第22話 カンジュ王からの命令

「殿!

王より急ぎの伝達が参りました。

ジーファとの激戦地へ、直ちに出陣せよとのことです!」


「わかった。

全員、早急に支度せよ!」


「はっ!」


命が下ると同時に、城内は一気に慌ただしさを帯びた。

セイカとユイの私室でも、出陣の準備が進められていた。


二人は黙々と鎧を纏う。


「兄様……どうか、俺の傍を離れないでね」


不安を隠しきれない声で、ユイが言う。

その様子に、セイカは一度手を止め、ユイを静かに抱き寄せた。

そして頬に触れ、優しく撫でながら語りかける。


「よいか、ユイ。

本当は、お前を戦場へ連れて行きたくはない。

だが……お前のことだ。止めても聞かぬだろう」


ユイは小さく息を呑む。


「だから約束しろ。

決して、無理だけはするな。

何があっても、生きて帰ることを最優先にしろ。いいな?」


ユイは黙って、強く頷いた。


「では、参るぞ」


「は!」


凛とした声で命じるセイカの後に、ユイが続く。

その姿は、細身ながらも凛々しく、

一見すれば女武将と見間違うほどであった。


やがて全員が騎馬に跨る。


城内に残る者たちは、

城主と兵たちの無事な帰還を、ただ祈るしかなかった。


「セイカ軍ーー出陣!」


号令とともに、騎馬隊は一斉に地を蹴り、走り出す。


だがこの出陣は、

先の見合いによってカンジュ王の怒りを買ったセイカへの

明確な仕打ちでもあった。


向かう先は、

カンジュ軍が壊滅寸前に追い込まれている、

最も苛烈な激戦地-----ジーファ。


それは、

生きて帰れる保証など、どこにもない戦場だった。

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