第3話

 次に立っていたのは、知らない街だった。

 だが歩くうちに気づく。ここは「人形たちの街」だ。


 棚に飾られ、遊ばれ、壊れ、捨てられた存在たちとぬいぐるみ、ブリキ、木彫り、陶器が落ちていた。


 主人公は、ある家の前で立ち止まった。

 窓辺に、胡桃割り人形の片腕が置かれている。


 ――自分が壊した、人形の右手。


 家の中から、かすれた声が聞こえた。


「それがないと、立てないんだ」


 中にいたのは、片足の胡桃割り人形だった。

 自分と同じ姿。

 いや、自分が「壊した側」だった存在。


「奪ったつもりはなかった」


 そう言いかけて、言葉が止まる。


 壊した時、無視して帰った。

 それは、奪ったのと同じだった。


 主人公は、静かに腕を差し出した。


「……返す」


 その瞬間、胸の奥が軋んだ。

 自分の右手の感覚が、薄れていく。


 片腕を失ったまま、立ち尽くす主人公。


『――返すとは、失うことだ』


 声が告げる。


『それでも返した。よい』


 世界が崩れ、最後の試練へ。

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