第28話 厄介

「ハル?・・ねぇ、聞いてる?」

「・・え?」

「もう、今何時だと思ってるの?いい加減起きなさいよ

 ・・ったく、昔っから朝が弱いんだから」

「志保・・怒ってないの?」

「怒る?何を?・・あぁ、昨日のこと?」

「そう。あんなに怒ってビンタまでしてきたのに」

「・・そのことなら、もう怒ってないわ」

「え!本当?」

「だって・・・あなたは今日死ぬんですもの」

「え・・?」

ーザザァンー

「え、ここどこ・・?私達さっきまで部屋に・・」

「ここは有名な自殺名所なの。昨日の出来事から、あな

 たは罪悪感のあまり自殺した・・そういうことにして

 おくから、安心して死になさい。まぁ、あなたが死ん

 でも気にする人なんて誰もいないでしょうけど」

「え?な、何言ってるの・・?」

「ものわかりが悪いわね。だから、あなたをここから突

 き落とすって言ってんのよ」

ードンッー

―――――――――――――――――――――――

「いやぁぁぁぁぁあ!!」

夢・・?にしては随分生々しかった。・・まずい!もうすぐ任務に行く時間だ。こんな時間になっても誰も起こしてくれないなんて・・・はぁ。

ートン トン トンー

階段を降りるとすでに誰もいなかった。明かりも消えている。

(無いもののように扱われている・・)

「寂しいなぁ・・」

ポツリと呟いても誰も答えてはくれない。誰も慰めてくれない。・・寂しんでる場合じゃなかった。

ーガチャンー

外に出ると皆んなが待っていた。待っていてくれてホッとした・・先に行かれていたらどうしようかと思ったがまだそれぐらいの優しさは残ってる・・のか?

「遅いわよ」

「早く並べ。みんな待ってたんだぞ?」

「どんくせぇなぁ」

予想はしていたが直接言われてみるとやはりキツい。並んだところで後ろからドアが開く音がした。

「ごめんなさいですぅ。探し物してたら時間かかっちゃ

 ったんですよぉ」

「いいのよ、ホノカ。謝ってくれれば」

「さ、並んでくれ。ホノカが来ないってみんな心配して

 たんだぞ?」

「ホノカが来なくて寂しかったよ」

「唯兎、気持ち悪いわよ」

「なんだとー!」

「あははははは!」

ホノカ贔屓は健在のようだ。待っていたのは十中八九私のためじゃなくてホノカのためだろう。

「さ、ホノカも来たことだし、出発するぞー!」

「「「おー!」」」

(・・この苦痛も、今日で終わりだ)

―――――――――――――――――――――――

ーシュインー

テレポートした先は雪原だった。吹雪が激しいため前がよく見えない。

「ホノカー?大丈夫か?」

「無理しないでね?手を繋ぎましょうか」

「ふふっ。志保ちゃんの手温かいですぅ」

「・・・・」

しばらく歩くと吹雪が止み、岩山に出た。ここの季節や地形はめちゃくちゃだ。

「ホノカ、大丈夫か?足元気をつけろよ」

「休憩したかったら言ってね」

「あ、少し疲れちゃたので休憩したいですぅ」

ホノカが言った途端みんな慌ただしく準備をする。椅子や干し肉・・全てホノカのための物だ。

「あ、この干し肉はいらないですぅ・・」

「え?これ、見た目は不味そうだけどすごく美味しいの

 よ。保存も効くし。騙されたと思って一度食べ―」

「いらないって言ってるじゃないですかぁ!!」

(・・・!!)

「ご、ごめんなさい」

「・・いえ、ホノカも言い過ぎましたぁ」

(なるほどねぇ・・・今ので確信した)

椅子に座るホノカにゆっくり近づいて、しゃがみ込む。

「・・ホノカちゃん」

「何ですかぁ、ハルちゃん?」

「昨日はごめんなさい。ホノカちゃんを傷つけてしまっ

 て・・・それで、お詫びがしたくて」

「謝ってくれて嬉しいですぅ。それで、お詫びってなん

 ですかぁ?」

「これなんだけど・・・」

「んー?よく見えないですぅ。もっと近づけてください

 よぉ」

「ごめん・・重たい物だから、少しこっちに近づいてく

 れるかな?」

「もぅ、めんどくさいですねぇ・・これで見えー」

ードスッー

「・・・え?」

「なっ・・何やってるんだお前!!」

私がホノカを刺した途端、朝木が大声で怒鳴りつける。

「・・何って、MOMを倒してるんだよ?」

「はぁ!?何言って・・」

朝木に拘束される前に、素早く干し肉を志保から奪ってホノカに無理やり飲み込ませた。するとみるみるうちにホノカの体はMOMの姿へと変わった。

「ホノカちゃん、ちょっと詰めが甘かったね〜」

「な、なんで・・!」

ーシュゥゥウウー

「なんでホノカの弱点がわかったんですぅ!?」

変身する体力が無くなったからか、元の姿に変わる。その姿は紛れもなくヤギ型のMOMだった。

「なんでって、あんたがヒントをくれたからだよ」

「はぁ・・!?」

「その干し肉・・食べないんじゃなくて食べられないん

 じゃない?ヤギは肉とか乳酸品ダメだもんね。それに

 あんたが襲ってきたあの日、眼帯の隙間からチラッと

 見えたんだ。横長に鋭い瞳孔の赤眼がね・・」

「はぁ・・やっぱり見えてたんですねぇ。嘘はダメです

 よぉ?ハルちゃん」

「それあんたが言うか?・・ま、あの日赤眼が見えてな

 くたって私は多分わかってたよ。ホノカがMOMだっ

 てこと」

「な、なんでてすかぁ・・!?」

「だって志保は暴力大っ嫌いだもん。そんな志保が暴力

 ふるうなんて、操られてる以外考えられない」

「・・お友達のこと、信じてるんですねぇ」

「あったりまえじゃん。唯一の親友なんだから」

「なら、これはキツいんじゃないですかぁ?」

「え?ー」

その瞬間、志保と唯兎と朝木が一斉に襲いかかってきた。咄嗟に避けるが、カスって頬が切れた。

「操ってるってことは、私の思うままに操れるってこと

 ですよぉ?良い気になるのはまだ早いですぅ」

(確かに・・これはかなり厄介だな)

仲間の体を傷つける、ましてや殺すなんてことできない。もし元に戻れたとしても死んでいたら意味がない。かといってこのまま避け続けるのにも限度がある。相手も学習しているから、いずれ攻撃をモロに喰らうかもしれない。そうなったときが・・私の最後だ。

「キャハハハハ!人間は愚かですねぇ!瀕死の敵がいるのに仲間の邪魔で倒すことができないなんて!可哀想なハルちゃん♡」

(くっそ・・どうする!?)











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