第7話悪役が己の正義を示す時が来たそうです

馬車に揺られて1日と半日は経っただろうか?

途中で村があればそこで休憩をする事が出来たので

あまり苦ではなかった。

だが…………兎に角騎士団長がうるさくて仕方ない。こいつらは俺が悪い奴って事を忘れてるのか?


「坊っちゃん、そろそろ休憩しますか?

ずっと馬車が揺れているので気分が悪くなる可能性もありますから。」

ポルガフ!お前はずっといい奴だな!

俺もお前の様になりたかったよ。

でも、この世界での俺の役割は既に決まってる。

それでも、ゲームと違ってポルガフが生きていて

良かった。ポルガフには死んでほしくないしずっと

アミュラを守ってほしい。

ゲームでは守った結果死んでしまったが

今回は違う、俺はポルガフを殺す前に殺される。


「そう……だな。馬車を止めろ!」

俺が声を出して言うと馬車は直ぐに止まり騎士達が

馬から降りて周りに危険がないかを確認して行く。

直ぐに馬車から降りてポルガフも騎士団長の元に

向かった、何か用事があるのだろうか?

それにしても流石はプロだな、手際が良い。

騎士団長は緩んでると言っていたが仕事は完璧に

見えるな、それにキモール領の騎士団は全員が

かなり優秀な方だしな。少し体が鈍ったくらいでは

他の領の騎士団にも遅れは取らないだろう。


「カスラ様、どうぞ、昼食でございます!」

そう言ってアミュラが温かいスープを持って来てくれた。俺は少し会釈した後それを受け取って口に

運ぶ。美味しい、外でもこれ程美味しい物が

食べられるなら遠出も悪くないな。

そうして外を眺めながら周りを見渡すと

ずっと兵士達は周りをキョロキョロしながら

立っている。勿論騎士団長もだ。


「……………アミュラ、スープはまだあるのか?」

スープが一杯しかない訳はないが量を確認しないと

行動出来ない。外は風があって少し寒いしな。


「はい!おかわりしてくれるんですか?!」

俺が聞いたら目をキラキラ輝かせて手を差し出して

来る。おかわりしてくれるんですかって何だ?

作って貰ったのにそんな態度を取る様な奴に見えるか?見えますよね、分かってます。

カスラは絶対作られるのが当たり前だと思ってる。

何なら勝手に食べ物が料理になって目の前に出て来るとか思ってそう。


「違う………兵士達にも配ってやれ。

外は寒いからな、温かい物を食べた方が良い。

後………勘違いはしてないだろうがこれは俺の為だからな。これでお腹が空いてて力が出なかったから

俺を守れなかったとか言われたくないからだ。」


「そうなんですね!じゃあその様に伝えて来ますね!」

アミュラの奴、ずっと人の顔見てニヤニヤしてたな?まぁ、それは良いとして兵士の話だが

鎧を纏っているとは言えそこまで温かくないだろう。それにアミュラの料理は美味しいからな、食べれば皆元気になってくれる筈だ。

侯爵の子供の護衛なんて面倒で仕方ない筈だ。

しかも悪い噂が絶えない俺の護衛なんて精神的にも

疲労が凄いだろうしな。


「カスラ様は優しいですね?私はそんな貴族は

一度も見た事がありませんよ?

それにキモール家の罪の告白の紙を王都に

送った事も……です。」

俺が黙って楽しそうに話している騎士達の様子を

眺めていると前に座っていたアイアノが突然話かけ

て来た。


「アミュラか?アミュラ何だな?

あいつは口が軽いからな。いつも黙れと注意して

いるのに無駄な話ばかりするし部屋に入るなと言っても部屋に入って来るからな。

あいつは俺の言う事を聞かないから俺も困っているんだ」


「無断で部屋に入るのは貴族じゃなくてもアウト

ではないです?………でも、カスラ様の権限が

あれば直ぐにクビに出来ますよね?

