第22話 課題(2)
グラウンドを夕日が照らす。3人が見守る中、私はひたすら走り続けた。疲れは…ない。
「…そろそろ48時間…2日経つな。5、4、3、2、
1…0!」
ーピピピピッ ピピピピッー
「よ〜し、もう止まっていいぞ。よく頑張ったな美坂」
「すげぇな…本当に丸2日走り続けやがった…」
自分でもよく頑張ったと思う。だが、走距離が足りなければ意味がない。緊張しつつ、朝木の言葉を待つ。
「走距離は…1570km!」
「よ、よかったぁ…」
ヘナヘナと情けなく膝から崩れ落ちる。疲れではなく、安堵で腰が抜けた。それを志保がすかさず支える。
「やったわよハル!すごいわ!」
「ありがとう!」
「あら?膝から崩れ落ちた割には元気ね」
「まーね。自分でもびっくりだよ。全然疲れないんだも
ん。これで志保に勝てるものが1つ増えちゃった!」
「ぐぬぬ…いつか追い抜かすわよ!」
「美坂、期待以上の数値だ!本当によく頑張ったな。実
は全員かなり厳しめの課題を出してたんだが、本当に
よく達成してくれた…!」
「どうりで…俺の時とは課題のレベルが違うなと思った
ぜ」
「あ、そっか。唯兎一回やってるんだっけ?」
「あぁ。そんときは結構余裕でクリアできたんだが…」
「まぁ新人も優秀だし、お前にも次の段階に進んでほし
かったからな」
ープルルルルー
「あれ?誰かスマホ鳴ってない?」
「あ、わりぃ俺だ」
そう言うと朝木は少し離れたところで電話し始めた。
「そういえば、授与式の後なんであんなに暗かったんだ
ろ、朝木」
「そういえば理由知らないわね」
「別にどうでも良くね?それより腹減ったな〜」
「確かに…なんでもいっか。ねぇ、寮でのご飯ってどう
してるの?」
「交代制で作ってるぜ。って言っても朝木は忙しいから
ほとんど俺が自分で作って自分で食べてるけどな」
さすが上官なだけあって忙しいんだなぁ。…いや、すっごい暇そうだけど。任務が始まったら忙しくなるのか?
「私料理得意だよ。今日作ってあげよっか?」
そう、こう見えて私はかなり料理が得意だ。貧乏だから何でも料理して食べてた。虫にはさすがに手を出せなかったけど…。
「いや、俺結構料理の腕には自信があるんだ」
少しムッとした。苦労したことなさそうな坊ちゃんが何言ってるんだろう。こちとら死にもの狂いで料理覚えたってのに。
「いーや!私のほうが得意!」
「なんだと?絶対俺の方が得意だ!」
「まぁまぁ意地張らないで。どっちも上手いってことで
いいじゃない、ね?」
「そんなに言うなら志保が判定してよ。どっちが料理上
手いか」
「おおそうだ、それがいい。こいつにガツンと言ってや
ってくれ」
「え、えぇ…」
そうこうしているうちに朝木が戻ってきた。なにやら深刻そうな面持ちである。
「おいお前ら、話に水を刺すようで悪いが早速初任務
だ」
「え!?」
「当たり前だろ。人手不足なんだ。課題はもうクリアし
たんだから、戦力としては十分だ。…まぁ本当はあと
ひと月ぐらい訓練してからなんだが、生憎S級クラス
が出ちまって更に人手不足になっちまってな」
そういえばステーションでもそんな話をしていたが、そこで言っていたのと同じやつだろうか。ていうかいつの間にか政府から貰った貴重な3日の休暇が終わってる!まんまと朝木の策にハマってしまった。
「隊長クラスが3人がかりでやっと倒せるようなやつ
だ。RPGで言ったら四天王辺りだな」
「そ、そんなのがいるのね…」
「まぁ安心しろ。お前らがこれから行くのは雑魚中の雑
魚のG級の巣だ。毛虫みたいなもんさ」
安心できるわけがない。初任務で巣に行くなんて無茶苦茶にも程がある。この組織のお偉いさんは皆んな朝木みたいなのばっかりなのか?
「まぁそういうわけで、明日の朝出発だ。今日は腹いっ
ぱい食って早めに寝ろ。いいな?」
「「「はーい」」」
体育館から出て行こうとすると朝木に扉を閉められた。
「…おいちょっと待て、お前らそれで終わりか?」
「これ以上何があるのよ?」
最もだ。ちゃんと返事をしたのに何がいけないのか。
「敬礼しろ敬礼!!任務の時は俺以外のやつとも一緒に
なるんだぞ!?俺が怒られんだぞちゃんとやれ!!」
面倒くさいことこの上ない。そもそもそんなこと一回も言われたことないのに急に出来るわけないだろう。やっぱりこいつ…無茶苦茶だ。
「はいはいわかったよ」
「はいは一回だ唯兎」
「……」
面倒くさくなったのか唯兎は喋るのをやめ、宙を見つめている。
「…まぁいい。もう一回やるぞ。…まぁそういうわけで
明日の朝出発だ。今日は腹いっぱい食って、早めに寝
ろ。いいな?」
「「「はい!」」」
「そう、それでいいんだ」
満足そうにそう言うと、朝木は体育館から出て行った。一同はその背中を一通り睨みつけると顔を見合わせた。
「もう、寝ようか…」
「…そうね」
「…そうだな」
私達は大きな不安と多少の苛立ちを抱きながら、体育館を後にした。
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