第8話 るびぃのキスした相手

 人通りがない中庭にある外れのベンチで、俺達はテーブルにお弁当を広げた。自然と注目を集めてしまうるびぃの人気を考えれば、ここが一番良い場所だ。


「いいなぁ、お前達の弁当は真珠さんの手作りだろ、いいなぁ~」


 中庭に備え付けられたテーブル越しに助六が、隣同士に座っている俺とるびぃの弁当を交互に見て、いつも通り羨ましがってきた。


「いただきます」


 それを無視して、るびぃは手を合わせるとお行儀良く食べ始めた。


「助六、お前だって手作りだろうが……」

「ばっかちげーよ! この際だから言わせて貰うが、ウチのかーちゃんが作った弁当よりも、真珠さんが作った弁当の方が百倍価値があるんだよ!」


 助六の弁当を見れば、いなり寿司と巻き寿司が入っている。


「価値は知らんが、いなりも巻き寿司もお前の好物だろ」

「そりゃ好きだけどよ、あむ、美味い……」


 助六はいなり寿司を頬張ると美味いと言ったが、その表情は不満顔だ。


「美味いならいいじゃねぇか」

「……美味いんだけど、違うんだよ。俺はただ真珠さんが作った、人妻の弁当が食べたいんだよ。ああ、人妻っていいよな……」

「安心しろ、お前の母親も人妻だ」

「ぶふっ!?」


 吹き出した助六だが間一髪で横を向いた。

 ……よかった、こいつを殴らずに済んだ。


「や、やめろよ! ウチのかーちゃんを人妻呼ばわりすんじゃねぇよ!」


 その言い方だと、俺がお前の母親を女として見ているみたいじゃねぇか。


「語弊が生まれるような言い方するんじゃねぇ! 俺の母親が人妻なら、お前の母親も当然人妻だって話しだよ!」

「違うね! 俺のかーちゃんと真珠さんは決定的に人妻として違うところがあるね!」

「なんだよそれ?」

「エロさだよ! 真珠さんのあのエロさはウチのかーちゃんにはない! エロさがあってこその人妻だ! 二度とウチのかーちゃんを人妻呼ばわりすんなよ!」


 ……こいつ何言ってんだ?


「もぐもぐ……」


 あとウチの妹はこんなこと聞かされてよく平気で食べられるな。俺たちの母親が幼なじみに人妻という女として見られてるってのに……。


「……わかったから落ち着け、ほら、だし巻き卵やるから」


 箸で卵焼きを掴んで渡すと、助六も箸でそれを受け取った。


「わかったなら良いんだよ。やったぜ、真珠さんの卵焼き、あむ、うめぇ……」


 だし巻き卵一つでこいつが静かになるのなら安いもんだ。


「人妻の味がする……」


 するわけねぇだろ……さっさと俺も食べよう。


「いただきま――」

「にーさん、訊きたいことがあるんですけど……」


 いただきますと同時に口に放り込もうとした、だし巻き卵を掴んだまま静止。


「……今じゃないと駄目か?」

「今じゃないと駄目です」


 可愛い妹の頼みなら仕方がない。だし巻き卵を元に戻して弁当を机に置いた。


「どした?」

「さっきのギャルの人とにーさんって席が隣同士なんですよね?」


 俺の席の場所を知っているるびぃなら当然わかるか。


「そうだけど、それがどうかしたか?」

「彼女と何かありましたか?」


『えっちしたことあるよね?』



 一瞬、きゅぴとのノートのやり取りで一番印象に残ったことが思い浮かんだが、


「な、ないよ、何も……」


 わりと平静を装って返事出来たと思う。

 ……いやあ危なかった危なかった、だし巻き卵を食べていてたら吹き出していたかもしれない。そうしたらるびぃに何かあったと思われてしまうからな、ふぅ……。


「今何で目線をそらしたんですか?」


 ………………。


「また目線をそらしました、何かあったでしょ?」


 ……ウチの妹、察しが良すぎないか?


