第6話 幸福の庭と静かな嵐の予感

ケイシとリーシの結婚から五年後、長兄セイカが誕生した。

さらにその五年後、次男ユイが生まれ、城には笑い声と温もりが満ちていた。


この十年間、各国の武将たちが幾度となくリーシをさらおうと試みたが、ことごとくケイシの軍勢によって阻まれ、リーシは常に安全であった。


結婚から十年が経ち、二人の子をもうけた今も、リーシの美貌は衰えるどころか、かえって恐ろしいほどに輝きを増していた。

そしてケイシのリーシへの愛も、変わらぬどころか、彼女がそばにいなければ生きていけないほど深まっていた。


「父様ー、父様ー!」


息を切らせながら長兄セイカが駆け寄る。


「どうした?」


「城下の者たちが……母様は化け物だって言ってました!母様は……化け物ですか?」


利発な子セイカの瞳は、純真な好奇心で輝いている。

ケイシは優しく笑い、肩に手を置いた。


「ハハッ!それはな……お前の母様があまりにも美しすぎるがゆえに、恐れ慄いた者たちが言ったことだ。要するに、お前の母様はカンレイ一の美女ということだ!どうだ、嬉しいだろ?」


セイカは父とそっくりな瞳を潤ませて頷く。


「はい!父様!母様ほど美しい人は、この世に他にはいません!」


ケイシは笑みを浮かべながらセイカを肩車し、城の庭を歩いた。

その先には、まだ小さなユイを抱くリーシがいた。

その瞬間、家族四人は、かけがえのない幸福の中に包まれていた。一番、幸せな時だった。


だが、その数日後、ケイシは緊急の戦に赴くことになる。

この時、城で何が起こるか、誰もまだ知らなかった-----

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る