第16話 テスト開始(2)

「さ、ついたぞ。早速テストを始めるから、体育館に入

 れ」

「体育館ってまさか…これのこと?」

朝木の背後には真っ黒で大きい扉がある。カラスや蛇、黒猫が彫ってあり、不気味だ。とても体育館には見えないが…。

「そうだ。体育科のマキア先生は魔女だからな。こうい

 うデザインだと落ち着くんだろ」

「ま、魔女!?」

魔女までいるなんて…これも力の特性だろうか。なんか世界観が…これ以上考えても無駄だな、うん。

「この施設は総長でも壊せないように設計されている。

 だからどんだけぶっ放しても問題ないぞ!思う存分暴

 れろ」

「りょーかい!私もハルも運動は大得意だから、度肝抜

 かれるわよ?」

「ふん。こちとら山ほど運動得意なやつ見てきてんだ。

 そんな簡単に度肝なんざ抜かれねぇよ」

「言ったわね?」

「あぁ、言ったさ」

「ハル!見せてやりましょう!」

「おっけー!」

お互い顔を見合わせてウィンクする…が、私はウィンクができないためいまいち締まらない。

「じゃ、お手並み拝見といきますか」

そう言って唯兎はパイプ椅子に座り、足を組む。やっぱ微妙にムカつくな…こいつ。

「おい唯兎、お前もやるんだぞ?」

「え〜…一回やったしいーじゃん」

「ダメだ。規則なんだよ」

「…りょーか〜い」

唯兎は気怠げに立ち上がると、私達と1メートルぐらい離れたところに立った。

「じゃあ、手始めに単純な足の速さを測る。お前ら3人

 で徒競走しろ」

足の速さなら自信がある。これまで志保に勝てた数少ないことの1つだからだ。…ん?唯兎やけに余裕そうだな…何か仕組んでるのか?

「あ、先に言っておくがお前ら、力を使うのありだから

 な。後で不正だなんだと騒ぐなよ」

「はぁ!?そんなの勝てないに決まってー」

「よーい、スタート!」

ーピリリリリリー

仕方ない、全力で走って一泡吹かせてやろう。よし、スタートダッシュはいい感じだ。これはいけるんじゃないか?などと思っていると、笛が鳴った。志保は5分の1、私は3分の1を過ぎたところで、唯兎は…もうゴールに着いていた。

「なっ…!」

「1番は俺だな」

「ほら、まだ終わってないぞ!走れ!」

「あっ…」

すっかり気が抜けてしまっていた。それにしても…力の行使の自由、ゴリ押しスタート…無茶苦茶にもほどがある。そろそろキレそうだ。そうこうしているうちに私も志保もゴールした。一度気が抜けたため最低タイムになってしまった。

「デカいこと言ってた割に結構普通のタイムだな(笑」

ーブチッー

その一言で私の中の何かが音を立てて切れた。

「…こっちが仲良くしようとしてんのに、嫌味なことば

 っか言いやがって…!!!」

「お、おい…美坂?」

「気持ち悪いから名前呼ぶなよ底辺陰湿ナルシスト」

「……」

「ま、まぁまぁ…落ち着けよ、な?」

「もともと朝木が少しでも協力してくれてればここまで

 酷くならなかった!!」

「え、えぇ…俺のせい?」

「は?自覚持てよイキリ自己中KY」

「……」

「二人とも、何とか言ったら?」

「「……すみませんでした」」

「すみませんでしたで済んだら警察いらねぇんだよばー

 か!!」

「ばっ…!?」

「じゃあ、もう一回私と勝負して勝てたら許してあげる

 よ」

「本当か…!ならー」

「ただし、力使うの無しね」

「…わかった」

完全甘く見てるな。どうせ力使わなくても勝てるだろぐらいに思ってんだろうなぁ。スタートの合図は一度無茶苦茶やった朝木じゃもはや信用できない。ここは志保に頼もう。志保に目配せすると志保がウィンクし、私も返そうとするが…やはりできない。

「よーい、スタート!」

志保が叫ぶと同時にダッシュする。心なしかさっきよりスタートダッシュがうまくいった気がする。その後も順調に走り、唯兎に一度も希望を与えることなく圧勝したのだった。怯える朝木とハイタッチする私と志保を横目に、今にも泣きそうな顔の唯兎が面白かった。

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