第7話:魔術の勉強

「それじゃ、授業の時間よ」


 八掛は眼鏡をかけながら手のひらを俺に見せる。

 八掛の手のひらには淡い青色の光が現れる。

 八掛はその光を粘土細工のように弄り、自由自在に操っている。


「やっぱすげぇな」


 俺が思わず言葉を漏らす。

 その言葉を八掛は聞き逃さなかったようで、自慢げな顔をしている。


 八掛と出会ってもう一週間程経った。

 八掛は魔力の回復が云々と理由を言いながら俺の家の客間で寝泊まりをしている。

 最初こそ爺ちゃんも困惑していたが、今では


「愛ちゃん、優牙が変なことをしたら思いっきりやっちまっていいぞ!」


 なんて言っている。

 最初は「仲良くなってくれるといいな~」なんて思っていたが、今じゃ仲良くなりすぎて疎外感を若干感じつつある。

 そんなことを考えていると、頭をポカッと叩かれる。


「ちょっと、ちゃんと聞いてる?」


「聞いてる、聞いてるって」


「そう、じゃあ復習よ、魔術師が持っている固有の特殊器官の名前三種類言って」


「... ...」


 ヤバい、かなり自信がない。

 特殊器官三種類は確か、


「魔力炉、魔術線、魔力孔?」


「――正解」


 八掛が意外そうな顔をしている。

 もしかして、俺って結構バカだと思われてたのか?


「それじゃ、各器官がどこにあるかはわかるよね?」


「そりゃあ余裕よ!」


 なんもわかんねぇ...

 こうなったら自棄だ!


「肺、脳、手のひら!」


 無言で三回頭を叩かれた。


「正解は魔力炉が心臓の裏、魔術線は全身、魔力孔は体表。いい加減覚えてよ」


「だ、大丈夫!今度は覚えた!」


 魔力炉が魔力を作って、魔術線で全身に魔力を廻して、魔力孔で放出。

 このフレーズだけは体で覚えた。最悪これだけ覚えていれば何とか誤魔化せるだろう。

 八掛は目頭を押さえながら悩んでる様子だ。


「まぁ、もういいか。それじゃあそろそろ魔術を教えます」


「はーい!」


 嫌な勉強もこれのために頑張れた。

 八掛の方から「魔術を学ばない?」と聞かれたときはすごくワクワクした。

 螺旋丸とか、デスビームとか、色々夢みたいなことができると考えたらそりゃあ努力するしかないだろ。

 何を教えてくれるのか楽しみだ。


「そうね、最初だし強化魔術でいっか」


「強化?」


「そ、強化。多分浅影君が一番使うことになりそうだから最初に教えようかなって」


「わかった!」


 結果から言えば、強化の魔術の習得には半日掛かった。

 強化の魔術といっても色々あるようで、自分の拳を強化するものから、灯りをより輝かせるものもあるようだ。

 自分が強化されてるときの感覚はかなり不思議なものだった。

 近いイメージでいえば湯船につかっているようなものだ。

 だからこそ、部分部分だけで強化しようとするとその一部だけが湯船につかっている感覚がして、不思議な気分になる。


 ここまでは簡単にできたが、問題はこの先だ。

 性質強化の魔術を他の物体に行おうとすると、壊れてしまう。

 ペンに魔力を込めて鋭くさせようとしたら、魔力を込めすぎてペンが暴発したりもした。


「浅影君、物体に対して一気に魔力を込めすぎ。もっとゆっくり注ぎなさい」


 そうアドバイスを受けた。

 だが、ゆっくり注ごうとしても気が付いたら一気に流れて行ってしまう。

 失敗するたびに俺の文房具や、家具が爆発するのは不味い。

 このままじゃ勉強はおろか、ゲームをすることすらできなくなる。


「なあ、八掛。なんで魔力を込めすぎた文房具は爆発するんだ?」


「物体にはそれぞれ魔力の許容量っていうのがあるの。浅影君の場合はその許容量が満タンになっても注ぎ続けるから、爆発するの」


「風船みたいだな」


「そんな認識でいいわ」


 つまり魔力の許容量を見定めて魔力を注いで強化すればいい。

 けど俺じゃ許容量がどれぐらいなのかがわからない。


 優牙は、どうしたものかと顎に手を当てながら考えている。


 そういえば魔力を使って強化の魔術が使えるってなら、魔力の許容量ってのを強化しながら、性質強化を行えば何とかなるんじゃないのか?

 試しに青ペンに対して魔力の許容量の強化を行いながら、性質の強化も施す。


「八掛、これって成功じゃね?」


 青ペンは爆発していない。

 青ペンの全体からは軋む音が聞こえてくるが、爆発してないからギリ成功していると思いたい。


「ま、無駄は多いけど一旦成功ってことでいいわよ」


 厳しい先生から、やっと合格の通知が行われた。


「それじゃあ、明日は魔物でも探して狩りに行きましょうか」


 八掛の言葉に返事をしようとしたとき、スマートフォンが震えた。

 八掛に一言断りを入れてから、スマートフォンの通知を確認すると、芽流斗から遊びのお誘いのメッセージだった。


「悪い、明日はダチと遊ぶ予定があるんだ、そっち優先してもいいか?」


「なっ!」


 愛は目を見開いて優牙を見下ろす。


「浅影君、私の都合で悪いんだけど、魔物の方を優先してくれない?」


「えーっと、遊び終わってからでいい?」


「ダメ」


 そんなこと言われても、俺には俺の友達付き合いがあるんだ。

 八掛には悪いけど、俺的にはこっちを優先したい。


「そんなことを言われても困るよ、俺にだって友達付き合いがあるんだ」


「悪いけどその友達付き合いよりも、魔物を狩る方が大切なの、わかるでしょ?」


「わからなくはないけど......」


「それじゃ、優先してもらうからね」


 まあ明日こっそり遊びに行けばいいか。

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現代魔術師と俺 @129LT

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