第18話 授与式(2)

「雨宮志保、貴君は誠心誠意この部隊に尽くし、日々精

 進すると誓うか?」

「はい」

「ならば、目を閉じこの桶に手を入れ、自分が最も強く

 願うことを思い浮かべよ。さすれば其方に見合った力

 を授かるであろう」

なんとも神秘的な雰囲気だが、志保と朝木の口調が変わり過ぎて気になる。全くもって集中できない。

ーチャプー

「…ねぇ、唯兎もこの授与式やったんでしょ?」

顔の向きは正面のまま、小声で唯兎に耳打ちする。

「あぁ」

「なら何お願いしたの?」

「あー、母ちゃんの病気が治るように…って、お前には

 関係ないだろ!!」

そこまできたらもう諦めなよ…。これだけでもこいつが良いやつだってことが十分わかるが、やはり仲良くはできそうにない。ちなみにこれまでの会話は全部小声だ。

「お、志保が手を引き抜いたぞ」

唯兎の言葉に再び壇上を見ると、志保が引き抜いた手をまじまじと見つめている。朝木は壇上を降りると、何やら紙を持ってきて志保に耳打ちしている。すると今度は弾幕に入り、カメラのようなアイパッドのような、なんだかよくわからない装置を持ってきた。

「いいか、間違えるなよ」

「わかってるわよ」

ん?なんの話だ…?疑問に思うも、一旦授与式に集中する。朝木が装置のスイッチを入れたようだ。ぱちっと音がして画面が光っている…が、こちらからは画面がよく見えない。

「雨宮志保、ここに宣言いたします。私は常にMOMを

 滅することに重きを置き、地球にいる母様や父様のた

 めにも日々精進し、政府にこの身を捧げ、全力で敵と

 戦うとここに誓います!」

「…うむ。おめでとう。これで君も晴れて特攻隊の一員

 だ」

朝木よりも年上のおじい…ご年配の方の声が、あの装置から聞こえる。

「はい。宣言通りの人間になれるよう、日々精進いたし

 ます」

「それでは…雨宮志保、壇上から降りなさい」

「はい」

志保がゆっくりと壇上から降りてくる。その目の瞳孔は大きく開かれていた。

「…朝木君、ちょっといいかね?」

「は、はい」

装置からの声が朝木を呼ぶ。朝木は頭を掻きながら装置の方へと歩いていった。

「雨宮、授与おめでとう」

私が朝木に気を取られている隙に、先に唯兎が志保に声をかけた。ちょっと悔しい。

「え、えぇ…ありがとう」

「…なんだよその顔」

「いや、唯兎が祝ってくれるとは思ってなくて…」

「なんだよ、失礼なやつだな」

拗ねている唯兎に構わず、背後から志保に抱きつく。

「志保!授与おめでと!」

「キャア!?…ありがとう、ハル!」

「ねぇ、何を思い浮かべたの?」

「内緒よ」

「え〜なんで?」

「願い事って、人に話したら叶わないのよ?」

「えっ」

志保の一言に唯兎が驚いた顔で振り返る。さっき私に話してしまったからだろう。

「なぁ…それ、ほんとか?」

「い、いや〜…どうかしらねぇ?」

「おい、答えろよ!」

「あ、朝木が帰ってきた」

咄嗟に話をずらそうと嘘をつくと、本当に朝木が帰ってきていた。…大きなため息を吐きながら。

「お、お帰り」

「……ただいま」

なんというか、負のオーラをかもし出している。こんな朝木見たことがない。

「朝木、シャキッとしなさいよ。何があったか知らない

 けど、そんなんじゃ余計に気分が重くなるわよ?」

メンタル激強大魔神の志保は人の痛みがわからない…と思っていたけど先日のいじめられてたという話を聞く限り、志保なりの励ましなんだろうか。

「そうだよな…雨宮、皆んなに〝それ”見せてみろ」

朝木が促すと志保は頷き、手の甲を私達に見せてきた。すると、何かのマーク?が浮かび上がっている。

「えっ…それ、どうしたの?」

「水の桶に手を入れて、引き抜いたらこうなってたわ」

「力を持つ者に浮き出る力紋だ。これの形で何の力が備

 わったかわかる」

皆んなゴクリと唾を飲み込む。一体どんな力なのだろう…?

「雨宮の力は…」

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