第2話 決意
「うん。うん…わかった。じゃ、またね」
「…なんて?」
「いいって。いつも泊まりに行ってるから…というより、私に興味がないんだろうな」
苦笑いを浮かべた私を、志保は悲しそうに見つめる。
私の家は、父が借金と連れ子の私を残して蒸発したためとても貧乏だ。
だからお母さんは私を嫌っている。
私がいなければ幾分かマシな生活を送れていたから。
だからお母さんの機嫌が悪い時は、志保の家でご飯を食べさせてもらっている。
それと家賃月3万のボロアパートでお風呂がないため、いつも学校帰りに志保の家へ寄ってお風呂を貸してもらっている。
部活がある日はそのまま泊まることがほとんどだから、まぁほとんど姉妹みたいなものだ。
「そう…良かったわ。変に詮索されなくて」
「でも良かったの?私はともかく志保も家族に候補者であることを言わないなんて」
「…いいのよ。お母様とお兄様は取り乱してしまうだろうし、お父様は…もう知ってるわ」
「…そっか」
志保のお父さんは内閣副大臣だから、政治関係の情報を色々知っている。
…本当は庶民の私が家に入り浸るなど恐れ多い家族なのだが、志保は性格上友達が少ない(志保のお金や美貌を目当てにやってくるようなクズはウヨウヨ湧いてくるのだけれど)から、私は大いに歓迎された。
これまで志保の家には何度も来ているけど、未だにこの豪華さには緊張してしまう。
「ご飯…食べましょうか」
「…そうだね!お腹すいちゃった」
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その後、ご飯を食べても気分は晴れなかった。
お風呂に入っても気は緩まなかった。
テレビゲームを二人でしてもいまいち盛り上がらなかった。…当たり前だ。そんな小さな問題じゃない。
「…そろそろ寝ましょうか」
「そうだね。…一緒に寝ても良い?」
「はぁ…しょうがないわね」
こう言っているけど、志保も本当は1人で寝たく無かったはずだ。ここは私が大人にならないと志保が塞ぎ込んでしまう。
…ツンデレは大変だな。
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布団に入ってかれこれ1時間ほど経ったが、目は覚めきっていた。
ま…そりゃそうか。"あの"候補者に選ばれちゃったんだもんなぁ。
『候補者』の集まる機関、通称『マディア』は、政府が管理している極秘組織のため一般人に情報が流れることはまずない。
そのため、様々な噂が一人歩きしている。
Twitterを開いて候補者で検索すると『候補者に選ばれた者は生きては戻れない』『候補者の遺書の書き方』等がヒットした。
これから…どうなるんだろ、私。
クラスメイトの顔や自分の死に様を思い浮かべると、涙が溢れてきた。
…もう寝よう。明日からは休みなんだし。
無理やり踏ん切りをつけ布団を頭から被った時だった。
「ハル…まだ起きてる?」
突然声をかけられ、思わずビクッと肩を震わせた。
「…起きてるよ。もう寝ようとしてたとこだったけど…どうしたの?」
「明日から…どうするの?一旦家に帰る?」
「…ここにいさせてもらってもいいかな?お母さんの顔見たら名残惜しくなっちゃいそうだから。あんなでも一応母親だからさ」
「…わかったわ。そういえば、ハルの家大丈夫なの?あなたいくつもバイト掛け持ちして家にお金入れてたじゃない。ハルがいなくなったら…」
「そう、だよね…やっぱりヤバいよね」
「…返済手伝おうか?お金なら心配ないし、お父様とお母様も、ハルの家族なら…」
「……じゃあ、私が月に行ったらお願いしよっかな。って言っても明々後日なんだけどね」
「そう……ったく!もっと早くから頼ってほしかったんだけど?」
「それはお互い様!…ていうか志保のが酷いから!こんな状況でさえ素直になれないんだから」
「悪かったわね素直じゃなくて!」
「…返済で志保に頼らなかったのは、あの取り巻き達みたいにお金目当てで志保と付き合ってないことをちゃんと証明したかったからだよ」
「…………」
「…もう寝る!!おやすみ!」
「ふふっ。おやすみなさい」
薄れゆく意識の中決意した。
もう立ち止まらない。
志保のためにも。
前を向いて、進んでいくしかないんだ。
心の中でそう呟き、私は眠気に身を任せた。
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