第19話 俺がデートをしている時、るびぃは?
きゅぴとデートをすることになったことで、助六の件が記憶が抜け落ちていた。
「それなんだが、なんて言えばいいか……」
どうにかしたい気持ちはあるし、何とかしないといけないとわかっているが、ここで話しをして、きゅぴにことの経緯を聞かせるわけにはいかない。
助六にも悪いし、きゅぴにも悪い……何とかるびぃにわかって貰わないと。
「有助くんのことですが、私に任せて貰っていいですか?」
「ここではちょっと言え……え、どゆこと?」
何とか起きた事実を言うまいと考えていたのに、るびぃが任せて欲しいだと?
「何となくですが、にーさんは怒らせたと言っていましたが、有助くんがどうしてあんな顔をしているのかわかりましたので、おそらく……きゅぴさんが関係していますね?」
怒っているのにあんな顔? いや、それよりもだ。
「えっ!? わかったの!?」
俺言ってないよね? たまらずきゅぴの顔色を窺うが、ちょうどお弁当を食べていたのか、お箸を咥えてキョトンとしている。
「?」
……気付いていない?
「私だから気付いたと言っても過言ではないと思いますよ、ふふんっ」
らしくなく嬉しそうにるびぃは自慢してきた。
「例えばですが、にーさんがきゅぴさんをこちら側に座らせたのに、一向に有助くんについて話そうとしなかったり……」
……あ、
「私にだけ有助くんのことを話そうとしたりしていましたからね……」
そう言いながら、るびぃは隣のきゅぴを見る。
「??」
俺の言動で、きゅぴには聞かれたくない話しだと理解したようだ。
「有助くんの性格を考えた上で、二人に起きた大きな変化を考えると、何となくですがわかりました。ですので、私に任せて欲しいです」
力強くそう言うるびぃだが、本当に任せて良いのだろうか? 妹に任せて良いとか悪いとか以前に、俺が助六とちゃんと話さないと駄目な気がする。
「……いや、気持ちは嬉しいけど、怒らせたのは俺だからな。俺から話すのが筋だと思うし、るびぃに任せるのは兄として情けない気がする……」
「???」
よくわかっていないきゅぴが俺とるびぃの顔を何度も見ている。
「私も全容全てを理解しているわけではありませんが、にーさんは有助くんを怒らせるようなことをしてしまったと思っている――」
そうだ、俺は助六はきゅぴのことが好きだと言っていたのに……。
「――ようですが、まあ、えっと……うん、大丈夫です。私に任せてください。悪いようにしませんから、たぶん……」
「何が!? だいぶ端折ったし、それに最後不安だし!?」
慰めてくれるかと思ったら、フワッとした物言いがたぶんで終わってしまった。
妹とはいえ少し不安だ、やっぱり俺が……、
「ねぇねぇ二人とも何を話してるの? 蒼が助六を怒らせたの? だったらあたしにも教えてよ。それとも助六が怒っているのって、あた――」
「頼んだぞるびぃ! 助六を何とかしてくれ!」
これ以上は駄目だ、さすがのきゅぴも察してしまう。俺は気持ちとはウラハラに、力強くるびぃにお願いして、きゅぴの声をかき消すしかなかった。
「わかりました、私に任せてください」
対照的に自信満々なるびぃ、本当に大丈夫なんだろうか?
「……よくわかんないけど、よかったね、蒼!」
「ああ、うん、そだな……」
……どうなったとしても最後は俺が尻を拭けばいい、そう考えよう。
「では、私は有助くんと放課後に待ち合わせでもして話してみますので、こちらのことはご心配なく、きゅぴさんとのデートをよろしくお願いします」
「よ、よろしくね、蒼?」
「ああ……」
緊張しているきゅぴを聞き流しながら、俺は別のことが引っかかっていた。るびぃに助六のことを任せるのも百歩譲ってそれはいい、いいんだけど二人っきりか……。
「んぅ……」
「……難しい顔をしていますがどうしましたか、にーさん?」
きゅぴはお弁当に夢中の中、やっぱり妹、俺の気持ちの機微に気付いたみたいだ。
「いや、るびぃと助六が待ち合わせって、何か……」
「デートみたいですね」
俺の思ったことを、ズバリとるびぃは言い切った。
「にーさんが女の子と二人っきりなんですから、私だって別に男の子と二人っきりになっても、別におかしくないのではないですか?」
そう言うやるびぃは、ポケットから一枚のメモを取り出すと、何かを書き始めた。
「……る、るびぃ?」
らしくないるびぃの挑発的な言葉に、俺は内心驚いていた。
――助六を男の子なんて言ったことないくせに、どうゆうつもりだ?