無断で部屋に入ったなら首を斬られてもお咎めは

ないかも知れませんよ?」

確かにクビにするのは簡単だろう。

だけど、この先に必ずアミュラは必要になって来る。まだ、精神が壊れていないこの世界のアミュラは主人公の力になるかも知れない、そうじゃなくてもキモール領には絶対に必要な人材だ。

それで言えばポルガフは絶対に必要何だけど。


「……………………」


「私には答える事は出来ませんか?

私の事何て名前しか知りませんもんね?

そんな正体が謎の女には言えませんか?」

俺の事をその【黄金】に光った目でこちらを探るように視線を合わせてくる。


「………………彼女は………あの領には必要だ。

ポルガフの力も必要だがキモール領を豊かに

するにはアミュラの力も必要になるだろう。

俺はそう思っているんだよ。

だから、大抵の事では何もしない。」


「その中に貴方はやはり居ないのですね。」

ボソッと何か言ったのは聞こえたが小さ過ぎて

聞き取れなかった。


「すまない、聞こえなかった。」


「何でもありません。」

何かは言っていた様な気がしたんだが気のせいだったか?」


アイアノと話していた時だった。


外から大声が聞こえた。騎士団長の声だ。

だが、いつもの馬鹿そうな声ではない。

真剣な声だった。


「魔物の大群だあぁぁぁぁぁ!」

魔物の大群。スタンピード発生。

これは確かにゲームのイベントにあった。

だが、もう少し先の筈だ。

じゃあスタンピードではないのか?

この、イベントのターゲットは………………………

第二王女アルミエラ・キュルネスア。

バッドエンドの場合魔物の大群に少しずつ体を

削られていく。あれはまじで直視出来ないくらい

悲惨な光景だった。鬱エンドなら魔物の孕み袋に

されて魔物の子供を何十回も産む事になる。

そして、主人公が見つけた時にはもう既に

壊れていた。そして、助けた翌日に心臓にナイフを

刺して死ぬ。

このイベント、魔物だけが原因ではない。

スタンピードを裏で操っている奴がいる。

だけど、このイベントは学園編が始まって

主人公と仲良くなって半年経ってから発生する

イベントなのだ。まだ全然先のイベントがここで

発生する訳がない。

だが……心当たりがないと言う訳ではないのだ。

俺が居るからだ、俺の行動は悪役をやっているとは

言え既に原作とは乖離している。

原作の俺は王都に行く事はないからだ。

だが……王女が居ないのにイベントは起きるのか?

もしもアミュラが無事な事が問題ならば

アミュラがターゲットなのか?


考えている今も外では魔物と人の声がする。

悲鳴が聞こえる。

正面を見れば真剣な顔でアイアノが席を立ち外に出ようとした。


「何をしている、まさか戦うのか?

それなら止めはしないがな。」

俺が笑みを浮かべてそう言えばアイアノは頷いて

外に出た。

俺はどうすれば良い。

アミュラはどうなった?外に居るのは間違いないが

戦えるのか?他の兵士達は?騎士団長はどうなった?俺が外に出ても足を引っ張るだけだ。

それに俺が悪役ならばここで見捨てるべきだ。

………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………本当にそうか?見捨てる。

俺が悪役をやって来た理由は何だ?

前世で俺が一番愛していたゲーム。

そして大好きなキャラ達。

俺はそんな大好きなキャラ達があんな終わり方をするのが許せなかったんじゃないのか?

だから、主人公達に断罪される道を自分で選んだんだろ?それで?ここで兵士やアミュラやポルガフが

死んだらどうなる?意味ないんじゃないのか?

俺が行ってどうなるだと?

そんなのどうだって良いって一番最初に言ったよな。俺の命の全てを大好きなキャラ達の為にかける。恐怖何て捨てろ!

カスラ・キモール!お前は従者達に同じ様な

恐怖を味わせたんだろ!今更お前自身が!俺自身が

恐怖をするなよ?



「俺は悪役だ。」

でも、大好きなキャラ達を見捨てる悪役には

なってやらない。何の為に素振りをして来た?

この時の為だ!

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