第27話 嫌われ者
「ねぇホノカ〜、これどうやってやるの?」
「それはここのボタンを連打ですぅ」
「あ、本当ね!さっすがホノカ!ありがとう」
(・・どうなってるの?昨日まであんなにバチバチして
たのに、まるで別人・・)
昨日は結局皆んなに伝えたらあいつがまた殺しにくるんじゃないかという恐怖でホノカの正体を言えなかった。
(全然・・眠れなかったな)
「お、おはよ〜志保。・・なんか、仲いいね?」
「おはようハル。ホノカったらすごいのよ!」
「そんなぁ、志保ちゃん大袈裟ですよぉ」
「もぉ、あなたって本当可愛いわねぇ!」
「ふふっくすぐったいですよぉ」
「・・ねぇ、どうしてそんなに仲良くなったの?2人共
昨日はあんなにバチバチしてたのに」
「昨日の敵は今日の友って言うじゃない!・・いえ、私
達の場合は親友ね!」
「そうですねぇ!親友ですぅ〜!」
(・・・なんか、モヤモヤする)
そんなこと気にしてる場合じゃないのに・・早く、あのことを志保達に伝えないといけないのに。いざホノカを前にすると、足がすくんで・・・ダメ。
「ねぇ、志保・・」
「なぁに?」
「私達・・親友、だよね?」
口が勝手に動く。志保が隣にいるのは・・当たり前だと思ってた。・・少なくとも昨日までは。
「あったりまえじゃない!あなたも親友よ!」
「も・・ね」
「どうしたの?今日のハル、なんか変よ」
(それは・・こっちのセリフだよ)
「な、なんでもない」
「そう?ならいいんだけど」
「あ、それで志保!実は・・・」
「もう、志保ちゃ〜ん!穂乃果ともお話ししてください
よぉ〜?」
「あら、ごめんなさい。なんだったかしら?」
「だからあのキャラのグッズが〜・・・」
また2人で楽しそうにしている。・・おかしいな。嫉妬は志保の専売特許だったはずなのに。なんか、私が重いみたいだ。それより、早く伝えないと・・でも、今は、この空間にいたくない。
「志保、私部屋に戻るね・・・」
「えぇ。わかったわ」
「志保ちゃ〜ん。それでねぇ・・」
「まぁ、そうなの?」
「・・・・」
その日の夜は、特攻隊に来た日の夜より眠れなかった。永遠に夜が続くんじゃないかとさえ思えた。
(明日こそ・・ちゃんと言おう)
―――――――――――――――――――――――
その次の日も、そのまた次の日も、志保はずっとホノカと話していた。それだけじゃなく他の皆んなまでホノカを好きになり始めていた。今では、ホノカと話していないのは私だけになってしまった。
(・・・寂しい。こんなことしてる場合じゃないのに、
どうしたら・・・)
ずっと部屋で本を読むばかりの日々。・・そんなある日事件は起こった。
―――――――――――――――――――――――
「キャァァア!!」
ホノカが階段から落ちた。私は近くにいたからすぐに駆け寄った。
「ホ、ホノカ・・大丈夫?」
まだあの日の恐怖のせいか近づくと手が震える。それでも放っておけなくて話しかけた。すると、騒ぎを聞きつけた朝木がやってきた。
「おい何の騒ぎ・・ホノカ!?大丈夫か!?」
「ホノカ!大丈夫!?」
「お、おい!どこが痛い!?大丈夫かホノカ!!」
すかさず志保と唯兎も駆け寄り、大急ぎで手当の準備をしている。
「痛いですぅ・・」
「唯兎、救急箱持って来い!早く!!」
「わかった!」
(そこまで大袈裟な怪我じゃないと思うけど・・)
「ねぇ、志保・・今朝も言おうとしたんだけど実はー」
「今ホノカの怪我の手当で忙しいの!後にしてちょうだ
い。そこまで緊急の用事なの!?」
「う、ううん・・」
「てかボサっとしてないでハルも手伝いなさいよ!!」
「ご、ごめん・・・」
「全くもう!」
吐き捨てるように言うと志保は走って水を取りに行ってしまった。こんな強い言い方を志保にされたことは・・これまで一度もない。
(幻術か何か?それとも洗脳?原因がわからないと対処
しようがない・・)
ここまで厄介なMOMだとは思っていなかった。というより、あの日の恐怖のせいでまともに目も合わせられないんだけど・・。
「でも一体なんで階段から落ちたの?」
「滑りやすいようなら修理を頼むが、どうする?」
本当にホノカに対しては過保護だ。何か弱味でも握られているんだろうか?
