第5話 誓い
レンニーの広間にて、ケイシとリーシの見合いが執り行われた。
名目は「見合い」ではあるが、形式はほとんど婚約の儀に近く、互いの杯に酒を注ぎ、それを飲み干すことで婚約が確約されるという、レンニーの古いしきたりだった。
その儀式の後、二人は別室に移され、しばし互いを知る時間を与えられた。
直接言葉を交わすのは、この時が初めてであった。
「ケイシ様、なにかお飲みになりますか?」
リーシの声には、かすかな震えが混ざっていた。
自分には何も決める権利がなく、男たちの言うがままに生きるしかない‥そのことを彼女は理解していた。
「何もいらない」
ケイシは静かに答えた。
背を向けてお茶を淹れようとしたリーシに、ケイシはもう一度言った。
「こっちを見てほしい」
慌てて振り返ったリーシの目の前には、真っ直ぐに見据えるケイシの瞳があった。
その強い眼差しに、リーシは思わず一歩も動けなくなる。
ケイシはゆっくりと歩み寄り、リーシを見つめながら告げた。
「そなたに心を奪われた男たちは数多い。だが、俺は違う。他の誰とも同じではない」
ケイシは優しく頬に手を添え、絹のような黒髪を撫でる。
「この美しい顔がシワクチャになり、この艶やかな髪が白くなっても、俺の愛は変わらぬ。今も身を焦がすほど愛している。だが、二十年、三十年先のそなたを、今よりもさらに愛している」
リーシは呆然とし、何を言われているのか理解できなかった。
しかしケイシは続ける。
「年老いていくそなたを傍で見ていたい。共に年を重ねていきたい」
リーシは、自分の頬を伝う涙に気づく。
(ザッハ様も優しくしてくださった……でも、この方は……何かが違う)
溢れる涙をケイシはそっと拭い、そのまま抱き寄せた。
「俺とそなたは、運命だった。シワクチャになり、白髪になっても、今よりももっと愛すると断言できる。よいか、俺の妻となってくれるな?」
結婚は形式上すでに決まっていたが、ケイシはリーシの口から、その言葉を聞きたかった。
「はい」
リーシは初めて、自分が本当の意味で女として愛されていることを知った。
こうして、ケイシとリーシの真実の愛の物語は始まった。
そしてそれは、後に生まれる愛する我が子たちへと、静かに受け継がれていくこととなる。
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