第14話 寮での出会い(2)

「朝木、私無理だからね!」

廊下に私の叫び声が響き渡っているが、誰もいないので気にしない。

「気持ちはわからんでもないが…なんでそこまで唯兎を

 嫌うんだ?」

「私の嫌いな人種が1位ナルシスト、2位陰湿女、3位

 イキリ小学生なの!なんか…とにかく無理」

「うーん…お前がそっち側で良かったのか悪かったの

 か…。まぁ色恋沙汰とか面倒だから良かったんだろう

 けど、極端だなぁ」

「とにかく無理だから!もう私戻るよ」

「待て。これだけは伝えておきたい」

「なに」

「唯兎はなりたくてナルシストになってるわけじゃない

 んだよ。あいつは顔が良いだろ?だから侵入者が女だ

 ったら皆んな任せるんだよ。情報吐きやすかったり投

 降しやすいからな。それで自分磨きをしていくうちに

 自分の顔に自信を持てたみてぇでさ。これだけ努力し

 てるんだから、ってな。あいつのナルシストは皆んな

 のための、なんだよ。最初は全然あんなんじゃなかっ

 たんだぜ?むしろ気弱だったんだよ、本当」

「そう…だったんだ」

「お前のこと侵入者だと思ってたみてぇだから、自分の

 顔面が通用しなくて落ち込んでると思うぞ、あいつ」

「私、酷いこと言っちゃった…」

「その責任を取るためにも、あいつと仲良くしてやって

 くれ。あいつの自信を崩させないのが、お前の最初の

 ミッションだ」

「わかった。やってみるよ」

「あぁ。ありがとな!」

朝木はニカっと笑うと、ドアノブに手をかけた。

「いいか…あくまで友好的に、だぞ?」

「わ、わかってるよ」

ーガチャンー

ドアを開けると…志保と唯兎が口論していた。

「だーかーら!気持ち悪いから話しかけないでって言っ

 てんの!」

「なっ…!そんな言い方ないだろ!?仲良くしてやろう

 としてんのに」

この様子から察するに、私のことで自信をなくした唯兎が志保で自信を取り戻そうとして失敗した…というところだろう。流石に初手で志保はレベルが高過ぎる。

「でたでた、上から目線!そういうところだって言って

 んのよ!!もういいわ…ハル!」

「え?な、なに…?」

「あなたからも何か言ってちょうだい!」

「え、えぇ…」

友好的に、かつ志保を怒らせない方法…無理だろ。そんなものこの世にない。朝木に助けを求める視線を送っても、友好的に!と書かれた紙を掲げるだけだ。うぅ…もうこうなったら…!!

「志保!」

「な、なに?」

「私ちょっとお腹空いたから購買行ってくる!」

最大の安全策は逃げる!今までも何度かこの方法で志保の逆鱗を回避してきた。

「え、え!?ちょ、ちょっとハル!?いくらなんでも急

 過ぎない?…もう!この続きはまた今度よ!ちょっと

 待ちなさいよハル〜!そもそもあなた購買の場所わか

 ってるの!?」


 こうして、私は後で志保にお説教され、唯兎は朝木

 にお説教されるというお互いマイナスなスタートを

 切った共同寮生活であった。



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