遭遇

数日間の航海を経て、精鋭隊の船はついに水平線の向こうに、大陸の影を捉えた。


甲板に立つリオラは双剣を握り、船の揺れに合わせて隊員たちの様子を確認する。


「見えるか、隊員たち……あれが、我々の目的地だ」


リオラの言葉に、カイエがうなずきながら巨大なライフルを肩に構える。


セリナは小型ライフルと医療器具を手に、緊張した面持ちで海を見つめる。


一方、ダリウスは双眼鏡を覗き込んでいた。23歳の若さが昂ぶり、顔が輝いている。


「すごい……本当に大陸だ!見ろ、あの森、あの山!」


興奮気味に声を上げる彼の瞳には、未知への好奇心と期待が映っていた。


だが、彼の視線の先に、奇妙な影が見えた。


「……あれ、なんだ?岩……じゃない?」


双眼鏡を通して見ると、確かに岩のような形が海面に浮かび上がっている


「動い…てるね」


よく見るとそれは岩ではなく、巨大な魚のような生物だった。


その体は船の長さを軽く超える巨大さで、鱗は黒光りし、鰭で水面を激しく叩いている。


「で、でかい……これって……魚だよな?」


ダリウスは興奮と恐怖が入り混じった声でつぶやく。双眼鏡を握る手が震える。


「皆、準備! 水面をよく見ろ!」


リオラはすぐに指示を出す。


剣を握る手に力が入る。


カイエも巨大ライフルを構え、セリナは恐怖を押し殺しつつ小型ライフルを手にする。


だがその瞬間、巨大な生物は水しぶきを上げ、こちらに向かって猛スピードで突進してきた。


船の甲板に立つ隊員たちは一瞬で緊張に包まれる


未知の大陸だけでなく、未知の生命体が待ち受けている――

この瞬間、冒険はただの航海ではなく、生死をかけた未知との戦いに変わったのだった。



巨大魚の影が海面を割り、船に迫る。


カイエ・ヴァルディアは巨大ライフルを肩に担ぎ、引き金に指をかけた。


「撃つしかねぇ……!」


普段はリオラの指示に従う副隊長も、本能で行動する。


だがリオラは瞬時に判断する。


「――カイエ、弾を無駄にするなよ」


双剣を握り締め、リオラは冷静に声を張った。


弾丸が通用しないことを悟ったのだ


船長は巨大魚を避けるため迂回を始めた


リオラは両手で柄を握り、鞘から双剣を引き抜く


鋼の刃が光を反射し、海面の光と混ざり合って一瞬、刃が黒く輝いた。


「私が行こう全速前進だ」


船長は驚きながらも了承し舵を握り直し、船を傾けて進路を調整する。


「え!?全速で突っ込むのか!?」


「私を信じろ!」


リオラの声は迷いなく、揺らぐことはなかった。


カイエはライフルを構えたまま目を見開く。


「ま、まさか……勝てない相手に正面突破……か!」


セリナは恐怖で声を詰まらせながらも、深呼吸して小型ライフルを握り直す。


ダリウスは双眼鏡を握りしめ、臆病さを隠せずに後ずさるが、リオラにはタメ口で言う。


「……あんた、ほんとに怖いもの知らずだな、リオラ」


「そう思うなら、しっかり掴まれ!」


海面を割って迫る黒光りの巨魚。


船は全速で突き進む――まるで自らの運命に立ち向かうように。


隊員たちは息を飲み、覚悟を固める


「今だ」


そう言うと、リオラは船の舷側に飛び乗り、波の上を巨魚へと踏み出した。


隊員たちの視線が、息を呑んでリオラに注がれる。


カイエは巨大ライフルを構えたまま固まり、セリナは小型ライフルを手にしながらも恐怖で足がすくむ。


ダリウスは双眼鏡を握りしめ、声が震える。


「おい……おいリオラ、そんなの無理だろ……!」


だがリオラは、躊躇しない。


船から飛び上がった瞬間、波しぶきが全身を叩きつけ、冷たい海水が手に絡む。


双剣を両手に構え、巨魚の眼を正確に見定める。


「ここだ……!」


リオラは跳躍の頂点で、瞬時に双剣を交差させるように突き出した。


鋼の刃が巨魚の黒く光る眼を貫き、瞬間、巨大魚は痛みにうめき声のような低い唸りを上げた。


海面が揺れ、船は再び大きく波に揺られる。


甲板の隊員たちは息をのんだまま、リオラの勇敢さに目を奪われる。


「……す、すげぇ……」


カイエの声が、恐怖と称賛が入り混じった低い声で漏れた。


セリナも震える手でライフルを構え直す。


ダリウスは顔を引きつらせつつも、双眼鏡を覗き、冷静に観察していた。


双剣を突き立てた瞬間、巨魚の黒光りする巨体がさらに身をひるがえし、体を激しく揺らす。


リオラの足元が波に揺られ、船の甲板から飛び乗ったはずの体がぐらついた。


鋼の刃は眼に突き刺さったまま、巨魚はなおも動きを止めない。


