第30話 特攻隊本部

「おはよーございます!」

3日ぶりに寮に戻ってきた。現在時刻は朝の5時。皆んなまだ寝てるのかリビングには誰もいない。

「お〜ハル!今日から復帰か?」

「はい!」

朝木が階段の上から大声で呼びかける。相変わらずうるさいが、今はそのうるささも懐かしく感じる。

「ハル〜!!」

志保が駆け寄ってくる。そのスピードで階段を駆け降りたら転ぶというより吹っ飛びそうだが・・大丈夫か?

「志保、久しぶり〜!」

「あんたおっそいわよ!退屈だったわ。・・というより

 聞いたわよ!?骨、折れてたんだって?」

「うん」

あの後医者に言われた内容に驚きを隠しきれなかった。なんでも体の許容範囲を超える筋肉の使い方をしたせいで筋肉はボロボロになり、骨は何箇所か折れていたという。全然痛みがなかったと伝えると、神経の検査やらなんやら色々された。まぁ特攻隊の技術はすごいから起きた時にはピンピンしてたけど。

(あの時あんなスピードが出たのは、無意識に限界を超

 える体の使い方をしてたってこと・・?でもいきなり

 そんなことってできるもんなのかな?)

「おっすハル。今日から復帰?」

唯兎も階段から降りてくる。やはりイケメンだが朝木としばらく暮らしているせいか仕草が中年だ。

「うん。やっとご飯が食べられる〜!」

「なんで?病院もご飯あるでしょ?」

「病院のご飯ってまっずいよ?ホント食べ物かどうか疑

 うぐらい」

「そういうのは健康にいい味っつーんだよ」

「唯兎、なにか作ってあげなさいよ」

「えぇ、俺?やだよ面倒くさい」

「ねぇ春、何が食べたい?」

「おい無視すんな!」

相変わらず唯兎は志保にいじられている。毎回ツッコミ入れてて疲れないんだろうか?

「そうだなぁ・・じゃあオムライス!」

「だって」

「だって、じゃねぇよ!俺作らねぇからな」

「唯兎。駄々こねてないで早く作れ」

「おい、朝木まで・・・」

「「作っくーれ!作っくーれ!」」

「お前らなぁ・・・」

朝木と志保の作れコールに観念したのか、唯兎が台所に向かう。食材を洗い出したのを見るに、作ってくれるようだ。なんかちょっと申し訳ないな・・。

「唯兎、何か手伝おうか?」

「いやいいよ。お前まだ病み上がりだろ?ほとんどあい

 つらに押し切られたようなもんだが、俺も久々に料理

 できて実はちょっと嬉しいんだ」

「唯兎、料理好きなの?」

「あぁ。週末は菓子作りとかもやってたし、これでも家

 庭科5だったんだぜ?」

「す、すごい・・」

(私なんて家庭科2なのに・・本当に家庭科で5取れる

 人いるんだ・・・)

「ハル〜?何してるの?テレビ見ましょうよ!」

「うん!唯兎、頑張ってね」

「あぁ」

ソファの方に向かうと、志保が隣をポンポンと叩く。ここに座れということだろう。

「そういえば朝木、今日隊長会議があるとか言ってなか

 った?」

「あぁ、9時から・・って、今何時だ!?」

「9時15分だけど」

「うわぁぁぁあ!!総隊長に怒られるぅぅう!!」

「バカねぇあんた」

「朝木うるさい」

「なぁ、卵が足りないんだが・・」

「行ってくる!」

ーバタンー

「・・うるせぇやつだなぁ。それより卵の在庫の場所知

 らないか?」

「確か右奥の棚に・・あれ?この封筒なんだろう?」

机の上に茶色い大きな封筒が置いてある。中を見ると、どうやら会議の資料のようだ。

「・・これ、ないとまずいんじゃないの?」

「そうだよね。会議資料って思いっきり書いてあるし」

「届けに行くか?」

「朝木が困るだけだし置いといていいんじゃない?オム

 ライスが冷めちゃうわ」

「んー・・でもネチネチ言われたら面倒だし」

「確かにね・・」

「「「んー・・・」」」

「・・ねぇ、やっぱり届けに行ったほうがいいよ」

「そうね。何かとお世話になってるし」

「お世話してることのほうが多そうだけどな」

「まぁいいじゃない。オムライスはチンして食べるって

 ことで」

「せっかく作ってくれたのに、ごめんね?」

「ハルのせいじゃないしいいよ」

「・・最近、そこ仲良いわよね」

「まぁ、そうなのかな?それならいいんだけど」

「出会った当初よりは、な」

「・・・まぁいいわ。急いで準備しましょ」

―――――――――――――――――――――――

「な、なんとか来れた・・・」

「途中、係員に設定してもらわないといけないなんて知

 らなかったわ・・」

「あの人が言ってくれなかったら危なかったね」

テレポートしようとしたところで、男の人が教えてくれた。すごく綺麗な人で、水の魚を連れていた。

「あの人が連れていた水の魚・・すごかったね」

「力だろうな」

「あ、ここが出口かしら?」

出口らしき扉を開くと、広い場所に出た。人が大勢いる。広場のようなものだろうか?今目指している特攻隊本部付近には、様々な店や施設が集中している。城下町みたいなものだ。特攻隊に入るまでは、月にこんな施設があるなんて思いもしなかった。

