第21話 見合いの席

見合いは、セイカ城の大広間で執り行われることとなった。

まだ主の姿は見えず、広間にはすでに多くの者が席に着いている。


最前列、中央に座るひとりの女-----彼女こそが、セイカの見合い相手であった。

確かに目を引く美貌の持ち主である。手入れの行き届いた黒髪は艶やかで、白い肌は透き通るように美しい。


だが、リーシとユイを知る者にとって、その美しさは決して比較するものではなかった。

絹のような髪、真珠のような肌‥あの母と子の面影を知る者ほど、そう感じずにはいられない。


「-----殿が参ります」


侍女の声が響き、広間の空気が一変した。

セイカが、ユイと家臣たちを伴って入ってくる。ユイは顔を衣で覆っていた。


「客人をお待たせしてしまい、申し訳ありません」


セイカはそう言って一礼する。


「私が城主、セイカでございます」


すると、見合い相手の側に控えていた男が、にこやかに口を開いた。


「いやいや、待たされるほどでもありませんでしたぞ。では‥こちらが、リラ様でございます。どうです、大変お美しいでしょう」


「セイカ様、初めてお目にかかります。リラと申します」


セイカは、じっとリラを見つめた。

その視線に、リラの頬がわずかに紅潮する。


セイカが淡々と言う


「リラ様ほどの方が、なぜ私のような男を名指しで望まれたのか……正直、不思議でなりません」


「あ、えっと……それは……」


言葉に詰まるリラを、セイカは静かに制した。


「率直に申し上げます。私には、すでに心に決めている者がおります」


場が、ざわりと揺れた。


「な、なんじゃと! そんな話は聞いておらんぞ!」


「はい。その者は、公にはできない相手なのです」


「……公にできぬ相手と、結婚などできるのですか?」


リラが、戸惑いながら問いかける。


「結婚という形は取れずとも、私は死ぬまで、その者と添い遂げます」


その言葉に、それまで静かだったリラが、声を荒げた。


「私の方は……初対面と申しましたが、実は何度かお姿をお見かけしております。ずっと、恋心を抱いておりました。そんな曖昧な方が相手では、簡単に引き下がれません」


ユイも家臣たちも、ただ黙って成り行きを見守っていた。


しばしの沈黙ののち、セイカは静かに口を開いた。


「……私の愛する者は、ここにおります。ユイ、こちらへ来なさい」


衣で顔を覆った人物が、セイカの隣に座る。

広間の誰もが、怪訝そうにその姿を見つめた。


「ユイ、衣を外して」


「はい」


ユイは、ゆっくりと衣を外した。


「な……なんと……! これは、カンレイの宝石では……!

いや、そんなはずはない。とうの昔に亡くなっておるはず……だが……しかし、一度だけ見た事があるが誠にそっくりじゃ‥」


「あはは、それも無理はありません。カンレイの宝石リーシの子ですから」


「では……セイカ様の妹君か?

……待て、妹と愛し合っているというのか! なんたる不潔な!」


「いいえ。ユイは、私の弟です」


(……!)

(……!)


「なんという不潔な一族だ! リラ、帰るぞ!」


貴族の男は怒りを露わにして立ち上がった。

だが、立ち去る間際、リラはユイの前で足を止めた。


「……そうですか。あなたが、セイカ様の愛する方なのですね。

兄弟で、男同士……理解はできません。けれど‥」


リラは、まっすぐにユイを見つめた。


「女として、あなたの美しさには到底敵いません。

このような方が傍にいれば、他の女に目が向かぬのも……無理はありませんね」


そう言い残し、貴族一行は城を後にした。


広間に残された家臣たちは、誰もが涙を浮かべていた。

特に、側近たちは嗚咽をこらえることもできなかった。


-----我が主は、やはり男の中の男。

ユイのためなら、身を切ることさえ厭わぬ。


そうして、セイカへの忠誠と敬愛は、さらに深まった。


「ユイ」


「兄様」


「これで、もうどこへ行っても隠す必要はない」


その時のセイカの笑みは、あまりにも優しく-----

ユイは思った。

これほどまでに愛されている自分は、この世で一番幸せなのだと。


「いやあ、これで俺たちも変な気を使わなくていいですね!」


「これからは堂々と、城内ではご夫婦でいてください!」


側近達は高揚していた


「皆……本当にありがとう」


セイカとユイは、深く頭を下げた。


「さあ!今日は宴だ!」

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