ポストアポカリプスを辿る世界
この異世界に転移してから2週間ほどが経過した。
現在はこの世界のお勉強と実践訓練を叩き込まれている最中であり、俺は学生時代とは比べ物にならないほどに忙しい日々を過ごしている。
この世界の一般教養(常識)を学ぶ過程で、この世界のある程度のことが分かってきた。
“ポストアポカリプスを辿る世界”。
この世界を一言で表すなら、この表現がしっくりくるだろう。
2週間前、俺に話しかけてきたおっさんが“この世界から脱出する”と言っていたが、その理由が明らかになったのだ。
「ダンジョンと呼ばれる異常空間の侵食。それによる魔力汚染によって、人々の住める大地は減り続け、ダンジョンの侵食を止める術は現在のところ見つかっていない」
ファンタジーになれている人ならば、これだけ聞いてある程度理解できるだろう。
俺も理解した気でいたが、このダンジョンが思っている以上にえげつかなかった。
ダンジョン。
この世界に存在する異常空間であり、ある一定時間が経つとその空間内の全てがリセットされて元に戻る無限資源庫。
実際、多くの国がダンジョンを資源の宝庫として活用しており、ダンジョンで破壊したものはリセットされない為に木材や魔物と呼ばれるファンタジー生物の素材などを取る場所として活用していた。
しかし53年前、とあるダンジョンが暴走。
急激に世界を飲み込み始め、飲み込まれた世界は時間が経てばリセットされ続ける場所となってしまった。
しかも、ほぼ全ての生物にとって有害となる“魔力汚染”を伴いながら。
魔力汚染とは何か?
地球で言うところの核汚染に近く、簡単に言えばほぼ全ての生物が生存できない超危険地帯。
どれだけ耐性があったとしても、長くて1ヶ月も生きられないその場所は、死の大地と化す。
“魔力汚染が存在しなければ、世界は平和なままだった”と言われるほどには、この魔力汚染が全ての元凶らしい。
ダンジョンの中のみで発生しており、ダンジョンの力によってリセットされた生物以外は生存が不可能。そして、リセットされた人類は事実上の死を意味する。
そこに人としての意識は存在せず、ただダンジョンを彷徨う亡霊。
そりゃ、世界がダンジョンで侵食される前に逃げようとなるわけだ。俺だって今すぐにでも逃げ出したい。
リミットはまだ正確には分かってないが、予測では20~30年ほど。
老後を幸せに暮らしたいなら、この世界か脱出しようねという話である。
「6発中3発命中。10mでの射撃はそこそこ当たるようになりましたね。実戦投入も近いでしょう」
「セリアさん。でもこれ、実践じゃ動きながら撃って当てるんだよね?」
「状況次第です」
さて、そんなポストアポカリプスな世界にやってきてしまった俺だが、現在俺は射撃訓練の真っ最中であった。
その手に持っているのは、拳銃。
日本警察が持っているようなリボルバータイプの拳銃を握り、的に向かってパンパカ銃をぶっぱなしている。
この世界の文明レベルは結構高く、下手をしたら地球よりも高いと思われる。そんな文明を持った世界が、銃という便利なものを作り出さないはずがなかったのだ。
「まさか、魔力汚染への耐性がここまで高いとは予想外でした。内包している魔力も桁外れ、継戦能力にも期待できます」
「魔力なんて概念は、地球には無かったはずなんだけどね」
「理由は不明ですが、次元の裂け目に落ちた際に体への変化があったのかもしれませんね」
「クソいい迷惑だよそれ」
この2週間で俺の体はあれこれ検査された訳だが、俺は異常に魔力汚染への耐性が強かった。
魔力汚染への耐性は、その個体が内包している魔力量の多さに比例する。
俺は、通常の人間が保有する魔力の7倍近くの魔力があったらしい。
魔力チートだやったぜ!!........なんて楽観的な喜び方はできない。
だって魔力汚染の中で活動できるの、精々10日ぐらいなんだよ?結局死ぬのだ。
「魔力が存在しない世界というのも不思議なものですね。我々では想像もできません」
「こっちでは当たり前のエネルギーでも、俺の世界じゃ御伽噺の存在だったよ」
俺はそう言いながら、静かにため息をつく。
魔力。
ゲームにはよく出でくるその概念は、こちらの世界にも存在している。しかし、こちらはゲームではない。リアルで存在するのだ。
魔力は全ての生命に宿るエネルギーであり、その世界はその魔力と共に発展してきた。
魔力があったから現在の技術と文明があると言っても過言では無いのだが、俺は詳しい説明を受けてもちんぷんかんぷんだった。
まぁ、生命力とは別のなんかすごいエネルギー。魔法使うためのリソースとして俺は認識している。
で、その魔法が
銃弾は魔力によって生成され、銃はその魔力を打ち出す為の媒体。
これ1発で人を殺すには十分な威力がある。
俺の想像していた異世界は、杖を振って炎を出すような異世界だったんだけどなぁ........
