第6話

「…はぁ…」

私は、学校からの帰り道で、ため息を吐いた。

結局、私の結婚相手は、見つからないままだった。


そんな中、リリーとスティーブが婚約する事になった。


嬉しい反面、私ひとりが取り残された気になった。

「こんにちは、ベラ」

「…ウィル」

彼の優しい笑顔を見ると、ほっとする。


私は彼に、最近の不満をぶちまけた。

「…そうか、きみが最後になっちゃうなんてねえ」

「そうよ。私は長女なのに、何で一番最後に結婚することになるのよ!」


ひょっとしたら、このまま結婚できない可能性だって、あるかもしれない。

「…そうなったら、修道院にでも入ろうかしら…」

それを聞いたウィルは、何故か焦った顔になった。


「ちょ、ちょっと待って。ベラは本気で尼さんになりたいの?」

「ううん。でも、ありえない話じゃないわよね?」

先日の候補者の言う通り、一度婚約破棄された令嬢が、まともな結婚をするのは難しかった。

「…私は何も悪い事をしていないのにね…」


ため息を吐く私を、ウィルはじっと見つめていた。


次の日、我が家に来客があった。

「あの、イザベラさんの求婚者の面接って、まだやってますか?」

レスター伯爵家の息子、ウィルが貴族の正装をして、訪ねてきたのだ。


「…ウィルったら、ようやく覚悟を決めたのね」

「やった~っ、ウィル兄さんだ~っ!」

妹達が大騒ぎする中、面接が行われた。


「…では、イザベラさんと結婚したい理由を話してください」

「はい。僕はイザベラとなら、幸せな家庭を築ける、と思ったからです」

ウィルは、スティーブの質問に、はきはきと答えていった。


私はそんな彼の様子を見ながら、心の中は疑問で一杯だった。

やっぱり彼も、レイヴンクロフト公爵家との、繋がりが欲しいのだろうか。

しかし、私の家族は、ウィルが結婚の申し込みをしてきたことに、全く驚いていないようだった。


「では、イザベラさんに、言っておきたい事はありますか?」

スティーブの質問に、ウィルは少しためらう様子を見せた。

彼は、深呼吸をすると、話し出した。


「…僕は、獣医として独り立ちするまでは、結婚しないと決めていました。妻に苦労をさせるだけですからね。でも、今回の面接騒ぎで、このままでは、ベラが結婚してしまう、と焦ったんです」

しかし、彼女の結婚相手は、決まらなかった。


「…正直、ほっとしました。その後すぐに、僕のお師匠さんが引退する事になって、僕に病院の経営権を譲ってくれたんです。これでベラにプロポーズできる、と思いました」

「…もし、その前にイザベラさんが、結婚してしまったら、どうするつもりだったんですか?」

スティーブの言い方には、棘が含まれていた。


ウィルは、頭をかいた。

「その時は、僕も候補者のひとりに名乗り出て、イザベラにプロポーズするつもりでした。…あれ、どうしたの、ベラ?」

私の頬は、嬉し涙で濡れていた。

「…そう思っているなら、さっさとプロポーズしなさいよっ…!…ホントに、バカなんだから…」


「…ご、ごめんね」

両親は、顔を見合わせると、頷き合った。

「さて、これでイザベラの結婚相手も決まったわね」

「あっという間に、全員嫁に行ってしまうんだなあ…」


お父様はため息を吐いたあとに、ぽつりと呟いた。

「…それにしても、プロポーズの時にバカって言われるのは、我が家の伝統なのかな?」


私と家族は、婚約の報告の為に、レスター伯爵の屋敷を訪れた。

「…そうか、やっぱりな」

おじ様はこの日が来ることを、予期していたようだった。

「むしろ遅すぎるくらいだぞ、ウィル。ご婦人を待たせすぎるのは、罪な事だぞ」


ウィルは困った顔で、頭をかいた。

「…ごめんね、ベラ」

「…ううん」

結局、私以外の人は、みんな気が付いていたのだ。


「…ひどいわ、私ひとりが知らなかったなんて」

文句を言う私に、家族の視線が集中した。

「…お姉様、本当に気が付いてなかったの?」

「あんなに仲がよかったら、普通は気が付くわよね」


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