第6話「夕凪」
かれこれ何船の漁船を見守っただろう。岩村は海の民のように、岸辺からじっと動かない。
突然、朝はカレーの匂いで切り替わる。岩村は匂いの先を辿り、洋食と雑に看板に書かれた小さな店に滑り込む。
カレーを待つ間、岩村は考える。
神戸でよく食べていたあの店に、何かが似ている。ここの店主もしゃべらず、鍋底をかき混ぜる。一心不乱というわけでもなく、所在なげな感じが今の岩村には心地よい。
店主はカレーを片手でグッと岩村の前に押し出す。所作としては間違っているが、岩村は笑みを浮かべ、そっと受け取る。
サフランライスを見た岩村は、あぁ、と頷く。
咀嚼する度に、頷く。
またふと同僚の言葉を思い出す。どうでも良いと思う、サフランの香をあおぎながら。
やがて行き着く先の先 猪鹿蝶 @Mh135790
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