「本当に何もないって……」

「……本当ですか?」


 相談されそうになったけど、何もなかった。途中、何かえっちがどうたら、せーきが薄いとかあったけど、結局は何もなかったし、嘘は言っていないはずだ。


「だから本当に――」

「くんくん……」


 否定を重ねようとしたら、不意にるびぃが俺の首筋に近づいてニオイを嗅いできた。


「ちょっ!? 何だよお前まで……」


 さっと体を逃がすと、るびぃは追いかけずにゆっくりと俺を見上げた。


「……お前まで?」

「あ……」


 咄嗟に出てしまった言葉に、るびぃの疑惑の目が確信の目に変わった。


「……もぐもぐ、何だ蒼、お前クサいのか?」

「クサくねぇよ、たぶん……」


 きゅぴに『せーき薄い』と言われたけど『せーきクサい』とは言われていない。だからたぶん大丈夫、俺はクサくない、俺は『せーきクサくない』筈だ。


「にーさん、逃げないでください」


 さっきよりも首筋に近づいたるびぃは、俺の首筋のニオイを嗅いできた。


「くんくん、くんくん……」


 こうなっては逃げるわけにはいかず、されるがままにしていると、さっきよりも深くニオイを嗅いだるびぃは、何かを考える素振りを見せながら顔を上げた。


「うん、ちゃんと薄い……」

「薄い? それはニオイがあまりしないってことかい、るびぃちゃん?」


 ……また薄いか。


 きゅぴにも言われたけど、最近の女子ってのはニオイを嗅いだだけで、せーきが薄いのがわかるとか、今時の女の子ってのは早熟……え? るびぃが?


「だよねるびぃちゃん? るびぃちゃん? おーいるびぃちゃーん無視しないでおくれ~」


 きゅぴが俺のせーきが薄いってわかったのは、ギャルってのはえっちなことに経験が豊富だから、そういうのがわかるのかなって無理矢理に納得したけど、

 ……正直それも納得してないけど! でも、ひとまずそれは置いといてだ!


「でも朝よりは濃くなってる、このままじゃにーさんが……」


 仮にそれが理由だとしたら、るびぃまで俺のせーきが薄いのがわかるってことは、まさか俺の妹は、すでにキス以上の経験があるってことに……な、ならないか……?


「ちょっと蒼、るびぃちゃんが俺の話しを聴いてくれないんだけど、お前から何とか言ってくれないか……蒼? お前もか……じゃあ、しょうがないなよな、くくく……」


 ……ひ、冷や汗が出てきた。


 小学生の時のキスなら、まだ小さい頃だしと何とか平静を保てていたが、るびぃが俺の知らないところで、実はキス以上の経験があるってなってくると、


「あ、ああ……」


 ……お、俺の自尊心が、兄としての自尊心が崩壊する!


「にーさん」

「るびぃが、俺の妹が、俺の知らないところで……」

「……何を言っているんですか?」


 るびぃの変わらない表情と声で冷静さを取り戻した。


「わ、悪い……」


 ……お、落ちつけ俺、まだ決まったわけじゃない筈だ……たぶん! おそらく!


「きゅぴさんには気をつけてください」

「まだだ、決まったわけじゃ……え?」


 きゅぴに気をつけろって、それってどういう意味……?


