第9話 嫌な予感(1)

「特攻隊へようこそ、おふたりさん」

扉をくぐると、外で見た門と同じような材質の壁の部屋に出た。大きな絵と机、その上には花瓶と、金属質な壁以外は何の変哲もない部屋に見えるが…。

「ここは侵入者を撃退するための部屋だ。万が一ここまで侵入されてしまった場合は、この部屋のありとあらゆるセキュリティが一斉にそこにいる全ての生命体を攻撃する。これから向かう本部も大体同じ構造だ。もし中に入る時は、必ず外にある壁面無線機を通してからにしろよ!くれぐれも、無理やり中に入ろうとはしないことだ。どんなに急いでいたとしても…な」

「わかったわ。…それよりさっきから気になっていたんだけど、この壁の材質は何?見たことないわ」

志保のメンタルの強さは前々からわかってたけど、こんな恐ろしいセキュリティの話聞いといてそれより壁の材質が気になるなんて…。

「あぁ、この壁は対MOM用特別硬壁といってな。政府の研究チームを総動員して作った今の人類が作り出せる最高強度の壁だ。なんでも、隕石が落ちてきても大丈夫なんだとさ。すげぇよな」

隕石!?スケールが違いすぎていまいちピンとこない。本当にそこまでする必要があるのだろうか…?

「…今、そこまでする必要ある?とか思っただろ。それは任務に行ってみればわかるさ。俺達の常識というものが如何に小さいものかが…な」

そう言われてもピンとこないものはピンとこない…それだけ私達は平和ボケしていたということ、か。

「さ…こんなおっかない部屋早く出ようぜ」

「あ、私寮を最初に見てみたいわ。荷物も重いし」

「確かに荷物を持ちながら歩くのはキツいな。そうするか!美阪もそれでいいか?」

確かにこの荷物を持ちながら歩くのは大変だし、同い年の人がいるなら顔を見ておきたい。

「うん。私も賛成」

「よし!じゃあ行くか。…言っとくけど、かなり癖強いからな?覚悟しとけよ?」

「大丈夫だよ、慣れてるから」

そう言って志保のほうをチラッと見る。すると志保の顔がみるみる赤くなっていく。よかった、いつもの志保の反応だ。

「それ言ったらハルだって癖強いじゃない!」

「あはは!確かにね!…まっ、癖強い同士お互い様ってことで」

「ふふっ、そうね。…でも良かったわ、いつものハルに戻って」

「え?どういうこと?」

「あなた今日ずっと変だったじゃない。お昼の…」

「お昼の?」

「いや、え〜っと…お、お昼食べ損ねてから元気ないじゃない?だから…ね」

志保が言葉を濁すなんて珍しい…でもこれ以上詮索したらまた喧嘩になりそうだし、今日のところは私が引こう。迷惑もたくさん掛けちゃったし。

「だってお腹空いたんだもん!」

「ふふっ。ハル、運動やめたら太るわよ〜?」

「うっ…!わ、わかってる!でも、私運動やめないか ら!だから大丈夫!」

「あ、そっち?食べる量減らすとか、もっとそういう感じかと思ったのだけど…」

「おい、おまえら。学生の青春を邪魔するつもりはねぇが、早いとこ話を終わらせてくれよ。場所が場所だからな。早くしねぇとセキュリティが戻っちまう…お前らも気をつけろよ。一定時間経つとセキュリティは復活するからな。決して言うのを忘れてたわけじゃない。怖がらせると思ってあえて言ってなかっただけだ」

そういうことはもっと早く言って欲しい。てか絶対言うの忘れてたでしょ!!死人が出るよ?マジで。

「わかったわ。急ぎましょう、ハル」

「うん!」

こういうテンパってる状況でも声をかけてくれるのは、志保の根が優しい証拠だ。言い方がキツいから皆んな性格もキツいと勘違いしているけど、話してみるとけっこう友達思いだったりする。

「…何ニヤニヤしてんのよ?気持ち悪いわね。そんな顔で寮生に挨拶したら引かれるわよ」

「………」

本当、そういうとこだよ…。

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