第4話 最後の日常(2)

ー3時間後ー


「ねぇ…これ、本当に私が着て大丈夫?」

「当たり前じゃない。こんなこともあろうかとあなた用に作らせたのよ?やっぱり間田はセンスあるわね!似合ってるわ」

私が着せられたのは、マキシ丈のパーティードレスだ。レースにとても細かく刺繍がしてあり、上品だけどとても可愛いデザインだ。しかも着心地抜群で、一般人の私でも相当高価な物だとわかるほどだった。

「うちのメイドは優秀だわ。今のあなたは誰がどこからどう見ても良家のお嬢様だもの」

「ありがと…でも、なんでお揃いなのよ…!」

私が顔を真っ赤にしているのが面白かったのか、志保は意地悪そうに笑うと、

「いいじゃない、姉妹みたいで。ねぇ間田?」

「えぇ、お嬢様!どこからどう見ても良家の美しい姉妹でございます」

間田さんまでさらに追い打ちをかけてきた。まぁ昨朝私も煽ったからお互い様だ。

「あと30分あるし…テレビでも見ましょうか。アニメ見始めると止まらなくなっちゃうから今やってるニュースにしましょう」

「え~…」

「…別に見ても良いけど、遅れたら昼ご飯なしよ?」

「ニュースにしよう!」

「冴木、テレビつけてくれる?」

「かしこまりました」

冴木さんがテレビをつけると、ちょうどニュースがやっていた。100年前に月からやってきた謎の生物『the mystery of the moon』通称MOMのことについてのようだった。特に興味があるわけではなかったけど、せっかくだし見てみようか…そう思った矢先、志保がリモコンを凄い勢いで執事から奪い取り電源を消した。

「ちょっと!なんで消すの!?…はっはーん。怖いんだ?」

「…え?何が?」

「志保は怖がりだもんね〜!大丈夫だよ!MOM怖いっていう人たまにいるし。小学生とか!」

さっきのお返しのつもりで私がそういって笑っていると、志保は黙り込んでしまった。顔真っ赤にしてキレてくると思ったのに…最近予想外の反応が多い。

「……人の気も知らないで」

志保がボソっと呟いたその一言は、私の耳には入らなかった。志保がテレビの電源を切る寸前、テレビに映っていた〝凶暴化〟の文字。あれは一体…?それに、妙に引っかかる。MOM…思い出せそうで思い出せない。何か大事なことを忘れている気がする。気になり出すとそのことで頭が一杯になる。私の悪い癖だ。

「…ねぇ、志保。やっぱり…」

「ハル、早く行きましょ!お店の予約時間まで思ったより時間がないわ。…どうかした?」

「そ…っか。ごめん、なんでもない!」

きっと気のせいだ。そう思うことにした。せっかく志保が立ててくれたプランを無駄にはしたくない。私は駆け足で玄関に向かった。


この行動を、私は一生後悔することになる。

この時からすでに運命のカウントダウンは始まっていたが、当時の私はそんなこと知る由も無かった。

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