「そういうわけじゃなくてぇ・・ハルちゃんがホノカを
突き落としたんですぅ・・」
「えぇ!?」
「ハル、お前なんてことを・・・!!」
「わ、私そんなことしてなー」
ーパチンっー
「いたっ・・・!?」
「ハル・・あなたがそんな人だとは思わなかったわ」
何が起こったのかわからなかった。頬がヒリヒリする。
志保が右手を振り下ろしているから、ビンタされたんだ
ろう。・・志保が?
「私本当にやってない!ホノカが何か誤解・・」
「ホノカが嘘を吐いたっていうの!?」
「そ、そんなこと言ってない!!」
「ハル・・あなた最低ね」
「見損なったぞ」
「お前・・終わってるな。自分のやったこと、もう少し
よく考えてみるんだな」
皆んな私を置いてリビングに行ってしまった。・・ホノカを囲むようにして。
(なんで・・なんでこんなことに・・私がもっと早く、
勇気を出してホノカの正体を明かしていたら何か違っ
ていたの・・?)
ーガチャー
「ハルちゃ〜ん、大丈夫ですかぁ?」
「・・・何が目的?」
ークスクスクスー
「何がおかしいのよ・・!?」
「ふふっ、本当おばかさんですよねぇ。みーんなホノカ
の味方するんですからぁ」
雰囲気が・・・急に変わった?さっきまでフワフワした感じだったのに。鋭い視線と冷たい声。・・あの日の夜と同じ。笑顔が余計怖く感じる。
「皆んなに何をしたの・・!?」
「何って、洗脳ですよぉ。そんなこともわからないんで
すかぁ?おばかさん♡」
「なっ・・・!」
「あらら、怒っちゃましたぁ?まぁ、そりゃ怒りますよ
ねぇ。大切な親友と仲間をとられたんですもんねぇ」
「早く戻して!!」
「そんな大声出しちゃ怖いですよぉ。それに、あんまり
怒るとみんなを呼んじゃいますよぉ?」
(・・・今この状況でみんなを呼ばれるのはまずい)
「まだわからないんですかぁ?あなたはホノカに負けた
んですよぉ。本当はあなたも苦しまずに殺してあげる
つもりだったんですけどねぇ・・気づいた人は生かし
てはおけないのでぇ」
「絶対・・許さないから」
「ふふっ。せいぜい吠えててくださぁい。一人じゃ何も
できない負け犬ちゃん♡」
「っ・・!!」
「なんとか言ったらどおなんですかぁ?うーん・・まぁ
いっかぁ。じゃあホノカは皆んなが待ってるので戻り
ますねぇ〜!・・あ、そうそう」
そういうとこちらにゆっくり歩いて来て、目の前で止まった。しゃがんで耳元でささやく。
「誰にも必要とされてねぇんだからさっさと消えろよ、
嫌われ者」
ーゾクッー
「っ・・!!」
「足掻いて余計苦しい思いするより、仲間なんて捨てて
楽になった方がいいですよぉ。じゃ!」
ーガチャンー
「・・・」
とりあえず自室に戻る。そして、もう一度考えた。
(どうしよ・・多分今の志保達は何を言っても聞いてく
れい。もっと早く勇気を出していたら・・いや、ホノ
カがここに来た時点で私達は負けていたのかもしれな
い。洗脳って言ってたけど、どうすれば・・)
出ていきたい。楽になりたい。何度も何度もそう考えた。でも、その度に頭によぎる。朝木と唯兎と・・志保との、楽しい思い出が。
(私の居場所は・・ここにしかない。志保達を見捨てる
ことなんてできない)
その結論に納得できなくて何度考え直しても結局その考えに至る。私は一人じゃ、何もできない。小さい頃からそうだった。誰かに助けられないと何もできないやつだったな・・ずっと。思い上がっていたのかも知れない。志保という友達と出会って、運動能力が人より高くて、良い力を授かって・・でもそれは、どれも一人じゃ手に入れられなかったもので、皆んなのおかげだ。恩は、返さなきゃいけない。辛くたって、1人でやるんだ。失敗はできない。
(チャンスは・・・一度きりだ)
明日の任務で、終わりにしよう。
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