「おそらくですが、夕方になるにつれてにーさんのニオイは――」


 ――ピンポンパンポーン。


 チャイムとは違う音に、自然と俺たち兄妹は会話をやめて揃って顔を上げた。


「あー、宝生るびぃ、宝生るびぃ、あた……柊がお呼びだ……です。至急、職員室に来い……ください。至急、職員室に来てくだ――早く来い宝生るびぃ! 待ってるぞ!」


 ……もう放送事故だろ、相変わらずだな柊先生。


「はむ、もぐもぐ……ふう、ごちそうさまでした。柊先生を待たせるとめんどくさいことになりそうなので、私は先に行きますね」


 最後にだし巻き卵を一口食べたるびぃは、空になったお弁当を片付けていく。俺たちが話している間にすでに完食に近かったみたいだ。


「にーさん、今日も授業が終わったら迎えに行きますから、絶対に一人で帰ったりせずに待っていてくださいね、それじゃあ放課後に……」

「あ、ああ……」


 足早に去って行くるびぃ、その背中は段々と離れていく。


『きゅぴさんには気をつけてください』


 どうゆう意味で言ったのだろうか? あいつだって、きゅぴについての情報なんて転校生ぐらいしか知らないだろうに……。


「なあ助六、さっきのきゅぴに気をつけろってのはどうゆう意味だと思う?」

「これもうめぇ、さすが真珠さんだぁ……ぱくっ、もぐもぐ……」


 助六が弁当を食べていた、自分のではなく俺の弁当に箸を伸ばして。


「……あ? お前何食ってんだ!?」

「はむ、ぽぽぽぼぼぼぽんぽ、ぽぽぽぽぼぼぼぽお……ごくっ、だろうが!」

「何言っているか全然わかんねぇよ!」

「お前らが全然話しを聞いてくれないからだろうが!」


 何拗ねてんだこいつ、くそう……。


「だからってお前、俺の食べるもんがなくなる……ん?」


 弁当をよく見れば、元々入っていなかった巻き寿司といなり寿司が入っていた。


「それは安心してくれ、さすがに俺だけが一方的に食べるのは悪いかと思って、俺の巻き寿司といなりを入れて置いたから、俺のかーちゃんの作った寿司は美味いぞ」

「変な優しさ見せんなよ、怒りづれぇだろ、はあ……」


 食べちまったもんはしょうがない。それに代わりの食べ物も入っていることだし、とりあえず、いなり寿司を一口食べてみる。


「……うめぇじゃねぇか」


 酢飯加減がちょうどよくて美味い。


「そりゃかーちゃんのだからな、さすがに毎日三食は飽きるけどな、ぜめて朝と晩だけにして欲しいもんだ、もぐもぐ……」


 それも飽きそうな気がするけど……こっちの巻き寿司もうめぇ。

 お互いに弁当を食べることに集中していると、不意に、頬袋に餌を溜めるハムスターみたいな顔をした助六が、俺の横を見てからキョロキョロし始めた。


「もぐもぐ、ごく……あれ? いつの間にか、るびぃちゃんがいない!?」


 ……今?


 俺の弁当を食べるのとおかずを入れ替えるので必死で耳に入ってなかったんか?


「るびぃなら柊先生に呼ばれて先に食べ終わったぞ」

「そ、そうか、よかった、男と約束してていなくなったのかと思ったぜ……」


 るびぃがいないだけで男と食事って、こいつの想像力すげぇな。


「でもそりゃそうか、るびぃちゃんに彼氏なんているわけないか、お前がいる限り、るびぃちゃんは彼氏を作ろうとしないだろうしな……」


 厄介な兄貴がいるから、るびぃに彼氏が出来ないとでもいいたいのか、こいつ?


「……俺がいたらって何だよ、どうゆう意味だ?」

「べっつに~」


 ふて腐れたような表情で誤魔化してきた助六、一層にムカつく顔してんな。


「何だよ教えろよ」

「うるせぇよ、絶対鈍感シスコーンが……」


 そう吐き捨てると、つーん、と助六はそっぽを向いてしまった。


「そのシスコンの怪獣みたいな言い方やめろ!」


 たぶんこいつ、るびぃに彼氏が出来ないのは、シスコンの俺がいるからと言いたいらしい。シスコンは否定しないが、それでもこれだけは言っておかないと。


「俺は確かにシスコンだが、あいつに彼氏が出来たとしても、厄介兄貴になるつもりはないからな……確かにちょっと寂しいかもだけど、それはそれ、これはこれだよ」


 しかし、助六は露骨なため息を吐いた。


「ほんっとお前って絶対鈍感シスコーンだな……だけどまあ、俺はるびぃちゃんに彼氏が出来なかったら何でもいいわ。そのまま無害鈍感シスコーンでいてくれ」


 何だシスコーンが進化したのか? それとも退化か? 

