第6話:初めての魔物討伐

「本当にこっちでいいのかよ?」


「ええ、こっちで大丈夫よ」


 俺は八掛に導かれるがままに、町外れの寂れた場所に連れられていた。


「ってか、そんなんで本当にわかるのかよ」


 おはじきで魔物を探せると八掛はそう言っているのだ。

 嘘を言う必要がないことはわかっているが、どうしても疑ってしまう。

 それに魔物の気配ってのも俺にはよくわからない。


「このおはじきは魔物が発している魔力を探知して私たちを誘導してるの」


「魔力ねえ」


「ま、騙されたと思ってついてきなさい」


 そいえば手伝うって、俺は何をすればいいんだろう。

 前に八掛がやっていた光の弾とかも俺は出せるのだろうか?


「なあ、聞きたいことがあるんだけど」


「そうね、魔物に会う前にこれは言っておかないといけないわね」


 良かった、どうやらそこら辺はつく前に説明してくれるようだ。


「魔物の危険度はFランクからAランクまであるの、Fランクが一番弱くって、Aランクが一番強い。番外としてプラスランクとSランクっていうのがあるわ。今から戦いに行くのは大体DランクからEランクあたりの魔物ね」


「俺は何をすればいいんだ?」


「浅影君は私の代わりに魔物と戦ってほしいの」


「俺が?」


 正直、自信がない。

 昨夜の魔物相手には殆ど何もできていなかったんだ。

 昨日今日で魔物と戦えと言われても倒せる自信なんてない。


「戦ってはみるけど、多分あんまり――」


「大丈夫よ、今夜戦うのは昨夜よりもうんと、弱い魔物だもの」


 だからって、「よっしゃ!やったるで!」とはならない。

 失った自信っていうのはそう簡単には戻ってこない。

 もとからケンカは得意だったけど昨日の魔物との戦いで、大分自信がえぐられた。


「そういえば確認なんだけど昨日の怪我は大丈夫?」


「昨日の怪我って?」


「昨日の怪我って、ほら、浅影君あなた昨日魔物に吹き飛ばされてたじゃない?その怪我の話よ」


「怪我なんてしたか?」


「してたじゃない、もしかして強がってるの?」


 八掛がクスッと笑いかける。

 俺はそれに対して困惑を隠せない。

 別に強がっているわけではない。

 ただ本当に怪我をした記憶がない。


「ほら、いいから見せなさい。多少の怪我なら私がちょちょいっと治すから」


 愛は優牙のシャツをめくり、背中を確認する。


「って、本当に怪我してないじゃない」


 愛が見た優牙の背中には青あざの一つもない、綺麗な背中だった。

 愛はそのまま片手を口元にあてながらよく診る。


「本当に何ともない。痣ぐらいできてると思ってたんだけど、浅影君ってすごく頑丈なんだね」


「まあ?そうなんじゃないか?」


 二人がそんな話をしながら歩いていると、優しいウクレレの音が聞こえてくる。

 そのウクレレから奏でられる音楽に二人は思わず聞き入ってしまう。

 誰かがどこかでストリートミュージックみたいなものでもやっているのだろうか、そんな想像が容易にできる。

 優牙と愛が誰がどこで奏でているのだろうとあたりを見渡すと、ウクレレを持ったガチョウを見つける。


「Glaw...Glack...」


 明らかにガチョウの鳴き声じゃない。

 しかも少し気持ち悪いのが体をうねらせながら、翼でウクレレを弾いている。


「八掛、あれって――」


「ええ、ガチョウ型の魔物ね。ランクはEってところかしら」


「Glaw!!!」


 ガチョウ型の魔物が叫ぶと空からガチョウの羽毛が舞い落ちてくる。

 舞い落ちてきた羽毛が独りでに優牙達の方へ射出される。

 優牙は羽毛を全身に刺されながら愛に指示を仰ぐ。


「どうしたらいい!」


「魔物は基本頭を潰せば塵になって消える――」


「わかった!」


 そのまま羽毛の雨を受けながら、ガチョウ型の魔物へ走る。

 ガチョウ型の魔物の頭はすぐ其処だ。

 走る勢いはそのままに、左足を振り上げる。

 そのまま普段通り、呼吸をするような自然体でガチョウ型の魔物の頭に踵落としを食らわせた。


「Gla」


 ガチョウ型の魔物は最後に潰れた蛙のような醜い音を出した。頭部からは軽い空気が弾ける音と同時に粘性のドロっとしたものが噴き出す。

 踵落としの勢いは殺さずにそのまま胴体も両断した。

 両断し、力なく落ちたガチョウ型の魔物の肉体が紫の塵となり空へ舞っている。

 俺は八掛の方を見ながら、


「これでいいのか?」


「ええ、完璧よ」


 八掛は満足そうに俺のことを見ている。

 良かった。俺は彼女の役に立っているみたいだ。


「浅影君、これからしばらくよろしくね」


 八掛が手を出す。

 俺はすぐに手を握り返しながら


「応、よろしく」


 二人で固い握手をした。

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