番外編第3話『魔力封じの古代機構』

 夜、塩気を帯びた風が頬を冷たく撫でる。作戦決行の時間、ザイン・ミドリ・クリスの3人(と1匹)はガリア地方西部の港町に居た。


      ・・・・・・・・


 6時間前 ギルドハウス


「【凶星】の魔力は尋常じゃない。アレを隠すにはどうするといいと思うか?」


 端末(書式魔法によるボード)を指差し、クリスが問いかける。ザインは腕を組み苛立った様子で、ミドリはクリス(幼竜)を優しくブラッシングしながら答える。


「はァ?どうする…って、そりゃあ誰にも見つけられない所に隠すだろ」


「人の目に付かない場所…遠方ね」


「そう、その通りだ"いきものがかり"!」


ビシッ!っとミドリを指差すクリス(人)に、


「可愛くないね、クリス」


顔も上げずに生返事をするミドリ。


「アレは魔力量が大きすぎて魔術的な隠蔽(いんぺい)に限界がある。実際昨日までは腹の底から震えるような不気味な魔力に吐きそうになってただろう?」


「あ?俺ァ別にンなこた無かったが…」


「一番騒いでたのはあなたよ、チンピラ」


またも興味無さげに返すミドリ。それもそのはず、クリス(幼竜)のブラッシングの時間は彼女にとって至福の時間である。非常事態でなければ、2人はとっくに追い出されていたことだろう。


「そこで、奴らは魔術的な隠蔽に加え物理的な隠蔽を図るはずだ。しかしどうやって? 簡単、魔力の感知できない距離まで押しやればいい」


「きっとレイはこの事にいち早く気が付いて1人出発しちゃったのね…ほんっとうにアホなんだから」


「あー…つまり、あれか。姐御は昨日の時点で既に、チビの行き先に勘付いてたのか?」


ザインの頭が90°に傾く。


「それは断定できない。しかし、関係はあるだろう」


クリス(人)は再び手元のボードに視線を落とす。そのボードから1枚の写真が浮かび上がる。


「これはガリア地方の地形図だ。知ってはいると思うが、この国は大陸の西側に位置し、海路は西の港以外繋がっていない。空路を使う手段もあるが……ヤツらがそんなリスクを犯すほど頭の弱い集団にも思えない」


「あ?バカばっかだぞ、あそこ」


ザインが即答する。


「バカなのはあなたひとりでしょ?」


ミドリも即返す。


「…やんのか?あ?」


「キュキュイ!」


「クリスが怖がってるじゃない、落ち着きなさいよ」


「…………!‪💢」


ザインはなんとか抑えている。粗暴な性格の矯正って、もしかして荒治療だったりする……?


「…続けるぞ? つまり何が言いたいのかと言うと、【凶星】はおそらく昨晩の時点で船で輸送されている…ってことだ」


「根拠は?」


クリス(人)の結論に、ミドリが短く返す。


「それを今から確かめに行くんだ」


「なるほど、それで今晩西側へ行くのね」


「あんな化け物を運んでるんだ、痕跡が残らないハズがない」


「なんで夜なんだ?」


打って変わり、ザインが素朴な疑問を口に出す。


「それはだな……」


クリス(人)がニヤッと口角を上げる。


「相手が『ナハトリヒト(常夜灯)』だからだよ」




 現在 ガリア地方西部、港


 「くぁ……」と大きな口を開け、間の抜けた欠伸をするザインを横目に、ミドリが話し始めた。


「痕跡…ないわね。つまりアンタの推理は外れてたってコトね」


「ふぁ……」とミドリも続けて欠伸をする。その足元でクリス(幼竜)が「きゅあ…」と小さく欠伸をした。


「なぁ……その欠伸を伝染させるの、やめてくれないか」


魔力探知に集中していたクリス(人)が片目を開け呆れたようにツッコむ。


「しょーがないでしょ。無駄足だったんだから。ちょっとは役に立つと思ったのに残念ね、"可愛くない方のクリス"?」


ミドリは片目を擦りながら再び欠伸をした。


「はぁ〜〜……後で覚えてやがれ"いきものがかり"」


そう言うと、クリスは魔力探知を止め大きく伸びをした。ドラゴンであるクリス(幼竜)を含め、ここに居る全員がとても眠たそうにしている。


「あーーー…ダメだわ、俺ァ寝る…」


ザインがその場に座り込んでうたた寝を始めてしまった。


「はぁ?バッカじゃないの?せめてギルドに帰ってからにしなさ……ふぁ〜…」


ミドリもそろそろ限界みたいだ。クリス(幼竜)に至っては、既にミドリの頭の上で丸くなって寝息をたてていた。




・・・・・・・・・・







・・・・・







・・・








ガゴン。



















ガゴン。



「ッだァ〜うるせぇ。誰だよさっきから騒音たててやがる阿呆は…」


ザインが頭を掻きながら起き上がった。見渡せばミドリもクリス(幼竜)もクリス(人)も寝ている。こんな海岸沿いで、全員が眠ってしまっていたのか…


「…………あーー…?ンだコレ…」


ザインの目が慣れてくると、少し遠くに巨大な機械を船へ積み込む人影が見えた。


「…」


「……!? オイ!起きろ!ヤベーぞアレは!」


暫くその様子を眺めていたザインの表情が一瞬にして青くなる。大声で起こされた2人は、不愉快そうな声を出しながらムクリと起き上がる。


「いいから起きろってんだ!早くしねーと死ぬぞ俺ら!全員ッ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る