 とりあえずバカにしているのは理解した。


「お前は今後も『るびぃちゃんを守り隊』の一員として、変な男が近づかないように見張っていてくれ、彼氏はもちろんだが、キスなんかも絶対にさせるなよ。るびぃちゃんにはまだそういうのは早いからな」

「そんなキモい隊に入った覚えねぇよ。それにるびぃに彼氏はまだだろうけど、キスなら小学生の時にしたって言っていたぞ」


 あ、こいつには言わない方がよかったか。


「………………………………………………は?」


 長い沈黙の後、カランカランとした何かが落ちる音がした。


「箸、落ちたぞ」


 呆然と固まる助六の手から箸が滑り落ちたようだ。さらに続けて持っていた弁当箱まで落としたが、どうやらもう食べ終わっていたようで、渇いた音だけが響いた。


「……………………」


 茫然自失――黒目が大きく死んだ魚の目をして、俺を見ているけど見ていない。心ここにあらずで感情を忘れたような雰囲気、今の助六にはピッタリな言葉だ。


 ――――――。


「もぐもぐ、ふう、ごちそうさまでしたっと……」


 どれぐらい経っただろうか、俺がちょうど食べ終えると、助六が急に動いた。 


「……う、嘘だよな?」

「うんいや」

「肯定か否定かわかりにくい相づちやめろ! こっちは理性を失わないように必死なんだよ! 本当なら笑えないし! 冗談なら笑えない! どっちだ!?」


 立ち上がると助六は、暑苦しい顔をグイグイと寄せてきた。


「両方笑えないんじゃねぇか……」

「うるせぇっ! いいからどっちか答えろ! たちの悪い冗談ならお前を殴る! キスが本当なら、俺は……るびぃちゃんを守れなかった罰で自分を殴る!」

「本当だぞ」


 殴られたくないので事実を言った。決して『るびぃを守れなかったから自分を殴る』とか意味わからんことを言っている助六が、自分を殴る姿が見たいわけじゃない。


「そ、そんな……るびぃちゃんが……」


 助六は自分を殴らずに、へなへなと揺れるように椅子に座って項垂れてしまった。

 ……だけどまあ、こいつの気持ちもわからんでもない。

 俺も衝撃だったけど、あくまで妹に先を越されたってだけだ。だけどこいつは、るびぃのことが好きだから、悲しみも合わせれば衝撃は確実に俺以上だろう。


 まあそれはそれとして、


「早く自分を殴れよ助六」


 シスコンの怪獣呼ばわりしたこいつには肉体にもダメージを与えないと。


「誰だよ……」


 助六は項垂れたまま、呪い殺すかのような低い声で言った。


「誰かは教えてくれなかった」

「……教えて、くれなかっただと?」


 助六の目に光りが灯った。


「だ、だったら、もしかしたらまだ嘘の可能性があるよな絶対!」


 何としてもるびぃの嘘だと思いたいらしい助六だが、


「お前の気持ちがわからんでもないが、あれはたぶん本当だぞ。それに誰かは教えてくれなかったけど、どうゆう理由でしたかは教えてくれたし」

「理由? お、教えろよ、それ……」


 怖いもの見たさというか、そんな雰囲気で助六は訊いてきた。

 ……そういえば、こいつも一応俺たちの幼なじみだったな。俺が知らないだけで、もしかしたらるびぃがキスした相手に心当たりがあるかもしれない。


「昔、めちゃくちゃモテていた男がいたらしくて、それにムカついてるびぃからその男にキスしたらしいんだけど……お前、誰のことを言っているかわかるか?」

「昔めちゃくちゃモテていた奴って………………あ」


 記憶を遡るような間を置いてから、助六は何かに気付いたような反応を見せると、


「……どした?」


 不意に俺を見た。


「そっか、そっかそっか……」


 何だその、呆れというか、残念なものを見るような目は。


「一応訊くんだけど、お前は心当たりあるか?」

「ない……え、お前は誰か心当たりあるのか?」

「ああ、一人だけ心当たりがあるぞ」

「だ、誰だよ……」


 まさかの返答に気付いたらそう言っていた。怖いもの見たさが働いたらしい。


「……お前がわからないのは当然だな。そいつは小学生の時かなりモテていた。同級生はもちろんだが、特に年上の大人の女性に可愛いと言われてモテていた」


 小学生の時?


