【第十一章: クリスマスデート — 聖夜の約束】

二人が2年生の冬、初めて一緒に迎えるクリスマス。12月24日、イブの夜。

学校はすでに冬休みに入っていた。あかりは朝からそわそわしていて、テニス部の自主練を早めに切り上げて準備に取りかかった。選んだのは白のニットワンピースに赤いコート、首元に健が文化祭で取ったクマのぬいぐるみにつけていた小さなリボンを巻いて。鏡の前で何度も髪を直しながら、心の中で呟く。

「健くん、喜んでくれるかな……」

一方、健はいつものように少し遅刻気味。朝、出かける前に近所の公園で迷子の子犬を飼い主に届けてしまい、予定より15分遅れて待ち合わせ場所に駆けつけた。

待ち合わせは街の大きなクリスマスツリーの下。イルミネーションが煌めく駅前広場で、あかりは少し寒そうに手をこすりながら待っていた。

「ごめん! 待ったか!?」

健が息を切らして現れる。黒のダッフルコートにマフラー、髪が少し雪で濡れている。あかりはホッとした笑顔で首を振る。

「ううん、今来たところだよ。……健くん、かっこいいね」

健は照れくさそうに頭を掻いて、持っていた紙袋をあかりに差し出す。

「これ……マフラー。寒いだろと思って。俺、編み物とかできないから買ったやつだけど」

中から出てきたのは柔らかいベージュのマフラー。あかりは目を輝かせて、すぐに首に巻く。

「ありがとう! すごく温かい……健くんの匂いもする」

二人は顔を見合わせて笑う。健があかりの手を取って、

「じゃあ、行こうぜ。今日は俺が全部エスコートする」

『イルミネーションデート』

まず向かったのは街で一番有名なイルミネーションスポット。並木道全体が青と白の光で飾られ、まるで別世界。二人で手を繋いでゆっくり歩く。

「あそこ、星みたいだね」

あかりが指差す先には、巨大な光のトンネル。入ると頭上を無数のLEDが覆い、まるで雪が降っているような演出。健はあかりの肩を抱き寄せて、

「綺麗だな……でも、あかりの方がずっと綺麗」

あかりが恥ずかしそうに健の胸を軽く叩く。

「もう……急にそんなこと言わないでよ」

トンネルの真ん中で立ち止まり、二人は自然と見つめ合う。周りの光があかりの瞳に反射して、健は息を呑む。

「……キス、していい?」

小声で尋ねると、あかりはこくりと頷く。

柔らかくて、温かくて、少し冷たい唇。イルミネーションの光が二人を優しく包み、周りの人たちの視線も気にならないくらい、甘い時間だった。

『ディナーとプレゼント交換』

次は予約しておいたレストラン。街の高台にある小さなイタリアンで、窓際の席から夜景が一望できる。

コース料理を食べながら、他愛もない話をたくさんした。

「クリスマス、子供の頃はサンタさん信じてた?」

あかりの質問に、健が笑う。

「信じてたよ。欲しいものリスト書いて、枕元に置いてた。でも、ある年気づいて……それ以来、誰かを喜ばせたいって思うようになったかな」

あかりが優しく微笑む。

「健くんは今も、毎日誰かを喜ばせてるよ。私も、いつも幸せもらってる」

食事が終わると、デザートのタイミングでプレゼント交換。

健が先に渡す。

「俺から……開けてみて」

小さな箱の中には、シルバーのネックレス。ペンダントトップは小さな星の形。

「修学旅行の竹林で、星みたいに綺麗だって思ったから……ずっとあかりについててほしいなって」

あかりの目が潤む。

「ありがとう……大事にする。ずっとつけるね」

次はあかりの番。渡したのは手編みの手袋と、一枚のカード。

「手袋は私がつくったの。健くん、いつも人助けで手が冷たいでしょ? それと……カード読んで」

カードにはあかりの丁寧な字で、

『健くんへ

出会ってから、毎日がキラキラしています。

目つきが怖いって言われてた健くんの本当の優しさを知れて、私が一番幸せです。

これからも、どんな日も一緒に過ごしたい。

大好きだよ。永遠に。

あかりより』

健はカードを読み終えると、目を赤くしてあかりの手を握った。

「……俺も、あかりがいなきゃダメだ。ずっと、そばにいてくれよ」

レストランの明かりが、二人の頰を優しく照らす。

『聖夜の締めくくり』

食事を終えて外に出ると、雪がちらつき始めていた。二人は公園のベンチに座り、降り始めた雪を見上げる。

「白いクリスマスだね」

あかりが嬉しそうに言う。健はコートのポケットから小さな箱を取り出す。

「もう一個、あるんだ。……これ」

開けると、中には二つセットのリング。シンプルなシルバーのペアリング。

「婚約とかじゃなくて……ただ、約束のしるし。俺たち、ずっと一緒だって」

あかりは涙を浮かべて頷く。

「うん……私も、ずっと健くんと一緒がいい」

二人はお互いにリングをはめ合う。雪が静かに降り積もる中、左手の薬指に光るリングが、聖夜の光を反射して輝いた。

健があかりを抱き寄せて、最後のキス。

「メリークリスマス、あかり」

「メリークリスマス、健くん」

雪が二人を優しく包み、街のクリスマスソングが遠くから聞こえてくる。

初めてのクリスマスデートは、甘くて温かくて、少し涙が出るくらい幸せな夜になった。

これからも、どんな季節も、どんな日も――

健とあかりの恋は、永遠に輝き続ける。

桜ヶ丘高校の、温かな恋物語に、また一つ大切なページが加わった。

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