……本来な」
ぽつりと、関西弁が落ちる。
「ウチら観測者は、介入せぇへん」
「助けもせぇへんし、止めもせぇへん」
「文明がどこ行こが、
それは“結果”やから」
俺――田中大は、
黙って聞いていた。
クロは振り返らない。
「正直言うてな」
「今の地球は、放っといたら
夢の方に住む」
「黒幕の言う“完成”は、
合理的で、優しくて、
たぶん多くを救う」
一拍。
「せやからウチ、迷っとった」
「介入せぇへん方が、
正しいんちゃうかって」
俺は言った。
「それで?」
クロは、ゆっくり振り向く。
青い目が、
俺を捉える。
「大クンを見てな」
「完成した夢を、自分で壊して」
「それでも他人の夢は
無理に壊そうとせぇへん」
「救わへん自由も、
選ばせる自由も、
同時に取ろうとしとる」
小さく、息を吐く。
「……正直、効率は最悪や」
「観測者的には、失敗例になっても
おかしない」
俺は肩をすくめた。
「悪かったな」
「せやけど」
クロは、
ほんの少しだけ笑った。
「希望は、効率で生まれへん」
静かな声だった。
「せやからウチ、 決めた」
クロは一歩、こちらに来る。
「観測者としては、中立や」
「でも個人としては――」
俺を見る。
「大クンのやり方に乗る」
「結果がどうなろうとな」
しばらく、沈黙。
俺は言った。
「後悔するかもしれないぞ」
クロは即答した。
「するやろな」
「それでも?」
「それでもや」
白髪が揺れる。
「完成した世界より、
未完成な希望の方が、
ウチは見たい」
俺は一言
「そうか」
これ以上の言葉はいらなかった
「それじゃ答え聞いてもいい?」
「おう」
クロは指を一本立てる
「君は――ウチと一緒に夢に入れる」
「ウチとはパートナー」
「ただし」
一拍置く。
「正義ではなく、ウチらの自由を押し付
けるためにも、
一心同体&一蓮托生で♪」
「編集者契約かよ」
「著作権は作者本人」
「責任もな」
---
クロは、少しだけ真面目な声で。
「後悔するで?」
「するだろうな」
「それでも?」
「それでもだ」
---
クロは手を差し出す。
「ほな――契約成立や♪」
俺は、その手を取った。
---
世界が、ほんの一瞬だけ滲む。
視界の端に、
知らない夢の断片が流れた。
泣いてる誰か。
出口のない駅。
笑い続ける子供。
「……来てるな」
「来とるな」
クロは楽しそうに言う。
「いこか♪」
「ああ!!」
ここまで読んでくださった皆様
ありがとうございます。
突然ですがここで一区切りさせて頂きます。
いかんせん読み切り漫画のノリで書いていたものでしたので先の予定は今の所ありません。
もしも続きを書くことがあれば改めてお付き合いいただければ幸いです。
改めて読んでくださった皆様ありがとうございました。
未完の夢想 ケルン @kaikainight
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