1話 魔法が使えない俺と魔法剣士

村に行く道中は暇なので、アンジェとお喋りしていた。


っておいおい、そんなにくっ付いたら歩きにくいんだけど??


「私、小さい頃からこの村で育ったんですけど、最近魔物がここら辺多くて、村の人が戦えないから私が戦ってるんです」

「え?ほかに戦える人は?」


やばいじゃん、こんな女の子一人で戦わせるなんて、これから俺の行く村とかどうにかしてるんじゃないの?


「一応、一人いるんです。王都の元騎士の人で、いつも来てくれて倒してくれるんです」

「いるんだ、今日は偶々いないのね」

「はい、忙しい人みたいで、仕方ないです」


ふーん、元騎士ってなんか引っかかるなあ。


引退して老後の生活をエンジョイしてるってことなのね、どうでもいいけど。


「それにしても、たくやさんすごいですね!あのミノタウロスを一瞬で倒せるなんて!」

「そう?あれくらい普通だよ」

「ふ、普通じゃないですよ!あれは王都の騎士が10人で倒す魔物ですよ!」


へ―、そうなんだ。


なんか全然大したことなかったけど、強いって言ってるんだから、強いんだね。


「あ、もうすぐ村ですよ!」

「おー、村だ!」


見えてきた村は畑とか家畜とか色々あって、木造建築が並んでる。


あれが村かー、森暮らしで全然知らないや。


ん?門の前に男が立ってんな、待ち合わせか?


「あ、アンジェちゃん!心配したよ!怪我ないかい?」

「あ、バーグさん!このたくやさんが助けてくれたんです!」


「あ、ども」と軽く頭を下げて、目の前の鎧金髪おじさんに挨拶しとく。


「いやあありがとう!アンジェちゃんの魔法は強いんだけど、一人だと心配だったんだ!」

「たくやさんすごいんですよ!あのミノタウロスを一瞬で倒したんです!」

「え!?ミノタウロスを!?こんな子供がかい!?」


なんか驚いてるけど、そんなに強いの?全然手ごたえなかったじゃん。


てか、こいつ失礼な奴だな。


「ああ、申し遅れたね。俺はバーグ、もともと王都で騎士をしてたんだけど、今は村を魔物から守ってるんだ!是非ミノタウロスを倒した君と、手合わせさせてくれないか!」

「バーグさん!大人げないですよ!」


なにやらバーグとやらは俺と勝負をしたいらしい。


王都で騎士をしてたって言ってたな・・・


ということは、かなり強いんじゃないか!?


王都の騎士と一戦なんて、好奇心爆上げだね。


「俺はたくや、剣士やってます。勝負受けますよ」

「たくやさんまで!」


◇◆◇


そんなことで、俺は村の前で手合わせをすることになった。


バーグは剣を抜くと、炎を剣に纏わせてそれっぽい構え方を始めた。


・・・なんだその隙だらけな構えは、殺すのに3秒もかかんねえぞ。


「さあ!たくや君の魔法を見せてくれないか!」

「魔法すか?俺使えないっす」

「は?ふ、ハハハハハ!そんな訳ないだろう!じゃないとミノタウロスなんて倒せるわけないじゃないか!!」

「まじで使えないんで、あと普通にかかってきていいっすよ」


魔法が使えないだけで笑われるなんて、この世界の騎士ってのはそんな差別主義者の集まりなのか?


「いやー失敬、こんなに冗談で笑ったのは初めてだよ!でも、魔法を使わないと、怪我じゃすまなくなるからね!!」


と言ってバーグは剣を俺に突きだし、炎の渦を出してきた。


これ、バーベキューに便利そうだな。


「この”ファイヤートルネード”は、腕の立つ冒険者でも躱すのがやっとな魔法だ!魔法で対抗しないと君の命はないぞ!!」

「えー・・・」


こいつ俺の事殺そうとしてるじゃねえか。


魔法使えないってやつにこんなことしてくるなんて、この世界の人間は頭がおかしいんだな。


「んじゃ、いきますよー」


俺は剣を抜き、『縮地』で近づく。


そして、目の前に広がる炎の渦を一閃、魔法なんてなかったかのように消滅する。


「え、な!魔法が!君!どんな魔法を!!ぐっ、うおおおおお!!」

「たくやさん!すごいです!!」


なーにを言ってんだか、「魔法を斬った」だけだろうが。


向かってくる騎士は斬りかかってくるが、俺は相手の持ち手付近を思い切り弾き、剣を飛ばす。


で、体勢を崩した騎士を蹴り飛ばして地面に倒し、切っ先を顔に向ける。


よっわ・・・


「お、俺の負けだ・・・まさか何もできないなんて・・・」

「いや、強かったっす。ありがとうございました」

「あのバーグさんを一撃で・・・たくやさん強すぎです・・・」


そうか?このバーグって人が手を抜いたんだろ。


「なあ君、どんな魔法を使ったんだ!魔法は魔法じゃないと対抗できないはずだろ」


らしい。魔法への対抗策は魔法。剣で切れないし、物理は到底魔法には敵わない。


それがこの世界の常識だ。


だが、俺にはそんなもの関係ない。


「魔法?違うっすよ」

「え!じゃあどうやって魔法を!!」

「え?簡単な事っすよ。魔法を剣で斬ったんすよ」

「そ、そんなことできるわけ・・・」


そう、普通は出来ない。


だが、俺には出来る。


「出来るっすよ、だって俺」


何故なら俺は


「魔法を殺す、『魔殺の剣士』っすから」










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