【第一章: 偶然の出会い】
夕暮れの街路は、橙色の光に染まっていた。あかりはテニス部の練習を終え、部活仲間と別れて一人で帰路についていた。肩にかけたテニスバッグが少し重く感じるが、今日の練習でスマッシュが決まったことを思い浮かべて、軽く微笑む。道は人通りが多く、安心できるはずだった。
ところが、路地を曲がったところで、3人組の男たちに囲まれてしまった。20代前半くらいの、派手な服装の男たちだ。
「お嬢ちゃん、暇なら一緒に遊ぼうぜ。かわいい顔してるじゃん」
一人がニヤニヤしながら近づき、あかりの腕を掴もうとする。あかりは慌てて後ずさり、心臓が激しく鼓動を打つ。
「す、すみません。用事があるので……」
声が震えてしまう。優しい性格のあかりは、こんな状況に慣れていない。男たちは笑い声を上げ、さらに囲みを狭める。
「用事って何? 俺たちと遊ぶのが用事だろ」
その時、路地の奥から足音が聞こえた。現れたのは、鋭い目つきの少年――佐藤健だった。彼は学校帰りに、いつものように街を歩いていた。健は一瞬で状況を把握し、迷わず割って入る。
「おい、お前ら。彼女が困ってるだろ。やめろよ」
健の声は低く、目つきがさらに鋭さを増す。男たちはびっくりして振り返る。一人は健の顔を見て、怯んだように後退する。
「なんだよ、ガキ。お前に関係ねえだろ」
健は一歩踏み出し、男の一人を睨みつける。
「関係あるよ。彼女が嫌がってるんだから、さっさと失せろ」
緊張が高まる中、突然、遠くから自転車のベルが鳴った。お巡りさんが巡回中で、こちらに気づいたらしい。男たちは顔を見合わせ、舌打ちしながら去っていく。
「ちっ、運がいいな」
お巡りさんが近づいてくるのを確認した健は、ほっと息をつき、あかりに視線を向ける。
「大丈夫か?」
あかりはまだ震えが止まらず、言葉が出てこない。ただ、健の顔を見て、どこかで見たような気がした。学校の生徒? でも、目つきが怖くて、声をかける勇気が出ない。
健はそれ以上何も言わず、軽く頭を下げて去っていった。背中が遠ざかるのを、あかりはぼんやりと見送る。お礼を言う間もなかった。心に小さな波紋が広がる。あの人は、誰?
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