――それによく考えれば、どうして助六のことを『私に任せて』なんて言ったんだ?
実はるびぃは助六が……いや、落ち着け俺、それはないはずだ。
今までだってるびぃと助六は何もなかったんだ。
……だから、大丈夫だ、大丈夫な筈なんだ。
「これを」
るびぃは書き終えると、メモをちぎって折りたたみ、無表情で渡してきた。俺の心情を知ってか知らずか、るびぃがいつも以上にドライに思えてしまう。
「有助くんに渡すのは無理でしょうから、わかりやすく机の中にでも入れておいてください。待ち合わせをする旨を書いていますので……どうしましたか?」
俺が中々受け取らないので、るびぃは不審に思ったようで、
「わ、わかったよ……」
渋々ながらも、俺は受け取るしかなかった。
「話しも終わりましたし残りのお弁当を食べましょう、にーさん」
うってかわって食べ始めるるびぃを盗み見つつ、俺も食べ始める。
「そうだな、もぐもぐ……」
美味しかったかーさんのお弁当だったが、ほとんど味はしなかった。
……るびぃに任せて、本当によかったんだろうか?
「???」
よくわかっていないきゅぴが小首を傾げる中、その気持ちは、お昼休みが終わるまで俺の中でくすぶっていた。
――――――。
放課後、それぞれが一日の終わりを感じている教室で、誰かはすぐに帰り、誰かはこれからどうするか相談する中、俺は廊下から助六の様子を密かに観察していた。
「……何だこれ?」
帰りの支度をしていた助六が、何とか隙をついて机の中に入れておいた、折りたたまれたるびぃのメモを手に取ったのが見えた。
……あーあ、見つけてしまったか。
心のどこかで、見つからないで欲しいと思っていた自分がいた。
あとは予定通り、るびぃと助六が二人っきりで会って……。
「どうしたの、蒼?」
きゅぴが俺の顔を覗き込んできた。俺が助六の様子を窺っていたように、きゅぴも俺を見ていたようだ。
「いや、何でもない……」
もうここにいても仕方がない。あとはるびぃに任せるだけだ。
「……何かツラそうだけど、やっぱり今日はやめとく?」
そんなに顔に出ていただろうか、気持ち的にとても楽しめないが、
「そういうわけにもいかないだろ?」
遠くで俺たち、正確にはきゅぴを見ている女子達を見て言った。さすがについては来ないと思うが、万が一があるし、このまま帰るわけにはいかないだろう。
……何より、俺ときゅぴが一緒に住んでいることがバレる方がマズい気がする。
「どこでバレたんだろうね、あはは……」
「お前のせいだろ、お前が見栄ったからだろ、はあ……」
――お昼休みが終わった後、きゅぴ信者の女子達がまたまた集まり、
『デートはもうしたのか?』
という話しになったことで、いつもの見栄っ張り衝動が出たきゅぴは、
『これからデートなの!!!』
と、鼻たっかだかに言ってしまっていた――。
「ご、ごめんなさい……ところで、見栄ったって何?」
「見栄を張ったの略」
「な、なるほど、つまりあたしのことだね、あはは……う、ごめんなさい……」
本人に反省がないのならムカついてもくるが、きゅぴは反省しているしな。彼女の見栄っ張りは、もう衝動のようなものと考える方がよさそうだ。
「いいよ、経験ないのがバレるのがよっぱど嫌なんだろ? だったらそんなお前とこれからも付き合っていくさ」
「つ、付き合っていくって、そんな、はわわわ……」
また想像が想像を呼んでしまったのか、きゅぴが手を振って慌てだした。
「ちょ、落ち着けって! 付き合うって別にそういう意味じゃないから!」
本格的に取り乱す前に、きゅぴの手を握って落ち着かせた。
「「「きゃあきゃあっ」」」
すると少し遠くから黄色い声が聞こえてきた。もう見なくてもわかる。こっちの声なんて聞こえていない筈だけど、イチャついているように見えるんだろうな。
……楽しそうでいいな、なんて意地が悪いことを考えてしまう。
「はっ!? あ、ごめんね……」
落ち着いたようなので、名残惜しそうなきゅぴの手を離す。
「大丈夫だ、それじゃあ……」
最後にチラッと助六を盗み見ると、何故か帰り支度をしたまま椅子に座っていた。おそらく、るびぃの手紙に『待っているように』でも、書かれていたのかも知れない。
「行こうか」
……だけど俺には、もう関係ない。
「うん、よろしくね」
楽しそうなきゅぴをつれて、そして俺は後ろ髪を引かれながらも、普段の帰り道とは反対方向の繁華街へと向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます