第26話 あと少しであの手を掴むことが

死体が幾千と転がる平野。

見渡す限り、もはや敵兵の姿はなかった。


(-----もう、いない……。

兄様の元へ行ける……!)


ユイは馬上から、生き残った配下たちへ声を張り上げた。


「ユイ部隊!

セイカ将軍のもとへ戻るぞ!」


「はっ!」


配下を率いて先頭を駆け抜けるユイの姿は、

地獄と化した戦場の中にあってなお、あまりにも美しかった。


(やっと会える……兄様。

今夜は祝杯の宴だな……。

早く、二人きりになりたい……)


愛する人のもとへ向かう-----

その思いだけで胸が高鳴る。


凛々しく、美しい兄の姿を思い浮かべるだけで、

身体の奥から喜びがこみ上げてくる。


しかし-----

早脚で駆けていたユイの馬脚が、次第に緩んだ。


(兄様は……この辺りのはず……

……姿が、見えない……)


ユイの瞳に映ったのは、

セイカ部隊の側近たちが、なぜか皆、地に伏して泣いている姿だった。


(……泣いて……いる……?

なぜ……?)


愛する人に会えるはずの高揚は、

一瞬にして、冷たい不安へと変わる。


「ユイ様……

セイカ様の部隊の様子が……」


側近の声が、震えていた。


(大丈夫だ……!

なんでもない……!)


そう自分に言い聞かせ、

ユイは再び馬脚を早めた。


早めた-----はずだった。


だが、近づくにつれ、

その光景は、否応なくはっきりと視界に入り込んでくる。


ユイは、心の臓が引き裂かれるような感覚を覚えた。


(早く……!

早く……!

早く……!)


-----そして、この先に待つ光景が、

あの戦場の慟哭へと繋がっていく。

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