「訓練を続けましょう。体力に関しては継続的にやっていくしかありませんが、射撃に関しては伸びしろがありますから」
「はい」
現在俺の立場はかなり危うい。
この
セリアさんに関しても、若干警戒心が見て取れる。
俺が信用ならないもしくは、使えない人物であると判断されれば、このポストアポカリプスの世界に放り出されるかもしれない。
俺を実験体にするような連中ならばともかく、少なくとも人道的に扱ってくれるこの環境を手放すのは流石に愚かすぎる。
今やるべき事は、やれることに全力で取り組んで彼らからの信頼を得ることだ。
俺はリボルバーの弾倉に魔力を込めると、弾丸を生成。弾丸は魔力を込めると勝手に生成される。
そして生成が終わると、的に向かって狙いを定めて引き金を引いた。
パンパンパン!!
パンパンパン!!
反動を制御しながら、3発づつ的に向かって撃つ。
魔力を放っているだけのため、硝煙のような臭いはしない。無臭の殺害兵器。この世界はとんでもないものを生み出している。
「4発命中。訓練開始から僅か1週間でこれほどまでに命中させられるのは、センスがありますよ」
「あと2発か........」
「将来的には全弾命中を目指してください」
反動は思っているよりは大きくないが、腕を真っ直ぐ構えるのが難しい。
当たり前だが、リアルで銃を撃ったことなどあるはずが無い。
平和な日本で生まれ育った俺に、いきなり銃を持たせて訓練させているこの人達がおかしいのだ。
「お、やってるね」
「リーダー」
漫画のようにビシバシ当てるのは無理だなと、理想と現実の違いを突きつけられていると、このハイドアウトのリーダーであるグランドが姿を表す。
俺はリボルバーをカウンターの上に置いてから、頭を下げた。
「調子はどう?」
「お陰様で何とか」
「射撃技術に関してはかなりセンスがあるかと。あとは基礎体力と筋力を鍛えれば、我々の力強い味方になる可能性もあります」
「いやー、まさかこんな所にこんな人材が落っこちてくるとはね。これも神の導きと言うやつかな?アッハッハッハッハッ!!」
堅苦しいのがあまり好きではない性格らしく、場を和ませようと明るく振る舞うグランド。
2週間、このハイドアウトを見てきたが、このハイドアウトは彼を中心に回っているのは明らかであった。
彼からの信頼を獲得出来れば、ほかの全員も大きく俺を信用していくれる事になるだろう。
とは言えど、見え透いたゴマすりはしないが。
「それで、何の用ですか?無駄話がしたいだけなら、そこにある的と話して下さい」
「それ、私も撃たれるやつだよね?普通の人間だから死ぬよ?それはそうと、ユナくん。折角こんなところに来たんだから、外の世界を見てみたいだろう?」
「まぁ、はい」
ポストアポカリプスとは言えど、異世界に来たのだ。自分の知る世界とはどれだけ違うのか、外を見てみたい気持ちはある。
俺は素直に頷いた。
「という訳で、明後日に外に出てみよう!!次いでにダンジョンにも行ってみよっか!!」
........マジ?
【ダンジョン】
この世界がポストアポカリプスとなっている要因。酷い魔力汚染によりダンジョンに飲み込まれた生命しか生存できない上に、一定時間でダンジョンの内部がリセットされて元に戻るためダンジョン内の生命も実質死んでいるのと変わりない。ダンジョンの侵食は今も尚広がっているが、内部の資源は豊富な為人々は入らざるを得ない。
【魔力汚染】
その名の通り、魔力の汚染。魔力はこの世界の生命にとって極めて重要なエネルギーであり、それが汚染されると言うことは生命に影響を及ぼすという事である。
地球で言う大気汚染。しかも、とんでもない勢いで寿命を削ってくるタイプの。
【魔力】
この世界に存在するエネルギー。ある種の生命エネルギーであり、生命はおろか空気中にも魔力は存在する。生きるために必須であり、様々な用途に使われる。魔力がなければ、この世界は成り立たない。
後書き。
お昼頃にもう1話上げます。
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