非日常ノ始マリ、唯其レダケノ話。
「先ず、戦争についてちょっと説明するな。俺達がやってるのはここの私有地の陣取り合戦的なやつ。陣地には旗を立てる。」
そうして俺の目の前に青色の旗をかざす。窓の外を見ると川を挟んで手前側には青、奥には赤の旗があるのが見えた。
「んで、これが武器。最初ならハンドガンぐらいが丁度良いだろ」
薫先輩から銃が投げられた──本物だ。そのずっしりとした黒い物体は俺の手に何故かすっかり馴染んでいた。持ったことなんて無いのに。
「ソレ、ゴム弾だから。まぁ人を殺すことは無いでしょ。」
《御伽戦争学園校則其ノ二》人ハ殺サナイコト。
当たり前だと思うだろう。だが、ここに殺人を犯してはいけないという考えが元々存在しなかった様に校則の一つに当然の如く書いてあった。それがすこし、怖かった。
やはりこの学園は、少し、否、結構可笑しい。
「まぁ今はとりあえずこんな所。何か質問ある?」
「あの……個人的な質問なんですが、よろしいですか、」
「何だ?良いぞ。」
他の事が気になりすぎるが、それよりもずっと前から気になったことをふと思い出して聞いてみることにした。
薫先輩はいろんな武器を丁寧に拭きながら俺の話を静かに聞いていた。耳の薔薇のピアスが夕焼けに照らされていた。
「あの、鏡楓さんって知ってますか」
薫先輩は、その言葉に目を見開いていた。武器を拭いている手が止まっていた。
「飛鳥お前、楓知ってるのか。」
「う、はい。入学式で、席が隣で。」
「そうなのか。俺、楓の兄なんだよ。楓はどこ行ったんだ?最初集まった時、顔が見えなかったから心配してたんだ。」
「楓さんは……REDに行きました。」
再び目を少し見開いた後、元の顔に戻って
「そっか…ありがとな。」
そう云って微笑みかけてくれた。だけど、今日の昼に会った楓さんの笑顔と何処か似ている気がした。
夕焼けが部屋全体を朱く照らしていて空気はどこか重たかった。
────その時。ガラスが震える程の轟音が外で鳴り響く。廊下からドタドタと大きな足音が聞こえてき、部屋の扉が慌ただしく開かれる。
「薫!やばい、REDの“幹部”がこっち襲ってきてるよ!」
「了解。
「はいはい」
そうして薫さんは手元の武器を持って窓を開け──下へ飛び下りた。俺は驚いて、動きを止めてしまった。そんな俺の手を半強制的に引き、詩と云われた人は建物への奥へと駆けていった。
未だにびっくりしている俺に優しく声をかけてくれた。
「アタシ、
「あ、う、はい。だ、大丈夫、です。だと思います」
「あはは、動揺しすぎだって!」
北原先輩は笑って俺の動揺と緊張を吹き飛ばしてくれているみたいだ。そのお陰で俺の肩に入った力は少しずつ抜けていった。
だけど、その力は元に戻ることになる。だって知らない女性と、手を!手を握っているのだ。場違いだけれど、やっぱり緊張してしまう。顔に熱が集まってて、多分俺の顔は真っ赤だ。
「なんだ、緊張してんのか?だぁいじょうぶだって!」
「あのぉ、いやぁ……」
大きな声で笑う北原先輩。でもセンパイ。俺はそれどころではありません……
「着いたよ~」
何かの部屋の扉前に立った。そうして豪快に扉を開けた。今さっきの扉の開け方は緊急だったからわざと乱雑にしたものだとばかり思っていたが、何時ものことみたいだ。
「やぁ一年坊ども~。ほんとはこんな事で一年坊ども集めさせたくなかったけど、許してね。緊急なもんで。」
部屋に入ると五人いた。最初に集まった時に見てたんだろうけど、あの時緊張しすぎて覚えてないんだよな。それにしても……個性的なメンバーが多すぎる。
「はいセンパイ!一体何が起きてるんですか!!」
青いブレスレットを着けた短髪の男子が手を綺麗に右手を挙げて質問していた。声がでかい。
「んーとね、思ったより酷い戦闘。」
今さっきまで笑顔だった北原先輩が一気に表情を失った。それだけで“幹部”と呼ばれた人が危ない人なのかが分かった。
「成る程、全く分かりません!!」
純粋な目でそんなことを云っている。俺の同期、駄目かも知れない。コイツ、この戦いで生き残れるのやら。
御伽戦争学園 @sirasu_k
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