「ちょっと待て。話しの腰を折るようで悪いけど、モテていた奴が小学生だとしたら、それって子供特有の可愛さというか、それはモテていたって言うのか?」

「そいつは異常だったんだよ! それに大人の女性に『可愛い可愛い』言われるだけならまだしも、同級生にまでモテていたんだ。それにそいつは――」


 凄い恨み節なんだが、そんなに恨む奴がこいつの人生にいるとは……たぶん、俺も知っていると思うんだけど、全然思いあたりがいないのはどうゆうことだ?


「――自分がモテている自覚がなかったんだ。あくまでも好かれているだけで、誰もそいつと深く関わろうとしなかったからな、それもムカつく……」

「モテている自覚がないって、そんなのあるのか?」

「はあ……」

 ため息を一度挟んでから、助六は話し始めた。


「後から気付いたことだが、大人の女性は相手が小学生だからな、可愛いって言うだけで、それ以上の関係にはなろうとしない、だって普通に犯罪だし……」


 ……た、確かに。


「あと同級生は遠巻きに見ている奴が多かったな、ほら、小学生の時って異性と喋るのが恥ずかしいとかあるだろ、たぶんそんな感じだ……」


 ああ、なるほど。


「だがある時、急にそいつはモテなくなった」

「何で?」

「俺が知るわけないだろ」


 そりゃそうか。


「……知るわけなかったんだが、るびぃちゃんがキスした理由を聞いた今、もしかしたらそいつがモテなくなったのは、るびぃちゃんが関係しているのかもな……」

「それって……」


『すっっっごいモテていたのがムカついたので、私が初めてを奪ってやりました!』


 キスをしてモテなくさせる――そんなことが出来るかは不明だが、るびぃがキスした理由が本当なら、たぶん相手はそいつのことだろう。


「そっか、るびぃちゃんキスしてたんだ……」


 助六の奴やけに静かだな……諦めだろうか? 好きな女の子が、嫌いな奴とキスをしていたのを知ったのだから、こいつの心中は穏やかじゃないだろう。


「嫌いな奴とるびぃがキスしたからって落ち込むなよ……」


 気付いたら慰めの言葉を助六に投げかけていた。


「あん? 別に落ちこんでねぇよ。るびぃがよくわからん奴にキスしたなら落ち込みもするが、キスした相手がそいつなら、俺は何も言わない……」


 いつもるびぃのことを好き好き言っているくせに、助六らしくないと思った。


「何だよそれ? そいつのことが嫌いなのにいいのか?」

「昔の話しだ、確かに小学生の時は嫌いだったけど、今はモテなくなったから嫌いじゃねぇよ……」


 ………………。


 何か、ごく最近どこかでそんなことを聞いたような? 


「まあそれだけが理由じゃねぇけど……」


 続けて助六がボソッと何か言ったが、聞き返すよりも今は相手が誰かだ。


「で、誰なんだよ?」


 すると助六は俺を見て、一層に深いため息を吐くと、


「うっせぇバーカ! ここまで言ったんだから自分で考えろ!」

「何でそんなにキレてんだよ……」


 ……でも、助六がすぐにわかったんだから自分でも考えてみるか。

 俺たちが知っていて、助六が今は嫌いじゃないけど当時は嫌いで、他人に興味がないるびぃがムカつくほどモテていた奴と考えると……やっと、俺は理解した。


「あ、そういうことか……」


 何で今まで気付かなかったんだろうか、ほんと俺って鈍いな。


「やっと気付いたか、そうるびぃちゃんがキスをしたのは――」

「昔よく遊んでいた、ぱーくんか!」

「誰だよ!?」

「いやあ今の今まで忘れて……え、違うの?」

「ちげーよ! だから誰だよ!? 知らねぇぞそんな奴!」

「ほら小学生の時――」


 ――キンコンカンコーン。


 鳴り響くお昼ご飯の終わりのチャイム、もう一回鳴る前に戻らないといけない。


「ほら行くぞ、絶対鈍感シスコーン、たくっ……」

「だからそのシスコンの怪獣みたいな――ってちょっと待てよ……」


 そそくさと離れていく友達の背中に、反論をやめて俺は慌ててついていった。


 ……で、結局誰なんだ?

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