上陸
長い航海を経て、ようやく未知の大陸――海図にも名前のない土地の土を踏む。
波に濡れた甲板の板の上とは違う、湿った土の匂いが鼻を突く。
ダリウスは双眼鏡を肩に掛けたまま、目を輝かせて辺りを見渡す。
「……これは……!見たことのない鉱石に植物……!すごい、まさに未踏の地だ!」
彼は興奮を隠せず、しゃがみ込んで小さなシャベルを取り出した。
「これは持ち帰って調べないと……!」
未知の鉱石や奇妙な葉の形を次々と採取していく。
セリナは小型ライフルを手に、周囲を警戒しながらも、ダリウスのはしゃぐ姿に少し微笑む。
カイエは巨大ライフルを肩に構え、黙って隊列の前を歩く。
「……興奮してるのはわかるが、気を抜くなよ」
リオラも双剣を握り直し、目を鋭く巡らせる。
ダリウスは手を止めず、笑いながら返す。
「わかってるよー、でもこれ面白すぎるんだもん」
その声に少しだけセリナがため息をつく。
「……ほんと、あの子は……」
四人は慎重に進みながらも、ダリウスの興奮が緊張を和らげる。
そして数分後、ダリウスが足を止めた。
「……待て、これ……」
地面に半ば埋まった形で、リンネル王国製のライフルが転がっていた。
数十メートル進んだところで、リオラの目にも止まった。
土に沈む、古い装備の破片――そして人の形をした亡骸。
「……これは……前に調査に来ていた隊員たちの……」
ダリウスは足を止め、息を飲む。
「……くっ……まさか、こんな形で遭遇するとは……」
カイエも表情を引き締め、警戒を強める。
そのとき、セリナは小さな声でつぶやき、足を止め、じっと観察する
「……あれ……おかしい……な」
目の前の亡骸のひとつ――頭がまるで炎に包まれたかのように変形している。
「どうして……頭だけが燃えているの……?」
さらに視線を巡らせると、別の亡骸には切り口が異常に整然としていて、普通の武器ではできないような綺麗さだった。
「……そして……この切り口……整いすぎている……」
ダリウスは双眼鏡を肩に掛けたまま冷静に分析する。
リオラは双剣を握り直し、険しい目で周囲を見渡す
リオラはふと、散乱する装備の間に淡く光る小さな石を見つけた。
それは、普通の鉱石とは違い、微かに青白く光を放っている。
手を伸ばして拾い上げると、指先に不思議なひんやりとした感触が伝わる。
「……これは……何だ?」
リオラは石をじっと見つめ、眉をひそめる。
手にした瞬間、まるで微かな力が指先から伝わってくるかのような、妙な感覚があった。
ダリウスが覗き込み、目を見開く。
「……光ってるね」
セリナは恐る恐る距離を取り、声を震わせる。
「……触っただけで、何か起きたり……しませんよね……?」
リオラは短く息を吐き、石を握り締める。
「……わからん。でも……確かに、ただの石じゃない」
「ここは……危険だ。慎重に進むぞ」
光る石を手に進む一行の足取りは慎重そのものだった。
前の隊員の亡骸が散乱する土地を避けながら、湿った空気の中を歩く。
しばらく進むと、ダリウスが足を止めて声を漏らす。
「……あれ……人か……?」
霧の中に立つのは、人の形をした生物だった。
しかし目の光や体の動きが異様で、手足は人間より少し長く、関節の動きもぎこちなく見える。
皮膚は灰色がかり、髪や服のようなものはなく、全体に異様な光沢があった。
顔は人間に似ているが、口元の動きが微妙に不自然で、目には何か意志を感じさせるような冷たい光が宿る。
リオラは双剣を抜き、握りしめたまま、慎重に一歩後ろに下がる。
「……落ち着け……まずは様子を見る。無理に攻撃するな」
人型はゆっくりと隊員たちを見つめている。
その目には知性を感じさせる光が宿っていたが、何を考えているのかは全く読めない。
リオラは双剣を握ったまま、一歩踏み出す。
「……俺は敵じゃない。傷つけるつもりはない」
冷静な声で、できる限り平静を保ちながら語りかける。
化け物は頭を傾け、口をゆっくりと動かした。
「ーーーーーー」
しかしその言葉は、奇妙な音節が連なったリオラたちには理解できない未知の言語だった。
「言語が違うか……」
ダリウスが双眼鏡を肩にかけ、息を殺して観察する。
