第2話

最初の試練の場所は、見覚えのある石段だった。

 あの祠へ続く道。夜露に濡れ、月明かりだけが足元を照らしている。


 主人公の前には、壊れた胡桃割り人形が置かれていた。

 左足は折れ、右手は外れ、口元には欠けがある。


 ――自分が壊したもの。


「直せって……どうやって」


 木の指は太く、不器用で、細かい作業には向かない。

 それでも、周囲を探すと、祠の脇に古い針と糸、木工用の接着剤が置かれていた。


 縫う。

 貼る。

 削る。


 人間だった頃なら簡単だった作業が、今は地獄のように難しい。

 力加減を間違えれば、さらに壊れる。

 関節が軋み、転び、何度も失敗した。


 それでも、夜が明ける頃。

 胡桃割り人形は、歪ながらも立っていた。


 完璧ではない。

 だが、壊れたままではなかった。


『――よい』


 あの声が、わずかに柔らいだ。


『壊すことは容易い。直すことは、痛みを伴う。それを知ったな』


 視界が揺れ、次の試練へと引きずり込まれる。

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