第5話悪役が聖人になった?sideアミュラ

私は今までキモール家に良い印象を持っていませんでした。あそこで働く人は何かしらの不満を絶対に持つ事になる筈です。貴族らしいと言えばらしいですが度が過ぎている事も珍しくないですしそれを

キモール家は全く悪いとすら思っていません。

私達の様な貴族ではない人達を見下しゴミとしか

思って居ない最低最悪な貴族、それがキモール家

への評価でした。

この評価が覆る事は一生無いと思ってました。

そう……思ってました、けれど現実は違いました。

簡単に私の中でのキモール家の印象は変わりました。いいえ………カスラ様の印象だけが大幅に

変わりました。人が代わったかの様に以前はメイドや執事に何でもしていい所有物みたいな扱いだったのですが今は私達を人間として扱い誰にでも気遣いをしてくれる様になりました。

それ所か大抵の事では怒らなくなりました。

あの時もそうでした。


「アミュラ、ポルガフ、それに………皆。

すまなかった。」

この時からカスラ様の何かが変わっていたのかも

知れません、この時初めて私達に優しそうで辛そうな視線を向けて来たのです。

私が熱いお茶をかけた時は急に涙を流して

頭を下げて来た、あの時は混乱し過ぎて

何が起こってるのか把握すら出来ませんでしたが

今思えばあの時のカスラ様は本気で悲しんでいました。本気の涙でした、本気で後悔していました。

あれが彼の意思だったのかは定かではないけれど

間違いなく彼の身に何かが起きたと断言出来ます。

でも、悪い物ではない気がするのです。

これは私の勘なので本当に良い物かは分からない

ですがあの時の彼は本当に何かを悔やんでいた。

そして怒っていた。彼が私達に怒りの視線を向けたのだと一瞬思ってしまいましたがそうではないと

直ぐに理解出来ました。何故なら彼が見ていたのは

虚空だったのですから、ですがそこには本当に

誰かが居るのかと錯覚してしまう程憎しみの込められた視線を送り続けていました。

彼に違和感を感じたのは私だけではありませんでした。ポルガフさんも彼がどうして急に涙を流した

のか気になったみたいです。

だから、徹底的に二人で彼を探る事にしました。まず、驚いたのは彼が直ぐに自ら自分の家の罪を紙に細かく書いて王様に送った事でした。

家族の事だ、下手をすれば自分の首まで飛ぶ事に

なります。それでも送った。

そして、堂々と言ったのです。


「では、誰が代わりに罪を償うのだ?

あいつらのせいで不幸になってしまった人間が

報われないだろ?あいつらだけの命で釣り合いが

取れる訳ないだろ。俺の命をかけても釣り合いは

取れないかも知れないがそれでもこれは俺達が

背負わなきゃいけない罪だ。

それにさ、ここでキモールの血を絶やした方がいい気もするんだよね。俺達の血はとっくに薄汚れている、次に産まれてくる子供が可哀想だ。」そう言ったのです。あの発言は冗談で済ませられません。

あの発言は普通の人が簡単に吐ける言葉じゃありません。10歳の子供があんな覚悟を決めて、家族の罪を全て背負うつもり何です、そして、自分達の罪を償おうとしています。

本当にカスラ様はあの方達の家族なのかと疑問に

思いました、今の彼は別人です。

それからもカスラ様をみていましたが

貴族とは思えないくらい周りを気にかけていらっしゃる。地下牢に閉じ込められていた子供達の中で

現在家族が居る子達を探し出しその子達の両親に

接触しました、何度殴られても誠心誠意頭を

下げて謝る姿は貴族からしたら嘲笑される行為かも知れません。ですが、分かる人には分かるんです。

どれだけ暴言を吐かれても殴られても謝り続ける

行為がどれだけ大変なのかを。

そして、この領地の為に寝る事もなく机と

にらめっこを一日中している。

それがどうしても心配でそれはポルガフさんも

同じ気持ちでした。私達は既に何度も助けられている。普通なら首が飛ぶか運が良くても屋敷を追い出される様なミスをしてしまったメイドや執事達を

私やポルガフさんは知っています。

その事をカスラ様に伝えてもその報告を無視するのです、ですがそれは嫌がらせではありませんでした。次の日何事もなかった様にミスをした子達は

仕事をしていました。

何か言われましたかと聞けば俺はそんな話聞いていないぞと怒鳴られたと聞いた。

思わず吹き出しそうになる。

流石にその理由は無理があると思いますよ?

既にメイドや執事の中でも本当に悪い人何だろうかと噂をされる様になりました。


そして、食堂での事件が起きました。

子供がカスラ様の服を引っ張ったんです。

ですがカスラ様は驚くべき行動をされました。

女の子に向かってこう言いました。


「そうか、お腹が空いてるか。

それを良くも俺の前で言えたな?【元】奴隷の分際で。食欲が失せた。おい、そこの子供!

もうこの飯はお前の物だ。好きにしろ」

一見すれば只怒鳴っている様にしか思えませんが

これまでご飯を人にあげる事何て一度もありませんでした。ゴミ箱に捨てるか人に投げるかのどちらかでした。それに私には分かりました。

扉を出る直前喜んだ子供を見て安心した表情を

していたのを。カスラ様は本当に変わられた。

それは嬉しい事何だと思いますが彼は自分の命を

何とも思ってません、簡単に命を投げ出してしまう。


「はぁ…………カスラ様は自分の命をもっと

大事にするべきです。でも、どうせ他人を優先

してしまうのでしょう……だから私達が居ます。」

私には出来るだけ無理をさせないように生活の

サポートをする事しか出来ませんがそれでも私は

貴方様に生きてほしいと思ってしまうんです。


廊下に出るとひそひそと話し声が聞こえてきました。


「カスラ様が王様に呼ばれたってよ」

王様からの呼び出し。キモール家の罪が公になるのですね。


「カスラ様、話を既に聞いているかも知れませんが

王都への呼び出しのお手紙が」

カスラ様の部屋をノックして私が一番聞きたい事を聞いてみました。


「本当に行かれるのですか?」

王都に行けば危険な事をするのは目に見えています。出来れば行ってほしくない、危険な事をしないでほしい。


「行くに決まってるだろ?決着を付ける」

そんな最後みたいな言い方をしないで下さいと

言えたら良いのですがこの人に何を言っても駄目だと分かってしまいます。

だから、私は私の仕事をするだけです。

貴方は居なくてはならない存在です。

貴方だけがこの領地を豊かに出来る…………そんな

気がするのです。


「明日直ぐに出発する。連れて行く人間は

こちらで選ぶからお前達が気にする事はない。」

どうせ、一人で行くのでしょう?

分かってしまうんです、分かってしまって

はい、行ってらっしゃい何て言える訳がないです!


「そうはさせませんよ?人はこちらで選びます。

これは絶対ですから。」

領主の息子にこんな態度を取れば首を切られても

文句は言えないかも知れませんがそれでもこの人が

傷付くのは許せません。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る