「……でも知能はあるみたいだね……手に松明を持ってるし」
人間のような意図を感じさせる動きが、未知の恐怖を増幅させる。
化け物は手の松明を揺らしながら、低くうなり声をあげる。
「……声が……さっきより大きい…」
セリナは耳を塞ぐ
リオラは双剣を握り直し、冷静に判断した。
「人間だとしても……まだまともな文明は発達していないだろう……」
そして静かに言った。
「……リンネルに連れて帰る。捕獲しろ」
セリナは小型ライフル型の睡眠弾を構え、リオラの指示を待つ。
「……わかりました……」
セリナが小型ライフル型の睡眠弾を構え、狙いを定めた
瞬間だった。
化け物は鋭く叫び声を上げた。
「ギュォォォ……!」
その声と同時に、背中の脊髄あたりがまばゆい光を放ち、体が微かに震える。
光は松明の炎とも、自然の光とも違う、どこか異様な輝きだった。
そして次の瞬間――
その光が波となって弾け、衝撃波となってセリナの方向に飛んできた。
空気が裂けるような音とともに、砂や小石が巻き上がる。
「セリナ!」
リオラは叫び、双剣を握り締めて瞬時に身を低く構え、セリナをかばう。
カイエは巨大ライフルを握りしめたまま、息を呑む。
「……こ、こんな力……聞いたことねぇ……」
セリナは咳き込みながらも身を守り、必死に振り向く。
「……ひ、ひどい……こんなの……!」
ダリウスは双眼鏡越しに化け物を観察する。
「……ただの怒りじゃない……背中が光った瞬間……放った……未知の力だ……」
リオラは冷静に仲間を見渡す
「全員、散れ!隠れろ!」
リオラの声が森に響き渡る。木陰や岩の陰に隊員たちが身を潜める。
心臓が跳ねる音だけが、静寂の中で鳴り響いた。
リオラは双剣を握り締め、踏み出す。
「……俺が相手だ」
化け物が背筋を震わせ、脊髄あたりが眩く光る――
その瞬間、空気が裂けるような轟音と共に巨大な衝撃波飛んできた。
リオラは咄嗟に体を翻し、衝撃をかすめるが、風圧で全身が吹き飛ばされる。
間合いを詰め、双剣を振り下ろす――
だが刃は化け物に当たる直前で止まる。
空を切っただけ。
「なにっ……!?」
意表を突かれた瞬間、化け物の拳が襲いかかる。
リオラの体が宙に吹き飛ばされ、木に激突し枝が粉々に折れる。
土と葉が舞い上がり、体中に痛みが走る。
息を切らしながらも、双剣を握り直す。
「……この力……やはり人間じゃないか……」
木陰に隠れた隊員たちの心臓も張り裂けそうだった。
セリナは小型ライフルを握り、震えながらもリオラを見つめる。
「……こ、これ……どうすれば……!」
ダリウスは冷静に双眼鏡を覗き、計算するように呟いた。
「……刃が止まった?……防御か、未知の力か……」
カイエは拳を握りしめ、荒い息を吐きながらも決意を固める。
「……やつ……ただ者じゃねぇ……」
リオラは体中の痛みを押し殺し、血で濡れた顔を歯を食いしばりながら起き上がった。
双剣をぎりぎりと握り直す。
「……くっ……まだ……負けられん……!」
化け物はゆっくりと近づいてくる。
その度に脊髄が光り、衝撃波が空気を裂いて飛んでくる。
カイエはライフルを連射するも、弾丸はすべて無効化されるかのように化け物に届かない。
セリナは小型ライフル型の睡眠弾を必死で撃つが、やはり弾は無力だった。
ダリウスは双眼鏡を肩にかけ、計算を試みるが、理屈では測れない力に唖然とする。
リオラは頭から血を流し、フラフラしながらも立ち上がろうとする。
「……俺は……まだ……!」
化け物が再び背中を光らせた――
脊髄あたりの光が強烈に輝きを発する
だが、その瞬間――
リオラのポケットから、拾った光る石が不意に光を放ち始めた。
淡く、しかし確実に強くなる光が、衝撃波の方向へ漏れ出す。
リオラは目を見開いた。
「……なんだ……こ、これは……!」
小さな光が、新たな希望を告げていることだけは確かだった。
森に響く化け物の声――
そして脊髄の光――
その一瞬の隙間に、リオラたちの次なる一手がかかっている。
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