「この通りを月光通りって言うらしいぜ」

「へ〜・・あ!串焼き!」

私は串焼きが大好きだ。出店に向かおうとすると、志保に腕を掴んで止められた。

「ダメよ。資料を届けるのが先!」

「は〜い・・・」

名残惜しいが仕方がない。後で朝木にお駄賃をもらって買おう。・・そうこうしているうちに本部の前まで来ていた。扉を開けると受付があるので向かう。

「特攻隊本部へようこそ。ご予約はお済みですか?」

すごく美人な人だ。・・朝木がいたら絶対デレデレしていただろう。

「あの・・私達上官の忘れ物を届けに来て・・」

少し緊張しつつもなんとか言葉を搾り出す。

「あ〜なるほど。上官の方のお名前は?」

「朝木龍司です」

「わかりました。では、こちらへどうぞ」

―――――――――――――――――――――――

しばらく歩くと会議室に到着した。あの一件以来警戒が強まっているから検査があるかと思っていたが、何もないなんて・・・意外だな。

「あの、検査はしなくていいんですか?」

「もうしてありますよ」

「え?」

「今通ってきた道にいくつかアーチがあったでしょう?

 そこを潜ると検査できるんです」

「すごい・・!そんなことができるのね!」

まずい。志保の機械オタクスイッチが入りそうだ。急いで届けて帰ろう。

「ありがとうございました。志保、行くよ」

「待ってよ!色々聞きたいことが・・」

「資料を届けるの優先!」

「は〜い・・・」

いつかこんな光景を見たことがある・・立場は逆だったが。会議室にノックして入ると、一斉に視線が集まる。

「なんだこいつらは。今は重要な会議中だぞ!」

「セイラは何をやっているんだ」

(こ、怖い・・!)

怒鳴るおじさん達に思わず私が後退りすると、志保が前に一歩出て言った。

「会議中大変失礼いたします。上官の忘れ物を届けに来

 たのですが、朝木龍司はいますか?」

さすが志保だ。堂々と礼儀正しく話せている。・・が、手を見ると震えていた。志保も怖いのに、私が怖がらないように勇気を振り絞って言ってくれたんだ。

「あ、すまん!すっかり忘れてた」

朝木が奥から出てくる。他の人達と比べてもやはりアホっぽい。

「どんくさいわね。それでも上司なの?」

「おい・・ひっでぇなぁ」

「ははっ!朝木のやつ部下にも慕われてねぇのかよ!」

「今度酒奢ってやるから落ち込むなよ、な?」

この反応を見るにかなり周りから馬鹿に・・仲がいいようだ。それにしても会議中にこんな大騒ぎしていいのか?他の人達も結構適当なのかもしれない。

「静粛に」

ーシーンー

会議長のような人が言うと、皆一斉に黙った。すごい威圧感だ・・あれ?あの人どこかで・・。

「今は会議中なのを忘れたのかい?君達、ご苦労だった

 ね。朝木に封筒を渡したら、セイラ・・受付嬢のとこ

 ろに行くといい。・・さぁ、話し合いを続けよう」

「すみません真人様、少々よろしいですか?」

「なんだ?」

私達の近くに座っていた初老の男性が手を挙げる。

「先程出ていたあの案ですが、この3人が適任かと」

「ほう?」

「議長!こいつらは来たばかりなのでそれは・・」

朝木が立ち上がり議長と呼ばれた男に訴える。

「・・そこは議長の判断です。私の申し出はあくまで一

 意見として認識してください」

先程提案した男が議長に目を向ける。全員の視線が議長とやらに注がれる。

「ふむ・・・」

何やら私達について話しているようだが、一体何をさせられるんだろう?朝木が反対している辺りろくなことではなさそうだが・・というかやっぱりあの人どこかで会ったことがあるような・・?思い出そうと頭を捻っていると、志保が肩をつついて耳打ちした。

「ねぇハル、あの人ってテレポートの時に教えてくれた

 人よね?」

「あ、確かにそうだね」

そう言われてみればその時の人だ。改めて見ると意外と若そう・・10代後半か20代前半ぐらいか?水の魚のイメージが強すぎて気づかなかったな。

「君達、少し時間いいかな?」

「は、はい。大丈夫です」

少し緊張気味に言うと、男は一呼吸開けて口を開いた。

「君達に・・敵地に潜入してほしいんだけど」

「「「!?」」」

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