海面に大きな波が立ち、リオラは両手で剣を握り締めて踏ん張る。


「……くっ……まだ止まらんか」


威嚇のためか、巨魚は口を大きく開いた。


黒光りする口の中には、牙と唾液が混ざり、恐怖を増幅させる。


その時、カイエが大声を上げた。


「俺も負けてられねぇ!」


巨大ライフルを肩に据え、引き金を引く。

弾丸が巨魚の口の中へと放たれた。


――ゴォォ


銃声が海の上で響き渡り、波しぶきが飛ぶ。


弾丸は口の中に正確に命中し、巨魚は一瞬、動きを止めた。


リオラは踏ん張りを取り戻し、双剣をしっかり握る。


セリナは思わず息を呑む。


「……カイエ……よくやった……!」


ダリウスは双眼鏡を握りしめ、少し声を震わせながらも冷静に状況を分析する。


「……なるほど……あれを止めるには、狙いを正確に……」


リオラは巨魚の頭上で体勢を立て直し、波しぶきを蹴って再び船の甲板に飛び戻った。


「ふぅ……一瞬の隙だ、でもまだ油断できん」


甲板で踏みしめる足に力を込め、双剣を握り直す。


その時、黒光りする巨魚は一度水面から離れ、深く潜ったかと思うと、再び勢いをつけて船に向かって突進してきた。


セリナは小型ライフルを抱え、甲板の端に身を縮めながら声を震わせる。


「……また来る……やだ…!」


両手で小さな武器を握り締め、必死に体を固定する。


恐怖で体が震え、心臓の鼓動が甲板まで響くようだった。


一方、ダリウスは双眼鏡を肩に掛けて観察する。


「……距離、約120メートル、方角北北東……」


スナイパーライフルを肩に据え、呼吸を整える。


「……狙いは正確に」


バンッ


引き金が引かれると、弾丸が鋭く飛び出し、海面の波しぶきを切り裂いて巨魚の側面に命中する。


水が激しく飛び散り、巨大魚は動きを鈍らせた。


リオラは双剣を握り直し、船の揺れに耐えつつ、次の動きに備える。


巨魚が再び水面を割り、口を大きく開けて船に突進してくる。


甲板の隊員たちは声も出せず、息を詰める


来る……!」


リオラは双剣を握り締め、心を一点に集中する。


「――これで終わらせる!」


船の甲板から巨魚に向かって全力で飛び込む。


波しぶきが全身を打つが、リオラは動じない。


口の中に飛び込む瞬間、鋼の双剣を左右に振り抜く。


――鋼の刃が鱗を切り裂き、黒光りした口の中を一閃する。


巨魚は痛みにうめき、激しく水をはね上げる。


その瞬間、甲板の隊員たちは目を見張った。


「……や、やったのか……!」


カイエは驚きと感嘆が入り混じった声を漏らす。


セリナも息を詰めたまま、ただリオラを見つめる。


ダリウスは冷静に観察しながらも、目に興奮の色が浮かぶ。


巨大魚は最後のもがきで水を叩きつけるが、リオラの双剣の前に力尽きる。


甲板に戻ったリオラは息を整え、双剣を軽く振って鱗の破片を払う。


「……これで、ひとまず終わりだ」


巨大魚を斬り倒し、甲板に戻ったリオラは、両手に力を込めつつも足元がわずかにふらついた。


波しぶきの勢いで飛び込んだ際に、口の中で鱗の一部が腕や肩に引っかかり、切り傷を負っていたのだ。


「……くっ……ちょっとやられたか」


リオラは苦痛を押し殺しつつ、双剣を鞘に戻す。


セリナは小型医療道具を取り出し、素早く傷口を確認する。


「こ、これで……なんとか……」


セリナは指先で圧迫しながら包帯を巻きつける。

血の流れを抑えるため、しっかりと押さえつける。


手は震えているが、恐怖に負けず必死にリオラを支える姿勢が見える。


リオラは傷を押さえつつ、苦笑を浮かべる。

「……ありがとう、」


セリナは頭をかきながら、声を震わせて言った。


「すいません……なんの成果も得られませんでしたぁ」


少し恥ずかしそうに、でも精一杯頑張ったことを自覚している様子だ。


カイエは巨大ライフルを肩に戻しながら、リオラを見てうなずく。


「……ま、これで生き延びたな」


ダリウスは双眼鏡を片手に、冷静に状況を観察しつつ、軽く口を開いた。


「……ほんとに死ぬかと思ったよ〜」


隊員たちは安堵の息を吐き、疲労を感じつつも心を落ち着かせていた。


リオラは甲板に立ち、遠く水平線の先に浮かぶ未知の大陸を見据える。


「しかし……まだ上陸していないのに、このザマが」


甲板に立つリオラの目には、壊れかけた船と、疲弊しきったの隊員たちの姿が映った

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