風の歌を聴け
深見双葉
風の歌を聴け
この世界に、完璧な人間など存在しない。
私たちが生きているこの場所が、決して完璧な器ではないのと同じように。
それなのに、画面の向こう側の誰かが、眩しいほど完璧に見えてしまうことがある。
あるいは、自分より高く飛んでいるように見える誰かを前にして、焦りや、泥のような妬みを抱えてしまうこともある。
もし、あなたの心の中に、そんな「完璧に見える存在」への執着があるのなら。
安心していい。
それは、幻想だ。
この不完全な世界に生きている限り、
誰もが、どこかで必ず傷を負っている。
涼しい顔で通り過ぎていく、あの人も。
鋭い言葉で、誰かを切りつける、あの人も。
誰しも、その内側には、等しく後悔や苦しみを抱えている。
みんな、あなたと同じように、震えながら、自分を守ろうとしている。
だから。
安易に人をジャッジし、ラベルを貼ってはいけない。
「あの人は成功者だ」
「あの人は、私を攻撃する敵だ」
そうやって他人をカテゴライズし、狭い檻に閉じ込めたとき、実は、その檻の鍵を、内側から閉めているのは、自分自身だ。
誰かを小さな枠に押し込めようとする思考は、気づかないうちに、自分という人間を、同じくらい不自由な場所へと縛りつけてしまう。
その簡単な仕組みに、騙されてはいけない。
自分の頭で考えることを、放棄してはいけない。
幻想に、飲み込まれてはいけない。
なぜなら。
あなたは、もう十分に正しいから。
そして。
あなたと同じく、誰もが、十分に正しいから。
もし今。
あなたが、誰かとの比較という病に侵され、檻の中に閉じ込められていると感じているなら。
そこから抜け出す方法は、実に、シンプルだ。
あなたの、心の声を、聴け。
あなたの、ひた隠しにしてきた、醜い感情。
あなたの、嫉妬や、情けなさや、認めたくなかった、本当の気持ち。
あなたの、心の声に、耳を澄ませて、聴け。
そこには、行き場を失って泣いている、あなた自身の「風」が吹いているだろう。
あなたの中で、泣いている、風の歌を聴け。
風を溜め込み。
風に乗れず。
風の音が、ただ煩わしく感じられるなら、
尚更のこと。
あなたの中で、泣き喚いている、風の歌を聴け。
そして、鏡のように、あなたの目の前に現れる、
人、人、人、人、人。
その一人ひとりの心の中にも、同じように、風は吹いている。
吐き出される言葉の一つ一つ。
ただの攻撃や、ノイズとしてカテゴライズするな。
ただ、「風の音」として、聴け。
誰かの、その言葉の裏側で、どんな風が吹き荒れているのか。どれほど狭い檻の中で、息苦しさに耐えているのか。
誰かの、風の歌も、聴け。
誰かの、風の歌を聴いたとき。
はじめて、あなたは、風となり。
本当の自分に出会うだろう。
だから。
さあ。
風の歌を聴くことを始めよう。
(村上春樹『風の歌を聴け』にインスパイアされて……)
風の歌を聴け 深見双葉 @nemucocogomen
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